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再びの惨劇


terra.WORLD Series 代表作 第2弾

LEGEND(伝説)シリーズとして3部作公開します

今回の舞台とテーマは 海底と秘め事

子どもに戻った気持ちで冒険を楽しみたい方向けです

起きてしまった天変地異 カタストロフィの後の地球で生きる人々の物語


※約1960字でお届けします。

 (最多字数であり、本部のみになります)







 冷ややかな風が世を覆う。

(あたか)も血を滲ませたような、不気味な雲が重なる時、人類の声は殺される。




 凍てつく空気は痺れを催し、やがて、時季外れな寒気が襲った。

不意に鼓膜を刺激する怒りを含む嘲笑に、人々の足は止まる。

排気も吐息も止まり、街に蠢く幾千もの戸惑う視線が絡む。




 大地は奪う。

踏みとどまる術や、藁にも縋る思いすらも。

(にわ)かに砕ける市街や(みち)

鉄や外壁、そこに紛れる脈を失う悲鳴の雨は、飛弾を彷彿させた。




まるで輪転か。

辺りを見廻す間に飛び込むフェノメノン(事象)。




 大地は(わら)う。

掘られて負った痛みに。

濃く濁された大気に。

呑まされた塵芥(じんかい)に。

ただ只管、黒い者は低く冷笑(せせらわら)う。

(わら)い、(わら)い続ける。




挿絵(By みてみん)




 世が迎えた最悪の時、露わになった。

漆黒の影を身に纏う、宙に揺らめく巨大な黒い姿。

その透けた衣の中に泳ぐ苦痛の声や狂気は時折、悲しみに暮れた叫びを放つ。

(くす)んだ鉛の仮面は、(カラス)の様な長い(くちばし)を模していた。

顔の上半分を覆い、己の輪郭を淡い紫に灯す。

光る双眼は赤く、熱を帯びていた。




「殺せまい……お前もじきに……その陽炎(かげろう)に吞まれよう……」




含み笑いする巨人の目先には、唯一、敵対する異質の男が立っている。

彼もまた、声も無く口元を釣り上げた。




 地球の崩壊(カタストロフィ)を経ても尚、立位を保つ若き守護者。

数々の崩落を切り抜け、流血しながらも、とうとう守り切れなかった大地の断片に凛と胸を張る。

その身もまた、巨人同様に影を纏うようだが、違った。




 彼の左半身からは、黒い陽炎が奇妙に靡いている。

それに覆われる左眼は、美しく澄んだ空色に灯していた。

手には銀の斜光が走るピストル。

ギアやスライド操作が引き起こす時間移動に散々振り回され、のめり込んだ。

厄介なこれに今、最後の力を込め、未来に賭ける。




「お生憎様、鴉君……

僕が消えても、この地球ほしは…...人は……

必ず勝利するっ!」




 悲痛を絡めながら語気を強めると同時に、体から伸びた黒い陽炎で巨人を包む。

鏡のボディに空色の眼光が反射すると同時に、白銀の閃光が放たれた。




 巨人は纏わりつく重い陽炎に身が沈みかける中、仮面越しの眉間に命中して仰け反る。

これに合わさるように、荒海から数多の白銀の鎖が伸びた。




挿絵(By みてみん)




巨人は雁字搦めにされ、みるみる海底の奥深くに引き摺り込まれる。






挿絵(By みてみん)



 生気を失った世界は壊死に等しい。

静寂に漂う、吸う度に砂を飲むような感覚に、人々は嗚咽する。

鼻を突く生臭さに、胃から最後の喫飯が突き上がる。




 長きに渡って大地に揺さぶられたようだが、実に瞬刻なものだった。

人々は戸惑いに息を激しく震わせる。

暖と和み、金銭を手に生きる、最高であり当然の生活。

ルールや習慣、役割が目の前で崩壊し、廃墟と化した。




それでも、生きた。

様変わりした地球の復興の為。

突如として消された命の為。

残る島や大陸の断片に縋り、僅かな人類は生き永らえた。






 だが再び、世界に淀みが生じる。

ある日、海底に封じられた巨人が、蛇の呪いを放った。

それは天に昇り、天空の神の聖地である空島を瞬く間に侵蝕し始める。

しかし、世界を汚す人類の滅亡を図るその呪いは、再起した竜の神々によって薙ぎ払われた。

あの、凄惨な出来事に篩い落とされずに生き永らえた、複数の異能力が結合した事によって。




 空から舞い戻った、暗く紫に光を灯すか弱い蛇。

海中に落ちるや、深海の底に広がる巨大な鏡の蓋に辿り着く。

亀裂があるその蓋は多くの棘に覆われていた。




その下に封じられる巨人の狂気は、またも興奮に目を赤く光らせる。

帰還した蛇は、抉じ開けられた隙間に呆気なく消えた。






 底に潜む巨人は、天空での事柄を聞きつけると地鳴りを起こす。

その振動は微かな音を立てながら、重く落とされた鏡の蓋に更なる亀裂を増やした。




 海の守り神ミラー族は、これを抑えきれずに困惑する。

鏡の蓋の封印を解かれてしまえば、最悪が再び訪れてしまう。

より頑丈に築くべく、一族は魔力を込めた矢先――




 新たな深い亀裂が走ると、隙間から複数の細い影が縫って出た。

蛇の形を成すそれらは、輪郭を黒と紫に灯す。




 ミラー族は、たちまちその影に接触されては豹変した。

緑の血を巡らせる悍ましい姿に、目が黒く広がるとオレンジの眼球を泳がせる。

牙を剥き、泡を吐き続けた。

鋭い爪から漏れ出す血に触れようものならば、悶え苦しみ、呪われた姿と化す。




 伝染するこれに、筆頭は怯んだ。

筆頭は、天に蛇が昇って以降、封印がそれ以上蹴破られぬようそこに身を据え、鎖を一面に這わせて力を注ぎ続けている。




 一時、豹変した仲間から身を眩ませるべく、残った一握りの仲間と己に鏡の帳を下ろした。

成功したとはいえ、呪われた人魚は元仲間。

いつ嗅ぎつかれ、呪われても不思議ではなかった。






 侵された大半のミラー族は今や、海底に封じるサタンと化した大地の神の手中。

激減した一族の魔力は最早、この事態を抑えきれないところにまできてしまった。




挿絵(By みてみん)









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に続く代表作 第3弾

大海の冒険者~不死の伝説~(Vol.2/後編)をもって

シリーズ完全閉幕します




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― 新着の感想 ―
[一言] 新章開幕おめでとうございます。 壮大な幕開け、神々の黄昏といった感じですね。 今後このシーンがどう物語に繋がるのか楽しみです。
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