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*完結* 大海の冒険者~人魚の伝説~  作者: terra.
第二話 夢
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(4)




本章のタイトルは「夢」であり

本部は大切なそのシーンに当たります







 いつもなら、漁船が戻る頃には美しい朝焼けも消え、澄んだ青空に太陽が浮かぶ。

しかし今日は()えない。




 まだどこか早朝に思える暗がりが、しんとした小さな家の中に微かな寝息だけが立っている。

暖炉に()べていた木は炭と化し、チラチラと火種を残しながら、まだ陽光を取り入れる兆しがない室内を温め続けていた。




 寝床を見ると、掛け布団を頭まですっぽり被った大きな彼。

隙間からは、寝癖が少々ついた茶色の短髪が飛び出ている。

左足だけがだらりと寝床から抜け落ち、床に着地していた。

両腕は頭上の壁に当たり、枕は一体どこへやら。

疲れているのか随分な寝相だ。

しかし快適なのか、時に小さな声を漏らす。






………


……




……


………




 淡く、白い霞が掛かったぼやけた世界。

それは、縦や横にぐわんぐわんと揺れている。

どうやら、足場の悪いどこかを歩いているのか。

足の裏が痛い。

となると、靴を履いていないのか。

その認識が、今はできない。




 目先には集まる大人達。

その向こうに広がるのは海だろうか。

小さな瓦礫の(いかだ)が浮いている。

忙しない、不安な声がする。




 その更に向こうでは、黄金色の朝陽が水平線をくっきりとなぞるように露わにした。

それに向かいながら自分は、自然と微笑んだ。

今、そこに向かって不器用に歩み続けている。




挿絵(By みてみん)




進み続けた先に何があるのかは分からないが、どうやらそこに行きたいらしい。

いや、行かねばならないような気がしている。

何故なら、自力で歩いているとはいえ、どうも誰かに背中を押されている気がしてならない。

誰なのかは分からないが、温かい、大きな何かに押されている感触がする。

何も怖くない。

(むし)ろ、ほっとしながら歩いている。




 歩き続ける最中、時折、高い音が小さく耳を擽った。

表現し難いそれは、刃物をぶつけ合った時のような、金属の摩擦音にも似ている。

だが、耳を塞ぎたくなるような不快なものではない。

声ではないがまるで、歌を聞いているように心地よく、口が(ほころ)んでいく。




 そうして徐々に、誰かが目の前に近付いてきた。

大きさからして大人だろうが、真っ黒な影になって、誰なのかは判別できない。

奇妙なそれに身を引きたいところだが、体は言う事を聞かず、一切の恐怖も無しにそこへ突き進んでいくではないか。




 その黒い影は、自分が来た事に随分驚いているようで、咄嗟に両腕を広げる。

捕まえられるのか、いや違う。

言う事をきかない体は、そのままその中へ飛び込んだ。

と、言うよりも、先程から気になる何かに、背中をドンと押された気がした。




………


……




……


………






 「ビクターってば!」




フィオの激しい揺さぶりに、彼は目を大きく見開いた。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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