魔導論学・初級
食料や矢を補充した俺達は、早速ビギンズを出ることにした。
次の行き先はここからずっと西にある国、ソシエゴ獣王国。そのために一度王都ハーモニアを目指しているところだ。
「アタシ、この国から出たことってなかったんだ。ソシエゴ獣王国ってどんなところなんだろ?」
「その名の通り獣人を筆頭に亜人が多く住んでいる国だって聞いたよ」
「へえ〜! じゃあじゃあエルフもいるかなっ?」
「さあ……どうだろうな。いるかもしれないし、いないかもしれない」
一人くらい見かけてもいいと思うんだけどなあ。まさか森の外で活動してるエルフは俺一人なんてことはないだろうし……ないよな?
「よし、この辺りで野営するか」
「はーい! 木の枝あつめてくるねっ」
「あまり遠くまで行くなよー」
「はーいっ!」
しゃがみこんで枝を拾い始めたのを見届けて、ビギンズを出る時に買っておいたテントを張り始める。パーティを組んで初めての野営だ。
今までは襲われないことを願って眠りについていたが、二人になれば交代で寝て夜を過ごすことができる。正直かなり助かるんだよな。
「よし、こんなもんだろ」
初めてにしては中々うまく張れたんじゃないか? 中にこれまた買っておいた寝袋を置いて完成だ。
あとはテント前で焚き木の準備をする。手頃な石で周りを囲ったあたりで、木の枝をこんもりと抱えたリーファが戻ってきた。
「これだけあれば大丈夫かなっ?」
「おお、かなり持って帰ってきたな。多すぎるくらいだけど……まあいいだろ」
木の枝を石で囲った中に入れる。さて、これまでは火を起こす必要があったけど……。
「リーファ、着火を頼む」
「まかせて! ファイアッ!」
彼女が仲間になった今、魔法で簡単に火がつく。大助かりだ。
パチパチと踊る火の粉を囲んで座る。
「今日はパンとスープにしよう」
ここまで歩く中で採取した草達と干し肉を入れ、塩で味付けする。あとは待つだけのお手軽スープだ。
できあがるまでの間に魔導論学の本を読むことにした。
分厚い本を広げると、魔法についての簡単な概要が書いてある。
「なにが書いてあるの?」
「最初は魔法の成り立ちだな。いつ頃から使われ始めたかとか、どんな発展の仕方だったかとか……そんなことが書かれてるっぽい」
「へえ……むずかしそー」
初級というだけあって、ある程度噛み砕いた書き方はしてある。まあでも、成り立ちとかその辺りはいいかな。流し読みして次のセクションに移る。
魔力の循環について。魔物ではない生物は体内に魔力を生成する器官がないから、外から魔力を取り込んで体に巡らせると書いてある。呼吸だったり食事だったり方法は様々だ。んで、それを消費して魔法を使う、と。
「それから体内魔力の認識、か。これはあの熱のことだよな」
「あっ、それはアタシもわかるよ。魔法を使うときって体がぽかぽかするよね!」
「ああ。使いすぎると不調をきたすらしいけど……リーファ、お前ダンジョンであんなに魔法使ってたけど大丈夫なのか?」
「そうなの? アタシ、一回も体調わるくなったことないよ?」
「そんなもんか?」
まあ俺もあれだけ魔力使いまくってどうにもなってないしな。案外気にしなくていいのかも?
で、次は……魔力のコントロール。このコントロールの仕方によって出力される魔法の大部分が決まるらしい。
「魔力のコントロールかあ。俺は一応どこか一箇所に魔力を集めることはできるけど、多分それだけじゃ魔法らしい魔法は使えないんだろうなあ。リーファはどうやってるんだ?」
「魔法を使うとき? むむむ〜ってして、ぎゅーんとして、ぱーってするよ!」
「お、おお。かなり感覚的だな……」
リーファは身振り手振りを加えて説明してくれた。俺だってどうやって魔力を一箇所に集めるのか説明しろと言われると難しいし、そんなものなのか?
ページをめくる。次は本格的に魔法について書かれている。生活魔法、攻撃魔法などの分類や属性についてだ。
「俺が使う魔法……というより身体強化の類は無属性に分類されるのか」
「エスカくんの光る矢って魔法なの? 特別な矢なのかなって思ってた!」
「矢自体はその辺の店で買った普通の物だからな。っていうか、そんな特別な矢だとぽんぽん使えないよ」
そういえばリーファは炎の魔法が使えるわけだけど、今まで杖にまとわせているところしか見たことがないな。
「なあ、リーファって杖に炎をまとわせる以外の魔法は使えるのか?」
「ううん、これだけだよ。普通のファイアと、すっごく頑張ったファイアの二つ!」
「そうかあ」
逆に言えばその二つだけであんなに戦えるんだから凄いな。
さて、次は……基本的な魔法の説明と使い方が書いてあるな。魔力のコントロールの仕方が書いてある……んだけど。
「ええと? 魔力を発現させたい所へ集めて……いや、体の外にどうやって集めるんだよ。維持したまま射出……?」
言葉で説明するのが難しいってことは、逆に言葉で説明されても分かりづらいってことでもあるのか。
「そう、そうなの! 杖の先までは分かるけど、どうやって投げたらいいのか分からないんだ」
「こりゃ難しそうだな。読めるのと理解できるかどうかはまた別ってことか……長くなりそうだぞ」
それからスープができあがるまで、二人でああでもないこうでもないと言いながらファイアボールの練習をした。
結果は……うん、一朝一夕でどうにかなるものではなかったとだけ言っておこう。




