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魔法使いの女の子

 赤いケープを着た赤毛の女の子は、オレンジの瞳でまっすぐに俺を見つめていた。少しボサボサの髪を赤いリボンで一つにまとめている。


「えーっと……何か用?」

「あの、あのね? アタシとパーティを組んでほしいの!」

「パーティ?」


 思わずポカンとしてしまった。女の子は赤い石がついた木の杖を持っている。見るからに魔法使いだ。

 女の子は胸に手を当て、にこりと笑う。


「アタシ、リーファ! リーファ・レヴァっていうの。アナタは?」

「俺はエスカ・トーガだけど……パーティを組んでほしいって?」

「そう! 今からダンジョンに挑戦するんでしょ? アタシもなんだ! だから、一緒にパーティを組んで挑戦してほしいの!」


 リーファはニコニコ笑顔で杖を高く掲げた。


「アタシ、火の魔法が使えるよ! ね、ダメかな?」

「火の魔法ね……」


 やたら周囲の視線が集まる。まあ、これだけ元気一杯なら人の目も集めるか。それにしても火の魔法ねえ。

 魔法使いってことは後衛だろ? 俺もどちらかといえば後衛だ。短剣も使えないことはないけど……弓の方が扱い慣れてるし。


「アタシ、たくさん頑張るよ! お願い、エスカくんっ!」


 リーファは両手を組んでぎゅっと目を閉じた。なんでこの子が俺に目をつけたのかは分からない。エルフが珍しいからか? でも、まさか俺がパーティに誘われるなんて思わなかった。

 ここを逃したら……もう俺には仲間なんてできないかもしれない。そう考えると、彼女の申し出を断る気にはなれなかった。彼女の瞳が真っ直ぐだったというのもある。


「……いいよ。組んでみよう、パーティ」

「えっ、いいの?」

「おいおい、組んでって言ったのはそっちだろ? でも、仮な。ダンジョンに潜ってみて、相性を見て決めよう」


 キョトンとしていたリーファの顔がぱああっと明るくなる。コロコロと表情が変わる子だな。


「うんっ!」


 満面の笑顔で頷いた彼女は、待ちきれないといった様子でくるりと回ってダンジョンの入り口へ走って行った。その後ろ姿に犬の耳と尻尾がついているように見えて目を擦る。うん、実際は何もついてない、正真正銘フツーの人間……イノセンスなんだけどさ。


「ちょっ、待て! はぐれるだろ! 人多いんだぞ、ここ」

「あっ、ごめんね! パーティ組めたのが嬉しくって、つい!」


 振り返ったリーファは眉を下げて頭を掻いた。

 とても明るい子だ。エルフの俺を嫌がらないどころか、ジロジロと見てくることもないし、それどころかパーティを組んでほしいとさえ言った女の子。

 少し調子を狂わされるけど見ている感じ悪い人ではなさそうだし、もし相性が悪くなければ正式にパーティを組んで良いと思う。

 ……相性、良ければいいな。


「エスカくんはダンジョンってはじめて?」

「ああ。リーファは?」

「アタシもはじめてなんだ! いっしょだねっ」


 ダンジョンの入り口を前に、リーファは笑いかけてくる。

 初心者二人、初めてのダンジョンってことか。さて、どうなることやら。


「よし、それじゃあ入るぞ」

「うんっ!」


 ダンジョンの入り口である、先が見えない石門をくぐる。すると急に視界が切り替わった。


「な、なんだっ!?」

「わああっ!?」


 辺りは石レンガが積み上げられた壁に囲まれている。後ろを振り向くと白い光が差し込む石門が立っていた。


「ここがダンジョンの中、か」

「わあ……すごいね、こんな感じになるんだ」

「ああ、外から見た様子とは随分違うな」


 キョロキョロと辺りを見渡したリーファは、大きな杖をぎゅっと握りしめた。


「暫くは一本道みたいだな。行こうか」

「うんっ」


 辺りを警戒しながら道を進む。少しばかり薄暗いけど、明かりもないのにある程度の視界は確保されている。でも遠くまでは見えないようだ。

 さすがダンジョン、不思議な空間だな。名前はたしか初心ノ洞窟っていったか。文字通り初心者向けの洞窟ってことなんだろう。


「そういえばエスカくんってどうして冒険者になったの?」

「……俺、記憶喪失でさ。村近くの森で倒れてるところを拾われたんだよ」

「えっ、エスカくん記憶がないの?」


 隣を歩いていたリーファがギョッとしてこちらを向く。


「ああ。しばらくは村で暮らしてたんだけど、忘却ノ迷宮っていうダンジョンがあるのを知って、それが俺の記憶喪失に何か関係あるかもって思ってさ」

「じゃあ、エスカくんが冒険者になったのはそのダンジョンに挑戦するため?」

「そういうこと」


 頷くと、リーファは気が抜けるような声で相槌を打った。


「そういうリーファはなんで冒険者になったんだ? っていうか、なんで俺とパーティを組もうと思ったんだよ?」

「えっと、エスカくんとパーティを組もうと思ったのはね。アタシがパーティ組めなくて困ってたっていうのもあって……」


 リーファが答えようとしたとき、道の奥から聞き慣れた鳴き声が響いた。現れた緑色の体はパッと脳裏に描かれた姿と同じものだ。


「ゴブリンか」


 リーファを入れての初戦闘だ。相手は一体だけだし、俺が弓でやってもいいけど……せっかくだしここは短剣でやってみるか?

 ベルトに下げた鞘から短剣を抜いたところで、リーファが杖を構えた。

 お、魔法か? 実は俺、魔法らしい魔法って初めて見るんだよな。ここは一つ任せて腕前を見せてもらうっていうのもいいかもしれない。


「ファイア!」


 声と共にリーファの杖が炎をまとう。ごうごうと燃える炎を前に、俺は思わず声を上げた。


「おおっ!」


 すごい、魔法だ! こんなに魔法らしい魔法は初めてだ!

 テンションが上がる俺を置いて、リーファは杖を構え……!


 ……そのまま、殴りかかった。


「えっ?」


 杖が顔にめり込んだゴブリンは、そのまま炎に包まれた。


「えっ」


 その様がゆっくりとスローモーションで映し出される。

 炎越しにゴブリンの影が見える。断末魔が上がり、もがくゴブリンをリーファが追撃した。


「えいっ! とうっ!」

「えっ……ええ……?」


 あれ、魔法ってこういうのだったっけ?

 もっと、こう……こう、さあ。炎を飛ばしたりとかじゃなくて?

 なんというか、思ったより物理的……?


「ふー! エスカくん、ゴブリンたおしたよ!」


 振り返ったリーファは一仕事終えたとばかりに清々しい顔をしていた。


「お、おお。すごいな……?」

「えへへ、張り切っちゃったよ」


 にこにこと笑う姿はさっきまで炎の杖でボコボコに殴り倒していた子とは思えない。

 このダンジョン攻略、どうなっちゃうんだ……!?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] え? 付与魔法かな?
[良い点] リーファちゃんの自分のプレゼンが可愛い わんちゃんみたいで大変かわよい リーファちゃんが杖で殴り始めた所で普通にエスカくんと一緒に「えっ」って声出た
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