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後処理

 それからギルド長が戻ってくるまでの間、俺達はゴブリンを探しては狩り続けた。どこを探してもいるくらいで、的には困らない。

 日が傾きかけて矢も少なくなってきたころ、ピィィーと笛の音が鳴った。ギルド長が帰ってきた合図だろう。

 巣の前に戻ると、ギルド長と冒険者達が待っていた。煙が上がっているのはその辺にあったゴブリンの死体でも焼いたのだろう。見るからにボロボロの冒険者もいれば、擦り傷だけの冒険者もいる。

 ぞろぞろと残党狩りに駆り出されていた冒険者達が戻ってきた。あらかた集まると、ギルド長は辺りを見渡して口を開く。


「異常はないな? ……よし、撤収だ」


 行きと同じ人数でぞろぞろと森を進む。これだけの人数がいると手を出してくる魔物もいないようで、随分とあっさり森を抜けられた。

 ギルドに戻ると、受付嬢達から報酬が手渡された。やはり上位のランクほど報酬が多いようだ。


「今回の件は後々追って調査するが……オーガがゴブリンの巣を支配していた事例は初めてだ。何か異変があれば些細なことでも報告するように」


 あー、なるほど。ゴブリン達はオーガのために、あんなに必死に狩りをしてたのか。あの巨体じゃ相当食べそうだしな。


「ああ、それと……エスカ。お前はオーガを討伐した功労者だ。オーガの角はギルドが保有することになるが、その分の報酬は渡す。受け取れ」


 手のひらに乗せられた袋はずっしりと重たい。今までに受け取った中で一番多いんじゃないか? これだけあれば、もうダンジョンに向かっていいかもしれないな。


「暫くはゴブリンの討伐報酬を上げておくから積極的に狩るように。解散だ」


 冒険者達はぞろぞろと帰り始める。

 そういえば昼間に話しかけてきたチャラそうな冒険者は大丈夫だったんだろうか。ぐるりとギルド内を見渡すと、案外簡単に見つかった。向こうもこちらを見つけたようで目が合う。交わった視線は不自然に外された。

 あいつ、どうしたんだ? まさか怪我でもしたか?

 近づこうとすると、そそくさと逃げられる。立ち去ろうとするあいつに、他の冒険者が近づいて肩を組んだ。


「おいお前、あのエルフに話しかけてたヤツだろ? 話さなくていいのかよ」

「バカ、やめろよ! 俺よりずっと上のヤツだぞ、機嫌でも損ねたらいつ手を出されるか……」


 ……ああ、そっか。

 昼間は甘く見られてたのか。だからあんなに気軽に話しかけてきたのか。

 なんだ。気にかけたのがバカみたいじゃないか。

 少し気分が悪い。早く宿に戻って休もう。

 ギルドを出ようとする俺に話しかけようとするヤツはいなかった。不自然なほど何も感じない。討伐に行くまではあんなに視線を感じていたのに、だ。


 宿に帰ってきた俺は、そのままベッドに寝転がった。天井を見上げて息を吐き出す。

 ふと、村に住み始めた頃のことを思い出した。そこにあったのは確かな疎外感。まさかまた感じることになるとは。

 これじゃパーティなんて夢のまた夢かもな。でも、決めたことだ。ここで諦めてはいられない。

 さあ、今日は寝よう。明日はこのアマルガ国にあるダンジョンに向かうんだ。


 鳥の鳴き声で目が覚める。まだ少し残っている眠気を伸びで飛ばして、荷物をまとめた。

 朝食を食べ終えて席を立とうとしたとき、看板娘が少し悲しそうな顔で俺を見た。今日この街を発つことは伝えてある。


「もう出発されるんですね」

「ああ。またこの街に来た時は泊まらせてもらうよ。ここはいい宿だからな」

「……はい、またいらしてくださいね!」


 笑う少女に小さく手を振って宿を出た。

 そうだ、ギルドに簡易的な地図が置いてたな。街を出るならアレを貰って行こう。

 手が触れる前にギルドの扉が開く。そこにはあのチャラい冒険者が立っていた。


「あ……」


 冒険者は引きつった顔で立ち尽くす。少し横に避けても動く様子はない。黙って通ろうにも、そんなど真ん中で止まられると邪魔なんだけど。


「出るなら早く出てくれるか? 中に入りたいんだ」

「あ、ああ」


 冒険者は戸惑いながらも扉から離れた。


「どうも」

「ま、待ってくれ!」


 呼び止められて足を止める。振り返れば、冒険者がこちらを向いていた。とはいっても、目は逸らされたままだが。


「その、昨日は悪かった。悪気があったわけじゃないんだよ。だから、その……えっと……」

「……別にいいよ。別に……気にしてない」

「そ、そうか。それじゃ、俺はこれで……」


 冒険者はそそくさと立ち去った。あれが本心かどうか俺には分からない。ただまあ、あいつはあれで気が済んだようだし、これから先絡んでくることはないだろう。

 なんだかなあ、あまり腑に落ちないけど。まあ、これ以上気にしたって何にもならないし、これでいいんだよな。

 気を取り直して、俺はギルドの中に入った。さっきのやり取りのせいか少し視線が集まっていたが、すぐに霧散する。


「この地図をください」

「はい、二十ピアです」


 わりと安いな。まあ、かなり大雑把なものだし、そんなものか。

 早速買った地図を開く。次の行き先は、この街……王都ハーモニアから西にある街、ビギンズだ。ダンジョン産の品物で栄えている街らしい。

 道中の武器屋で矢を、パン屋で保存が効くパンを補充してから街を出る。

 ダンジョン……いったいどんな場所なんだろう。少しばかりのワクワクを胸に、ビギンズに続く道へ踏み出した。

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