(7)
「どうした、騒がしいな」
グレンが言いながら老人を引き連れ、その後ろから、ずぶ濡れのカイルとジェド、ビクターが現れる。
「景色が変なのよ!
同じ絵を並べられてるみたいだわ!」
シェナが展望台を繋ぐ網の半ばにしがみついたまま、状況を伝える。
緊張と恐怖が混ざる感情に合わせ、突風が網を揺らした。
そこへ、ジェドが何かを聞きつける。
生き物が立てる岩の衝突音か、それとも鳴き声か。
担いでいた小型ボンベとウェイトを慌ただしく放り投げ、船縁に登る。
ビクターも同様に、辺りを見渡した。
大人達は、誰よりも真剣な動きをする4人に動揺する。
ふざけているのではない。
彼等は何かを感知し、不安気に戸惑っている。
凍てつくような潮風は直に、高低差がある囁きのような音を運んできた。
隙間風の音にも似たそれは、確実に接近している。
辺りを見ると霞がかかり、船内の者達の輪郭がぼやけ始めた途端
「伏せろ!」
ジェドは合図と同時にビクターに飛び付き、転倒。
傍にいたフィオやマージェスもまた、床に大きく身を屈めた。
カイルとグレンは老人を支え、中腰になりながらも周辺から目を離さない。
展望台からはレックスがシェナの位置まで追いつき、彼女を支えた状態で、いよいよ目で捉えたそれに声を失う。
漁船の周りを噛りつくように、数えきれない程の影が蠢いていた。
それらは目にした事がない、銀の模様を垣間見せる巨大なゴンズイか。
「おいおい何だ!?武器を取れ!でかいぞ!」
船は大きく揺れ、連続的な振動が起こる。
耳を劈く悲鳴が外から上がった時、声の主は宙に跳ね上がって現れた。
「フィオ!」
マージェスが透かさず彼女を引き寄せると、入れ替わるように化け物が牙を剥いて着地。
船内はキリキリとした悲鳴で轟いた。
何とも恐ろしい形をしたそれは、下半身に尾鰭を持つ。
「冗談だろ……人魚じゃねぇか!」
グレンは声を裏返しながら、大きく後退る。
脇では南の老人がたまげて叫んでいた。
「グレン、彼と船室にいろ!あと銃を取ってくれ」
カイルの指示通り、彼等は船室へ姿を消した。
現れた人魚の髪は、艶を持たない漆黒をしている。
手で梳く事も困難な程に絡まり、1本1本が硬そうだ。
裂かれたような巨大な口から、鋭利な牙を剥く。
更に喉の奥から泡を吹き出し、今にも喰らいつくつもりだろう。
骸骨を思わせる程に広く開いた両目の中央には、気味悪いオレンジの眼球を乱雑に泳がせている。
皮膚は透き通った薄緑をしていて、いかにも脆いと分かる。
浮き出て目立つ青い血管に僅かでも切りつけさえすれば、血が吹き出そうだ。
「まだ来るよ!」
シェナの甲高い声に重なるように、風が瞬時に全ての帆を張る。
彼女は恐怖に満ち、手は震えていた。
「上に戻れシェナ!絶対下りてくるな!」
レックスが言いながら彼女の襟首を掴み、登るよう促す。
ゴンズイという ウナギの様な見た目の
蠢く魚がおります 線が入っておりまして
ネコの様な髭ももち
英語では(ストラップド)イールキャットフィッシュ
とも
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代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




