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*完結* 大海の冒険者~人魚の伝説~  作者: terra.
第十二話 断
168/187

(13)




 シェナは迷いなく直進を維持していた。

コアが再び浮上した反動で大波にハンドルを取られるも、ジェットスキーのバランスを保って見せる。

未だ微かに降る瓦礫の雨が4人の肌を叩きつけ、浅く切りつけた。




 4人の血の匂いに、コアは低い笑い声を溢しながら炯眼(けいがん)を向ける。

赤黒いそれは(じき)に、槍を投擲(とうてき)するが如く長い光の尾を引きながら4人を狙い始めた。




「右だシェナ!」




ビクターの怒号を背に、シェナはフィオと身を低くしながら進路変更を的確に取る。

海面を打ち付けた灼熱の赤い陽炎(かげろう)は、漁船を越える程の高い飛沫(しぶき)を上げた。

それは連続的に、シェナに向けて悪戯に放たれていく。




「北東に切れ! 振り向くな!」




僅かに速度が緩まったのを察したビクターの声に、シェナは一気にハンドルを切り直す。

そこへ背後からフィオもハンドルを握り、速度の維持に努めた。




 コアの視線がシェナに向く最中、ビクターは仮面の(くちばし)にライフルを発砲する。

固い音は豪雨と共に火花に舞い散り、コアがビクターに緩やかに向く。

ビクターは雫に遮られる視界が煩わしく、ゴーグルを取り払うと透かさずもう1発、コアの眼に発砲した。

そこから浴びせられる熱など今は一切感じない。

直視できている理由に構っている余裕はなかった。




 コアは迫りくるビクターを面白がり、低く含み笑いする。




「貴様か……だがその腕……

やはり彼奴(あやつ)程ではあるまい……」




その発言を聞くや否や、ビクターは引き金の指を止めた。

照準器越しに思い出したのは、空島の城で耳にした魔女の発言だ。

彼奴あやつとは一体、誰を指しているのか。

理解不能なところに立たされ、眉を顰める。

自分はこれまで、島の人間以外に誰とも接点を持っていないというのに。




 コアは炎の如く揺らめく影の両腕を広げては、ビクターに向けて押し出す。

その動きを察したジェドは槍を構えた。

途端、あの耳を(つんざ)く様な悲鳴が接近する。

牙と爪を立てた人魚がいよいよ襲撃にかかった。




 接近しようとする4人の逼迫した状況に、ミラー族は青褪める。

興奮するコアの足元が浮上し始めた事に気付いたシャンは、2本の槍で宙を横殴りするよう連続的に引っ掻いた。

出現した太い鏡の刃は、コアの顔面に向けて放たれていく。




 鏡の刃の攻撃は、コアの仮面に衝撃を与えるまでに留まった。

しかしコアは集中を乱し、焦燥にシャンを掴み上げる。

それを目撃したシェナとフィオは堪らず彼を叫んだ。

そして再び、互いに合わさる声によって太い旋風が起こるとコアの腕に吹き付ける。

強い風力に体ごと大きく煽られたコアは、シャンと共に激しく傾いた。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月下旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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