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*完結* 大海の冒険者~人魚の伝説~  作者: terra.
第二話 夢
18/187

(12)




 ジェドは床を静かに匍匐前進(ほふくぜんしん)した。

片手には、ただ木の皮を重ねて束ねただけの本。

勉強していたと誤魔化す為だけのものであり、今は一切目を通していない。

そもそも、彼は子ども達の中で最も字が読めてしまうので、既につまらなく感じていた。






 大人達が(じき)に、何かしらを持ち寄って席に着き始める。

最近嗅ぎ慣れたこれは、グリルした色々な海鳥だが、あまり美味しくない。

と、思うのは自分だけなのか、他の皆は食べている。

しかし、それらが生んだ卵の料理は好きだった。




 床にはどんどん大人の足が増えていくが、間には今朝、グリフィンと過ごしていたチビ達がいる。

小さい彼等は自分達と違い、夜に出歩く際は親と一緒に行動している。

彼等もまた、ここで食事を共にとるのだ。




「それなあに?」



「お酒。

あんたが大きくなった頃には、もう少し上手にできてるといいけどね」






 竜舌蘭(アガベ)という、比較的乾燥した地に生息する植物が存在する。

様々な植物を見つけられるようになったのもまた、空島の女王リヴィアの影響だろう。




空島から帰還した際に共にやってきた彼女は、生活に欠かせない資材をくれ、これまで見かけた事のない鳥を呼び寄せた。

長老の体を少しばかり元気にさせたり、グリフィンを砂から復活させた。

また、カイルの額の大怪我も一瞬にして治した。




 だがそれらの魔力が今でも持続していると言うより、その力が当時、一時的に働いた事で、環境の条件が整ったのだろうと大人達は話している。






 ところで、その謎の植物だ。

先が尖った多肉質の葉をもち、中心から放射状に広がって生えている。

花が咲くとも言われているが、本当なのかと疑う程、咲かない。

茎から搾り取った汁が甘いのだとか。

それならば、子どもでも飲めるに決まってるだろう。




 多種多様な植物が島で採れるようになってから、植物に詳しい仲間が1人、摂取が可能かどうかを日々懸命にテストしている。

植物を扱ってばかりの姿は野菜を触るようで、

野菜博士(ドクターベジー)と勝手に呼んでいるが、その彼からも色々学んでいた。






 根、茎、葉、芽、花と、1つの植物でも細かく分けるのは、口にできるか否かに関わるからだ。

皮膚に当てたり、汁を垂らす事で接触中毒テストをする。

その後、火を通して唇にあてて刺激が無いかを確かめる。

それから舌の上で確認し、何もなければ呑み込んで長時間待つ。

そのテストをクリアしたものを薬や食事に使うが、まだ誰1人、体に異常を(きた)した事はない。




植物に詳しいのもまた、かっこいいものだと、呑気にテーブルの下で考えている。

しかしなかなか、それをやらせてはもらえない。

やるなと言われると、決まってやりたくなるのだが、こればかりは死にたくないのでやっていない。

そんな事より






 「こりゃなんと…」




長老がいる。

いつの間に来たのか。

どうやら酒を飲んだのか、舌鼓を打つ様子からして、絶対に美味しいだろうと確信する。

耳をすませば、大人達の会話の間を縫うように聞こえる、液体が注がれる音。




「これ、オレンジピール入れたらちょっと変わるんじゃない?」



「まあでも、まだまだだぜ」




レックスとそのパートナーの声だ。




「テキーラは飲もうと思った事ないんだけど…」



「そんな度数高くないさ」




何だか最近、アリーとグリフィンがよく一緒にいるような気がする。








竜舌蘭(りゅうぜつらん)とそのまま読む植物

テキーラの原料になるものだそうで

本編では英語読みでルビを打っています

1こだわりとして 人物のセリフにのみ英語読みルビを

打つようにしてみてますが

今回は私自身もアガベと読みたくて そう打ちました


因みにジェドが花を咲く事に疑いをもつ理由は

センチュリープラントとも呼ばれるもので

数十年に一度にしか咲かないからなんです


――――――――――――――――――


代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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