↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/187

(9)




 4人の様子やシャンディアの話に大人達の目は揺れ、顔はみるみる険しくなる。

長老は誰の耳にも届かない程、僅かに唸った。




「その者とは何だ………

また………訪れるというのは……」




シャンディアは、不安に満ちた眼を長老に緩やかに向ける。




「……その者は、揺蕩(たゆた)う巨大な影………

怒り、悲痛を象った姿を持つ………

深い地中の核より現れ、とうとう世の汚れを嗤い、呪うサタンと化した、大地の神………

名は…コア……」




耳を疑う言葉が連なり、皆は情報の処理にそう直ぐ追いつく筈もなかった。

息を吐き、一時、緊張した体を静かに(ほぐ)す。

シャンディアは事態を伝える最中、再び熱を帯びた体を湿らせようと、首や腕に濡れた布を巻き、更に続けた。




「コアの呪いを…怒りを…直ちに消さなければ……

この地球(ほし)に惨事は再び訪れる…」




冗談もどこまでかと、皆は喉を切られるような思いでシャンディアを凝視する。

あの耳を(つんざ)く程の異常な地鳴りと共に、足場も住処も砕かれた、凄惨で血塗られた事態が再び起こるなど想像もしたくない。

もう2度と、命の危険をもたらすような出来事は御免だというのに、何故こうも繰り返されてしまうのか。




「私達は弱ってしまった……

亀裂から放出された呪いを止めきれず、仲間は……仲間はもう……」




思い出すだけでも苦痛に駆られ、身が締めつけられる。

シャンディアは両腕を抱き寄せると、身を窄めて前屈みになった。

腰から(すね)にかけて揺れる鱗の衣に、涙の雫が美しく滴る。

その場にいる者達の顔や、時折揺れ動く炎がそこに映り込んだ。

そんな不思議な鏡の腰巻きに、床に集まる小さな子ども達は目を奪われている。






 「俺達が戦った人魚が…

君の仲間だったって事か…」




察したマージェスが、底を這うような声で訊ねる。

だとすれば酷い事をした。

殺しこそしなかったが、殺しに近い行動を取ったのだから。

しかし、こちらも死にかけた為に下した咄嗟の判断だった。

マージェスや他の漁師達も難しい表情を浮かべ、その場の空気はより一層、濁っていく。






 「泣いてた…」




フィオはふと、カイルが柱に打ち付けた最後の人魚を思い出す。




「返してって、泣いてた…私、聞こえたの…でも…」




全視線がフィオを射抜いていく。




「でも誰も、それが分からないって……」




端の3人はつい、互いを見た。

寂しげなフィオに寄り添えない。

当時はどうしても、彼女が言う事に共に気付いてあげられなかった。

悍ましく、見るからに毒々しい人魚が、悲し気に、寂し気に泣いているなど一切感じなかった。






 「分からないと思う……でも…

貴方だから分かった……」




その時、ジェドが誰よりも先にシャンディアに顔を上げ、目を尖らせた。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。