(5)
「前も言ってたな。火しか映ってねぇじゃん。
今は俺が映ってるけど」
ビクターが飾りに顔を近付け、穴が開く程見つめる。
ジェドとシェナも、そこへ割り込んで覗き込んだ。
「これは何なの?ただの飾りじゃないでしょ?」
シェナは首を傾げながら、装飾に目を瞬く。
「鏡よ。こっちも、これも、全部そう」
シャンディアは、胸を覆う鱗や中央に光る装飾、腰から脛までを覆う靡く腰巻きを揺らす。
「そいつは体と同化しとるのか?」
スタンリーが4人の合間を縫って出ると、彼女は頷く。
「どれも体の一部。
失くすと感情は乱れるし…温度の感じ方も変わる……
傷つけば痛い……
力が漲れば、頑張れる…大丈夫って…………
貴方達と同じでしょ…?」
彼女は最後にまた、フィオを振り返る。
「大…丈夫…」
自分が大切にしている言葉を、シャンディアも言うのか。
自然と口にする言葉だが、どういう訳か、彼女が言うと特別に聞こえる。
「この飾りは、私達ミラ一族の眼と同じ………
未来や過去が見える………
見たいものや夢見たもの
強く願う事…希望といえばいいかしら………
そんなものもまた…見える………」
「おいおい。
じゃあ何も見えねぇ俺達は、そういったもんがないからってか?」
足の痛みが和らいでいるレックスは、船室の扉に身を預けて面白そうに言う。
「大人になったら見えなくなっちまうんだよ。
心がすっかり変わるのさ。
仕事と疲労に追われて、余裕がなくなる」
グレンが舵に肘をつき、昔を宙に見て懐かしむ。
「金と数字にもってかれる。
会計士の世界なんて、そんなもんだ」
「なんと!
お前さん、あんなおっかないもん乗り回すのにそれが職業か?」
スタンリーはグレンを大きく振り返り、驚いた。
彼は、グレンがレックスから人魚を追い払う際のジェットスキーの操縦を思い出している。
「で?他には何をしてるんだ?」
見張り台にいたカイルが滑らかに着地すると、小さなシェナの肩に触れた。
「どんな風に生きてる?」
「……………生き物を守ってる……
海の質を改善するために、今でも身を粉にしてる…」
間を置きながら話す彼女の眼差しは、主に大人達に真っ直ぐ向いていた。
彼等は、海の質の改善という言葉に引っ掛かる。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




