(2)
新船は、空島の女王リヴィアによって引き上げられた瓦礫や流木でできた。
他にも新たに生み出した道具があり、少しばかり生活が充実した、東の島の住民達。
島に残る者達は、機織りや耕作、増えた布類で裁縫をする。
嘗ての生活に比べ、島暮らしは不慣れな作業ばかりだが、環境が変化した事で以前よりも生き甲斐を感じている。
前よりも少し広くなった漁船。
4人が空島に昇る頃、落雷により破壊されたそれとほぼ同じモデルだ。
頑丈な木材と布が増えた事で帆を張る箇所が増え、これまでの行動範囲よりも先の沖まで出やすくなっていた。
しかしまだ、探索には出かけていない。
いずれは、今は亡き西の島のように、別の島が存在するのかどうかを見つけるつもりだ。
他所で生きる者がいるならば、より良い生活にしていく為にも接触したいところだと話している。
「ああ何だこれ、さっきから」
仕掛け網を外す為だけに潜水する際は、シュノーケリングで十分だ。
担当していたグレンは濡れた体のまま、魚を網から解きながら苛立っている。
マージェスが彼に振り向くと、その手元から銀色に光る細かい何かがはじけ飛び、1つ摘まんだ。
「ガラス片か?……映ってる、まるで鏡だ。
……随分散らばってるな、混ざって食ったら偉い事になるぞ」
言われてみればと、ジェドも目だけを向ける。
つい、鱗だと思って気にせず弾き飛ばしていた。
「何か遺品でも引っ掛けたんじゃねぇの」
「うわああああ!見てーー!キレーー!ねぇー!」
ジェドの声に被さるように、シェナが掌よりも一回り大きな装飾に思えるものを揺らして見せる。
皆が何事かと振り返るなり、釘付けになった。
それは昔ならば、パーティーの場で女性が付けていそうなブローチにも見える。
だとしても大きい上に棘が多く、まるで子どもが描く星か。
銀色で、それこそ先程から話題にしている鏡のようなガラス片でできており、美しい。
よく見ると、部分的に欠けている。
「怪我するなよシェナ。やけに尖ってるな」
カイルが言いながら目を凝らす。
装飾にしては鋭利で、扱いに注意したいところだ。
「昔に使ってた宝?」
ジェドが作業をしながら横目で尋ねる。
「これ、頭につけたらキレイじゃない?」
獲物もそっちのけに、シェナは金色の短髪を靡かせながら、こめかみにそれを当てる。
ケラケラと明るい声を上げて楽しむ様子は、空島を呪った魔女に声を奪われた事など一切思わせない。
「早くしろよ」
ジェドが気にもせず一言放つと、シェナが持っていたそれを彼に突き出す。
先端が頬の傍で光ると、ジェドは身を僅かに引き、何だと睨んだ。
「あげたら?フィオに」
「はあ!?」
あまりに驚き、手にしていた魚を滑らせる。
どこか動揺している彼に、周りの漁師達は揶揄い混じりに、しかしどこか愛でるように
「「ほーーーーーーーー」」
声を揃え、にんまりするのだった。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します