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捜索

 朝、少し涼しい空気を大きく吸い込む。そろそろ七つの鐘が鳴る時間だ。


「今日はマオちゃんと一緒に森を歩くの?」

「ああ。人探しを手伝うんだ」

「そうなんだ! よーし、頑張ってさがすぞーっ!」


 リーファは気合をいれて拳を上げる。乗り気みたいでよかった。

 西門へ向かうと、既にマオの姿があった。早いな、結構余裕をもって来たつもりなんだけど。

 腕を組んで立っていたマオがこちらに顔を向ける。


「来たか」

「ごめん、待たせてしまって」

「気にしなくていい。まだ鐘も鳴っていないから」


 荷物は最低限といった具合だ。食料とか大丈夫なのか? それとも森の中で調達するつもりなんだろうか。だとしたら、とんだサバイバル生活じゃないか。


「おはよう、マオちゃん!」

「ああ、おはよう」

「ちゃんと朝食は食べたかー?」

「食べてきたから心配はいらない」


 すっかり打ち解けてるみたいで、ぽんぽんと言葉が交わされる。マオは一見冷たいように見えるけど……尻尾はゆっくりゆらゆらと揺れている。きっと悪くは思ってないんだろうな。

 リーファはマオの手を握って揺らしている。何やってるんだ、あれ。


「ほら、行くぞ」

「はーい! 行こう、マオちゃんっ」


 ちらりとマオの足を見る。昨日は少し痛そうにしてたけど、今は大丈夫そうだな。ポーションはいらなさそうだ。

 門を出て、森へ向かう。ソシエゴ獣王国……なかなかいい場所だったから目的を果たしたらもう一回来よう。お姉さんを見つけたらケイトの実家も行かないとだしな。


 暫く歩いていると、頭上を一羽の大きな鳥が過ぎ去った。影がくっきりと平原に映るほど低空飛空した鳥は、ターンして俺達の前に戻ってくる。二メトルくらいあるな、ありゃあ。


「こっちは四人もいるのに、よく相手しようと思うよなあ」


 あれくらいなら俺一人で大丈夫だ。弓を引き絞り、魔力を込めて放つ。避けようとする鳥だったが、翼を貫かれ地面に落ちた。


「いい弓の腕してるね。さすがエルフ」

「伊達に十年使ってるわけじゃないからな。これくらいは当てないと」


 ぱぱっと解体して収納鞄に入れておこう。

 便利なことに、この鞄の中は時間が止まっているらしい。肉が新鮮な内に入れておけばいつまでも新鮮なままというわけ。めちゃくちゃ助かる機能だよな。

 それにしても、この鳥って魔物なんだろうか。それとも動物なんだろうか。魔核は……ないっぽい? 普通の動物なら、特別な処理をせずに食べても大丈夫だな。


「よし、できた。それじゃ進もうか」


 全ての肉を収納鞄に入れて立ち上がる。

 それからは何かに襲われることもなく昼前には森の中に入ることができた。順調だ。


「それで、どの辺りを捜索するんだ?」

「手前側はもう探したはず。もっと奥……あの日アンタ達と会った辺りを重点的に探したい」

「分かった。探すならバラけた方が効率的だろうけど、正直危ないよな。あまり離れすぎないようにして探そう」


 とりあえずあの日マオと会った所を目指して進む。その間、魔物と遭遇することはなかった。

 なんかこの森、魔物が少ない気がするのは気のせいか? 活発になってきてるっていうのはただの噂だったってことか。それとも別の場所の話なのかもしれない。


「探してる子の名前ってなあに? どんな子?」

「名前はココ。犬系の獣人で、肌は褐色。髪は白と黒で、こう……右と左で半分に色が分かれてる」

「へえ〜っ」


 マオはジェスチャーつきで説明している。リーファが積極的に話しかけていくおかげでマオの口数が多くなっているな。見た感じ、話すことは嫌いじゃないみたいだ。


「あの子はオレが守らないといけないんだ。早く見つけないと……」

「大切な人が見つからないのはツラいよな。オイラも分かるぜ」

「……アンタも誰か探してるのか?」


 ケイトはこくりと頷く。姉のことを思い出しているのか、少しばかり伏せられた目には寂しさが滲んでいた。


「ああ。オイラは姉ちゃんを探してるんだ。料理上手で自慢の姉ちゃんだよ」

「そうか……もし、ココが見つかったら。そしたら、今度はオレがアンタの姉を探すの手伝うよ」

「ほんとかっ? ありがとう、マオ」

「恩は返す。それがオレのモットーだから」


 暫く歩くとマオと出会った場所についた。といっても周りは木ばっかりだから、歩いた時間で目星をつけただけなんだけど。


「たしか出会ったのはこの辺りだったな」

「ああ。この付近だったはず」

「アタシ達がご飯食べてたら、お腹がすいたマオちゃんが出てきたんだよねっ!」

「掘り返さないで。あれは少し……恥ずかしい、から」


 マオの言葉が尻すぼみになっていく。よっぽど恥ずかしかったんだな。

 森のどちら側を探そうかという話になったとき、マオが小さく手をあげた。


「二手に分かれたい」

「でも、危ないぞ?」

「この付近は魔物が少ないみたいだから。それなら、分かれた方がいいと思う」


 たしかに魔物は少ないんだよな。ここに来るまで一度も遭遇してないし……でもなあ。


「オイラがマオの方につくよ。エスカとリーファはあっち側を探してくれないか?」

「ケイトまで」

「エスカくん、きっと大丈夫だよ! ここに戻ってくる時間を決めたらいいんじゃないかな?」


 うーん、どうしよう。俺以外は乗り気みたいだ……困ったな。

 でも、ここで俺が変に拒んで空気を悪くするのも嫌だしな。時間を決めれば大丈夫か。


「それじゃあ……そうだな、空が赤くなり始める前にここに戻ってこよう」

「ああ、分かった」

「じゃあまた後でなー!」


 ケイトはぶんぶんと手を振ってマオと一緒に木々の向こうへ入っていった。本当に大丈夫かな。でも一人でいるよりは安心か。


「アタシ達もいこ、エスカくんっ」

「ああ」


 リーファと一緒に森の奥へ入る。ここにいるかは分からないけど、見つかればいいな。きっとマオは見つけるまで自分の体に鞭打ってでも探し続けるだろうから。


「マオちゃんが探してる人ってお友達だったのかな?」

「かもな」


 どちらかというと保護者って感じな気もするけど、二人の関係性は重要じゃないだろうからな。

 それにしても急にいなくなるなんて不穏なこともあったものだ。ただの迷子ならいいんだけど。

 ……あれだけ探していないっていうのなら、もしかしたら。そんな最悪なケースが思い浮かんだところで、ぶんぶんと首を振った。


「エスカくん? どうしたの?」

「いや、なんでもない。頑張って探さないとな」

「うんっ!」

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