(2)
テキーラに酔ったジェドとビクターは、あれから早々に寝床についた。
そして翌朝は予定通り、漁に出ている。
ジェドは大あくびをし、船縁に垂れ下がっていた。
まだ頭痛が微かにあるのを、ずっと耐えている。
「なぁんか今日、変な気分。
めちゃくちゃ寒いし、気味悪い。
風がここ最近で一番冷たいわ。そんな事ない?」
「季節の変化だろう」
風の変化を昔から気にするシェナは、レックスと展望台での仕事を覚える為、網を上っているところだった。
「昨日もずっと曇りだし。
太陽がなさ過ぎるのもつまんないわ」
言いながらレックスの前を進み、展望台を目指す。
彼女は小柄だが、気付けば脚力も腕力もよくつき、あっという間にそこの縁まで辿り着く。
「ほら。早く行くぞ」
カイルがジェドとビクターの小型タンクだけを担いで現れた。
一方彼は、シュノーケルのみを装着している。
海中に張る網の仕掛け方を指導するのに、彼の場合は小型タンクを使う必要はないようだ。
胃の調子が未だに悪く、ビクターは腹に手を当てながら溜め息をついた。
後味がまだ残っているこれの何が美味いのか。
表情には、もう2度と口にするまいと出ている。
それが実にあからさまで、カイルは面白がっていた。
「しっかりしろ。酔ってるなんて関係ないぞ。
背負った背負った」
吐くまではいかないが、波の揺れが微かな嘔気を催す。
それでも2人は、黙々と装着に取り掛かった。
フィオは船室で備品確認を教わっている。
消耗品をいかに少量の消費で済ませるかを考えながら、網や罠を繕う方法。
また、滅多に使わない武器類の状態確認も欠かさず行う。
潮風はあっと言う間に錆をつけてしまうからだ。
こうして4人は当番に出ている訳だが、それでも習慣は変わらない。
戻って片付けた後は、勉強の時間を控えている。
それを上手く躱せないかどうか、体調が優れないながらも2人がボソボソと話しているところを聞きつけたフィオだが、誰にも告げ口はしていない。
潜水するにはそろそろ辛い気温になってきているが、生きる為に漁は欠かせない。
仕掛け網の元へ、ジェドとビクターがレギュレーターを咥えて潜る。
その後をカイルが追いかける。
薄暗い天候でも、海中は互いを捉えるには十分な透明度があった。
灰色の空間が広がるそこには、多くの蔓を捻じり合わせて太いロープにした巨大な網を、広範囲に張っている。
岩に結びつけて固定しているが、今日は波が力強く、メンテナンスがやりにくい。
網の中には既に、多くの魚介類が集まっている。
今日は巨大な海老がかかっていると、ビクターがゴーグル越しに目を丸めた。
これは頂きたいものだ。
その傍ら、ジェドは首を傾げてレンズについたものを摘まむ。
これは、昨日の漁で網を船内に引き上げ、魚を解いている時に見たもの。
細かい、鏡のような鱗だと話していた。
よく見るとそれは、手元だけに限らず、網の内外関係無くあちこちに散見される。
陽光が射さないというのに輝く、不思議な物体だ。
今日もまた、処理の際に邪魔になるのかと想像しながら、網の固定を緩める作業に入る。
全箇所外し終えた時、頭上で見守るカイルに合図をし、漁船から引き上げる流れだ。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




