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戦果

 一体目のボブゴブリンを討伐してから、数時間。俺は探索中に見つけた湖で水浴びをしていた。

 あれから討伐したのは十五体のゴブリンと四体のボブゴブリン。これだけ倒したのなら充分な報酬が得られるだろ。


「ふー、やっぱ一汗かいた後の水浴びは気持ちいいな」


 湖から上がり、水を吸った髪を絞る。湖は日光を反射してキラキラと輝いていてとても綺麗だ。森の香りも爽やかだし、かなりリフレッシュできた。


「それにしても……上位種って結構いるんだな」


 見つけたボブゴブリンはどの個体も数体のゴブリンを連れて狩りをしていた。巣がどれくらの大きさかは知らないけど、食料に困ってるのかもしれないな。中には弓を使うボブゴブリンもいたし、意外とゴブリンって頭良いのか?


「……帰りにも見つかるかな、ゴブリン」


 初めてボブゴブリンと戦った時は少しばかり焦りもしたけど、気をつけていれば案外危なげなく倒せることがわかった。意外とこの付近を探せば見つかるし、かなり稼ぎどきかもしれないわけだ。

 今のままでも報酬は充分だと思うけど……せっかくならもっと稼いでおきたい。何があるかも分からないし、ダンジョンに向かうなら色々と物資も必要だろうから。


 それから俺は、帰り際にもゴブリンを見つけたら片っ端から狩っていった。一匹見つけると近くに数匹いるし、ボブゴブリンもいるから効率がいい。素材袋はゴブリン達の耳で重たくなってきた。

 森を抜けると流石にゴブリン達も見かけなくなる。せっかくなので薬草を採って帰ることにした。今日の報酬がどれくらいになるか楽しみだ。

 ギルドにつくと真っ直ぐに受付へ向かう。まとわりつく視線はいくらか減っていた。


「精算をお願いします」

「はい、マギア草とチィーユ草、合わせて五十ピアです。こちらは……ゴブリンの討伐ですね。かなり量があるようですが巣に行かれたのですか?」

「いや、行ってないです」

「そうですか。念の為注意しておきますが自身のランクより上の依頼は受けないようにお願いいたします。万が一何か起きても当ギルドは責任を負いません」


 受付嬢は淡々とゴブリンの耳を確認していたが、段々とその顔色が悪くなる。


「棍棒以外の武器を扱うゴブリンはいましたか」

「え? ああ、弓使ってるのを何匹か見かけたけど……それが何か?」

「再度聞きますが、これらのゴブリンは皆巣の外で?」

「そうだけど……」


 受付嬢は顔を真っ青にして奥の部屋へと入っていった。何をそんなに慌ててるんだ?

 テーブルについて酒を飲んでいた冒険者達もざわめき始める。ちょっと耳を澄ませてみた。


「おい、アーチャーもいるってよ」

「巣の外でだろ? それじゃあ巣はどれくらいの規模なんだ」

「あのエルフ、新入りにしてはまあまあやるんだな」

「それどころじゃないだろ。これじゃゴブリンキングがいる可能性だって……」


 ゴブリンキング? それってたしかゴブリンの最上位種……だったよな?

 そいつが街近くの森に巣を作っている可能性がある、と。

 ……それ、かなりヤバいんじゃないか?


「そうなったら俺達全員駆り出されるんじゃねえか?」

「稼ぎどきと言えばそうだけどよ、流石にゴブリンキングがいる巣は……」

「いやいや、それでもかなりのチャンスだろ? 参加するだけでたんまり報酬が出るじゃねえか」


 ああ、うん、ヤバそうだ。

 まあでもそんな危なそうなことなら、流石にランクの高い冒険者が割り当てられるだろうし、俺はゆっくり薬草採取でもしていよう。うん。

 ……いや、待てよ? 俺はいずれダンジョンに挑むんだ。ここでもっと経験を積んでおくべきではあるな。そう考えると参加した方がいいのか?

 だとしても、一体どれくらいのランクから駆り出されるのか分からないな。

 そんなことを考えている内に受付嬢が戻ってきた。その後ろには黒い髭を生やしたガタイの良い角刈りの男が立っている。その手にはずっしりと重たそうな袋が握られている。


「エスカだな。今回の報酬はこれだ。それと、お前さんのランクも一つ上げさせてもらう。ギルド証を出してくれ」

「あ、はい」


 受け取った袋はやはりずっしりと重たい。中々の量がありそうだ。

 ギルド証を大男に差し出すと、何らかの魔道具にそれを通した。返されたギルド証はFの印からEの印へと変わっている。

 案外早くランクが上がるんだな。これでここ、アマルガ王国にあるダンジョンには挑戦できるようになったわけだ。

 大男はテーブルに座っている冒険者達を見渡した。


「それから……お前ら、緊急依頼だ。ゴブリンの巣を潰しに行くぞ。ランクE以上は明日の朝、六の鐘が鳴るまでにギルド前に集まるように」


 冒険者達から落胆とも歓喜とも取れる声が上がる。大男が静かに手を上げると、冒険者達の声が静まった。


「そういうわけだから、お前さんも来るように。ボブゴブリンをあれだけ倒せるんだ、それなりにはやれるんだろ?」

「ま、まあ、それなりには……」

「なら充分だ。此度は有益な情報をありがとうよ。先程渡した袋には情報への追加報酬も含まれてるからな」

「俺はただゴブリンを倒しただけなんだけど……まあ、役に立ったなら良かったよ」


 大男は満足そうに頷くと部屋の奥へと戻っていった。何だったんだろう、あの人。お偉いさんかな。


「ギルド長が出てくるって相当だぞ」

「俺達は後ろの方であぶれた奴らを仕留めておこうぜ。前に出るのはちょっとな」


 ギルド長? 今の大男が? ……俺、ちょっと失礼な態度取っちゃってなかったか。大丈夫か?

 まあ気にしても意味がないな。明日は大仕事になりそうだし、今日はゆっくり休むとするか。結構矢を使ったから補充もしておかないとな。

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