(10)
フィオは傍で屈む女性の格好に、先程までの恐怖が吹き飛んでしまう。
互いに身に纏うものは綺麗とは言えないが、女性の服の質の違いは一目瞭然だ。
フィオは少し触ると、柔らかく、厚みがある。
引っ張ると伸び、ふわりと縮む不思議な布は
「セーターよ。見た事ないかしら?
……まだ残ってるといいけど」
「「せーたー!?」」
2人は涙などすっかり忘れ、それをまじまじと見つめながら触れ続けた。
そこへ、長い大きな影が落ちる。
マージェスが漁船から合流し、彼女達の光景を見て苦笑した。
「いやぁ、こっちは無人島生活でな。
見ての通り、民族みてぇな事させられちまって。
その子等は、あの時を知らん……」
2人の傍にいた南の住民の男女は納得の顔をすると、にこやかに彼らを迎え入れた。
その時、冷たい突風が吹き抜け、人々は砂埃に目を覆い身震いする。
シェナは、フィオや出会った女性に手を引かれる中、温度の激変を繰り返す風に違和感を抱いた。
心が騒つく時、そこに重なるような風が吹きつけるのは最早、彼女にとって日常と言ってよい程に自然な事。
不穏な事態に肌を粟立たせながら、シェナは、遠くの岸辺に立つシャンディアに曇る眼を向けた。
この状況は正に、西でグリフィンを助け出した時と同じだと気付く。
当時は朝でありながら、まるで夕方を思わせる程の暗い空をしていた。
暑い季節でありながら、今みたく凍えるような寒さで、火の傍から離れられなかった。
グリフィンを救出した帰りは、奇妙な鮫に襲われ、それ以降、島や空島に次々と異変が起きた。
カイルとグレンは、息を整えるシャンディアを見守る傍ら、周囲を見渡していた。
以前の世界で例えるならば、船を着けた場所は漁港の船着場に似ていた。
惨事の時、この大陸もまた、酷い沈み方をしたのだろう。
元が1つの国とは思えない地形に変わった住処。
街の断片とはいえ、東の者達が住む孤島と然程変わらない。
ただ、そこら中に見受けられる遺品や漂流物は、懐かしいものばかりだった。
シャンディアは光を失った大海原を見据える。
襲撃が終わったとはいえ、まだ遠くに気配がしていた。
接近してこないのは、自分に対する警戒か。
或いは、4人の何かしらを捉えたのか。
思考を巡らせる傍ら、この島に刻まれた記憶を感じ取る。
捕食された親子。
そのまま、ここの人間を喰いつくし、世界から人類を消そうとする呪われた仲間達。
何が何でも阻止せねばならないと、顔をより険しくさせる。
「皆を、なるべく陸の中央へ……海の傍は危険……」
それについては心配ないだろうと、グレンが後方の建物を見て言った。
集合場所を決めたのか、木々や瓦礫の隙間から多くの人影が窺えた。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
9月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




