(13)
(てきーら?どすう?おれんじぴーる?)
ジェドは顔を顰めて頬杖をつき、それらが何を意味するのかを探るのだが、分からない。
「甘いな!偉くしっかり入れたんだな、グレン」
マージェスだ。
「この間、薄いって言うからさ」
グレンはお酒によくこだわり、空島に行く前からずっと研究している。
その手伝いをマージェスもするのは、彼も酒豪だからだ。
これまで出来上がったものを口にする度、皆は不味くて吐き出していた。
だから自分達には貰えないと思いきや、美味しくできたとしても貰えやしない。
大人達は一体どうなっているんだ。
「あまい なら いいじゃんか!」
欲しがるケビンを遮りながら、母親がそれを口にするが
「ああ…仕方がないとはいえ、私はいいわ…」
「なら おれが のむ!」
「駄目。大人になってから」
「ケチっ!」
怒りを見せる彼に、グリフィンは優しく笑った。
「体のつくりが違うのさ、ケビン。
飲める日はちゃんと来るよ」
それを耳にするなりジェドは、テーブルの下で首を振る。
(体のつくりが違うだって!?バカな!)
どこをどう見ても同じじゃないか。
グリフィンも分からない事を言うものだ。
そろそろ3人の元へ行かないと、魚がなくなる。
まだパタパタと行き交う足音がする間を縫って行くか、と思いきや
「!」
目の前の1人分空いたベンチに、カップが置かれたではないか。
ケビンの母親が彼からそれを遠ざけるべく、一時的にそこに退けたのだろう。
ジェドは間髪入れずにそれを掴んだ。
1杯分がしっかり、なみなみと入っている。
彼女は嫌がったから、殆ど減っていない。
そのままベンチの下の端に置くと、ジェドはテーブル下から彼女の足に当たらないように擦り抜ける。
素早い動きは見事に気付かれず、カップを上から掌で覆う形で掴むと、玄関へ急いだ。
「ジェド」
「あえ!?」
不自然にならないよう、獲物は上手く大腿の影に隠す。
「お前どこにいたんだ。食べないのか?」
カイルが接近してきた。
「ああ要らない。フィオ達と食べる」
「ならこれ持ってけ」
彼が差し出したのは、ウミガメの肉。
赤い身をしており、塩で味付けして煮込んだだけの単純なものだが、栄養が豊富に詰まっている。
確か
(ぷ…ぷろ……テ………何だっけ…もういいや)
持っていた本を脇に挟み、差し出された品物を片手で受け取る。
「これは貰うけど、それもくれよ、今飲んでるやつ。
この水と交換してくれよ」
取ったものを敢えて見せながら、聞いてやる。
「お前は餓鬼だからまだ駄目だ」
「ケチっ!」
ジェドは膨れ面を一瞬見せると、素早くその場から立ち去った。
炎が生み出す淡いオレンジの空間から、ジェドは、外の闇夜にポツンと1人佇む。
扉が閉まって数秒、後方と左右の確認。
誰もいない。異常無し。
「へっ」
成功の笑みを浮かべると、慣れてきた視界を颯爽と進んだ。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します