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(8)




 嘗てのような世界を再び。

各所で懸命に生きる人々が願い、行動する姿が見えるシャンディアは、口を開く。




「南の地は、崩れているとはいえ嘗ての街……

あらゆる記憶を呼び覚ますでしょう……」




彼女はスタンリーから漁師達に眼を向けた。

以前踏みしめていた街の路面を踏む事になる東の者達。

彼等は既に、スタンリーの格好から過去の暮らしを思い出していた。




「なに、大した事ねぇ。

もうすっかりこれに慣れちまったんだから」




船室の入り口に凭れて立つレックスが軽々言うと、自然に足を動かした拍子に傷が疼き、忽ち顔を歪める。

ただ強く布で巻きつけ、皮膚を合わせている状態にあった。






 フィオは、スタンリーがレックスを眺める横から訊ねる。




「お医者さんって、どんな人なの?」



「医者じゃないらしいんだが

ありゃどう見ても医者だ」




なぜそう言い続けるのか、理由を明かされた事も無いと話す。




「こんなんなっちまった世界で

免許がどうとかあるかよ。

腕があるんなら、ありがたい限りだ」




レックスは片足で体の向きを変え、船室に戻ろうとする。




「そりゃ恵まれた出会いだがなぁレックス。

お前、縫われてる間はどうなってんだろうな」



「確かに。麻酔なんて無いだろうし」




グレンの疑問は、波の音だけになる空気を更に凍てつく寒さに変える。

端の4人は、麻酔という言葉に首を傾げるばかりだ。

レックスは慌ただしくシャンディアを見ると、懇願する。




「シャンディア悪いが、力が戻ったら先に俺の足を治してくれ、頼む。

それまで痛みに泣いたりなんかしねぇから」



「お前さん何言ってる。

さっきそこで動いただけで唸ってたってのに」




スタンリーに被せられる中、何も考えていなかったレックスは冷や汗をかく。

想像しただけでも既に痛みを感じてならない。




「なに、縫うだけだレックス。

訓練時代、隊長がそんな経験をしてた。

別に死にやしない」




軽々言うカイルに、レックスは首を振って否定する。




「俺は、そいつとは、違うっ!」




レスキュー隊員が持つ勇ましいものと、やんちゃな自動車整備士がもつそれは、型違いにしか思えなかった。




「糸や針は?後々抜糸があるだろう!」




怯ませようと大きく嫌味を放つマージェスに、レックスはもう喋るなと言いた気に背を向けると、船室のドアを激しく叩きつけた。




「嬢ちゃんが来る前までは、足を切れだの何だの、恐ろしい事を言っておったがな」




スタンリーはまるで孫を見るような目で、船室のドアを眺めている。




 足を失わずに済む代わりに一時的に激痛を伴う。

良い事とはいえ、心というものはそう常に安定しているような都合のいいものではない。

時として揺れ動き、消えるかと思いきや勢いを増す、灯のようなものだ。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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