(4)
本章のタイトルは「夢」であり
本部は大切なそのシーンに当たります
いつもなら、漁船が戻る頃には美しい朝焼けも消え、澄んだ青空に太陽が浮かぶ。
しかし今日は冴えない。
まだどこか早朝に思える暗がりが、しんとした小さな家の中に微かな寝息だけが立っている。
暖炉に焚べていた木は炭と化し、チラチラと火種を残しながら、まだ陽光を取り入れる兆しがない室内を温め続けていた。
寝床を見ると、掛け布団を頭まですっぽり被った大きな彼。
隙間からは、寝癖が少々ついた茶色の短髪が飛び出ている。
左足だけがだらりと寝床から抜け落ち、床に着地していた。
両腕は頭上の壁に当たり、枕は一体どこへやら。
疲れているのか随分な寝相だ。
しかし快適なのか、時に小さな声を漏らす。
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淡く、白い霞が掛かったぼやけた世界。
それは、縦や横にぐわんぐわんと揺れている。
どうやら、足場の悪いどこかを歩いているのか。
足の裏が痛い。
となると、靴を履いていないのか。
その認識が、今はできない。
目先には集まる大人達。
その向こうに広がるのは海だろうか。
小さな瓦礫の筏が浮いている。
忙しない、不安な声がする。
その更に向こうでは、黄金色の朝陽が水平線をくっきりとなぞるように露わにした。
それに向かいながら自分は、自然と微笑んだ。
今、そこに向かって不器用に歩み続けている。
進み続けた先に何があるのかは分からないが、どうやらそこに行きたいらしい。
いや、行かねばならないような気がしている。
何故なら、自力で歩いているとはいえ、どうも誰かに背中を押されている気がしてならない。
誰なのかは分からないが、温かい、大きな何かに押されている感触がする。
何も怖くない。
寧ろ、ほっとしながら歩いている。
歩き続ける最中、時折、高い音が小さく耳を擽った。
表現し難いそれは、刃物をぶつけ合った時のような、金属の摩擦音にも似ている。
だが、耳を塞ぎたくなるような不快なものではない。
声ではないがまるで、歌を聞いているように心地よく、口が綻んでいく。
そうして徐々に、誰かが目の前に近付いてきた。
大きさからして大人だろうが、真っ黒な影になって、誰なのかは判別できない。
奇妙なそれに身を引きたいところだが、体は言う事を聞かず、一切の恐怖も無しにそこへ突き進んでいくではないか。
その黒い影は、自分が来た事に随分驚いているようで、咄嗟に両腕を広げる。
捕まえられるのか、いや違う。
言う事をきかない体は、そのままその中へ飛び込んだ。
と、言うよりも、先程から気になる何かに、背中をドンと押された気がした。
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……
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「ビクターってば!」
フィオの激しい揺さぶりに、彼は目を大きく見開いた。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します