(22)
いい大人が、こういつまでも割り切れていない。
子ども達が傍にいるというのにと、レオは小さく空笑いしては、過去に向けていた視線をフィオとシェナに移した。
「この子達のためにも、できる事をしないと。
もう疑う理由は無い。
犠牲者がまた出てしまう前に、急ぐべきだ」
彼の促しに合わせ、ビクターとジェドが慌ただしく飛び込む。
その様子から、シャンディアが激しく立ち上がった。
「海がおかしい。シャンディア、結界が妙に光ってた」
「解けちまうんなら、その前に移動しねぇとまた……」
シャンディアは、己の魔力の弱さを悔やみ、拳を震わせる。
そして
「力はまだ持つ……私が行くから、ここの人達をお願い」
彼女は外へ急ぐ。
1人ではまずいと判断したジェドは、そのまま付き添いに向かった。
その際、彼はビクターに目配せをする。
その意味を捉えたビクターは、誰にも気づかれないよう頷いた。
漁船を直ぐに出せるよう、グレンとカイルが船着場に駆ける。
南の者達が乗船を急かされる中、未だ眠ったままのレックスは、木材と生地で簡易的に作られた担架で運ばれた。
船着場には、薪が尽きかけた篝火が寂し気に揺れている。
漁船から数メートル離れた先に立つシャンディアとジェドは、微かに斜光を見せる弱った鏡の帳越しの海を警戒していた。
宙にポツリと灯る炎の光から外れている二人は、暗い影に潜んでいるようだ。
人魚の気配がする。
漁船や陸での襲撃とは違い、今は僅かな数のみだ。
「……貴方達を見てる」
「でも喰わねぇんだろ。俺達の場合」
目的は主にフィオとは言え、他の3人もまた対象だという事は、空島での事を通して分かっている。
魔女は、自分達4人の血を欲していた。
ならば、大地のサタンの手先と化している人魚の群は、自分達を捕食せずに掻っ攫う可能性は大いに有り得る。
「ジェド、船に乗って」
シャンディアは海に目を尖らせたまま指示した時――
「2人とも乗って!」
フィオが漁船から叫んだ途端、船体が船着場の縁に激しく衝突して揺れた。
「ジェド!」
ビクターの声が真っ直ぐ彼を射止め、振り向かせた。
ビクターは漁船の係留ロープを完全に解き終えると、上で待機していたカイルとグレンに投げ渡す。
この場から死角になっている船体の向こう側で、何かが起きている。
ジェドはシャンディアの腕を掴んだ。
「君が先に乗れ、早く!」
「そんな……駄目! 危険よ!」
「いいっ!」
ジェドはシャンディアに強引になる傍ら、漁船が再び衝撃を受け、人々の叫声が上がる。
フィオは事態を目にするなり驚愕し、陸に残るジェドとシャンディア、ビクターに大声を張り上げた。
「早く!シャンディア、こっちの結界が割れちゃった!
人魚が入ってくる!」
ジェドはシャンディアをビクターに託す。
「早く行け!」
彼は言いながら槍を構えて皆に背を向けると、迫りくる群の気配がする漁船の裏側をとらえられる位置、船着場の縁に走った。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




