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第42話 邪神、降臨・1

 オメガ・グリュンタールは、乗っ取られたティンダロスの救出へ向かう!

 そこで彼が目にしたものとは……!

 オメガは夜の海上にてオメガストライカーを飛ばしていた。向かうは敵に乗っ取られたティンダロスである。彼の後ろにはゼロムが身をかがめて立っていた。


「ゼロムさん、あなたが一緒に来てくださるとは思いませんでした」


 オメガは言った。


「俺も驚いている」


 ゼロムは答えた。


「でも……仲間を見捨てたくはない」


 ゼロムはぎゅっと拳を握りしめた。ふたりはティンダロスを乗っ取ったルルイエ神聖教団との交渉係だった。


 オメガは前方に見えてきた黒い戦艦の格納庫へとオメガストライカーを降下させていった。格納庫にてふたりを待ち構えていたのはオメガもよく知っている相手だった。

 オメガとゼロムはコックピットハッチを開いて格納庫の床面に降り立った。


「よぉ、久しぶりだな……オメガ・グリュンタール」


 凶暴そうな笑みを浮かべ、立っているのはドゥルヨーダナ・ヴァラナシィだ。


「ドゥルヨーダナ……」


 オメガは相手を憎らしげに睨みつけた。


「ドゥルヨーダナ、挑発はそこまでに」


 彼の隣に立つ水色髪の少女が片手を上げて彼を制する。彼女の名はセッテ・ガー。まるで機械のように感情を見せない少女だ。


「ちっ……だが俺はこいつらを殺したくてうずうずしてるんだ! 交渉が失敗したら存分に殺していいんだろう?」


 ドゥルヨーダナは舌なめずりをする。


「それは交渉が失敗したらの話……。それまでは暴れることを禁じられているはず」


 ドゥルヨーダナはセッテから顔を背けた。


「ふたりで……この船を乗っ取ったのか?」


 ゼロムが尋ねる。


「ふたりじゃあないわ。三人よ」


 そんな声が聞こえてきた。オメガとゼロムが声のした方向に目を向けると、紫色のふわりとした髪の少女が格納庫の入口から入ってきてそのそばに立ち止まるところだった。


「初めまして。私のことはアギリから聞いてるわよね。私はアイリス……。今はルルイエ神聖教団の主教よ」

「じゃあ、あなたはやっぱり……」


 オメガはいつかのアギリの話を思い出して言った。アギリによると彼のあこがれの存在だったアイリスは何故かルルイエ神聖教団にいたという。


「でもいくら私たちでもたった三人で何もなしに船を乗っ取るなんてことはできやしないわ。実は協力者がいるの……」

「協力者?」


 オメガが聞き返すとアイリスがちらりとさっき自分が入ってきた格納庫の入口を見た。そこから当たりを気にするような様子で新たに入ってきたのはウィンダー・ロズウェルだった。


「ウィンダー!?」


 オメガは驚いて目を見開く。


「そうよ。ウィンダーは私たちの側へ表返ってくれたの」


 アイリスは面白そうに言った。


「そんなはずはない! ウィンダー……目を覚まして……」

「俺は……」


 ウィンダーは拳銃を取りだしオメガに向けた。


「近づくな。俺は裏切り者だ。近づいたらお前を撃つ」

「そんな……」


 オメガは沈んだように言った。ウィンダーの手は少し震えていた。


「ったく……」


 ドゥルヨーダナが言う。


「どいつもこいつも湿っぽくて気に入らねぇ。オメガ、さっさと『鍵』とやらを俺たちに渡しな。そしたら不本意ながらもここにいる全員の命を助けてやってもいいぜ」

「そうだな……」


 ゼロムは慎重に言った。


「だがその前に仲間の安全を確認したい」


 ドゥルヨーダナとセッテは顔を見合せた。


「いいぜ。だがそれをするのはオメガだけだ。エルフは魔法種族、何をしやがるかわからねぇからな」


 オメガは前に進み出た。


「ドゥルヨーダナ、セッテ……」


 アイリスが言う。


「エルフは私とウィンダーが見張ります。あなたたちはオメガを案内してやってください」


 オメガはドゥルヨーダナとセッテの案内でティンダロスの廊下を進んでいた。


「ドゥルヨーダナ……あんたは……」


 オメガはやがて口を開いた。


「あぁ?」

「なんのために……戦って……」

「妙なことを訊きやがる。血を見るために決まってるだろうが」

「ドゥルヨーダナは……」


 セッテは言いかけたがやめた。オメガは彼女のその言葉に少しだけ感情が見え隠れしているのを感じた。


 *


 一方、ゼロムは格納庫でアイリス、ウィンダーと対峙していた。


「ウィンダー、本当にこれでいいのか?」


 ゼロムは問う。


「まだ後戻りは……」

「できない」


 ウィンダーは首を横に振った。


「俺は裏切り者だ」

「なんでこんなことを……」

「俺は自分の居場所が欲しかった。それだけだ」

「居場所……か」


 ゼロムはふっと斜め上に視線を向けた。


「居場所なら俺にだってないさ。でも……俺は知っている。仲間の優しさを、共に過ごす時間の貴重さを。俺には記憶はないし、エルフとして生きている時間だって人間たちとは違う。でも……」

「でも、なによ」


 そこにアイリスが割り込んできた。


「ねぇエルフさん、私のウィンダーに変なことを吹き込まないでくれない? ウィンダーは自分のためにここを選んだの。ウィンダーが幸せになれる場所はここしかないわ」

「でも……」


 ゼロムは彼女の言葉を気にせずに続ける。


「でも、俺は今ここにいる。俺が本当に守りたいものがそこにあるから。ウィンダー、お前が守りたいものは……」

「うるさい!」


 アイリスが声を荒らげた。そして手を伸ばし、衝撃波を発生させてゼロムを吹き飛ばした。ゼロムはオメガストライカーの装甲に叩きつけられる。


「俺が……守りたいもの?」

「ウィンダー、駄目よ。あんな言葉に惑わされたら……。あなたは……」

「俺は……」


 ウィンダーはそっと目を閉じた。


「やっぱり……わからない」

「そう。それでいいの……」


 アイリスはウィンダーの頬をそっと撫でた。


「アイリス……。こいつ……」


 ゼロムは立ち上がりながら言った。口の中を切った気がする。血の味がした。彼は拳銃を抜く。ウィンダーがそれに気づいて応戦しようとするが、ゼロムの方が僅かに早かった。ゼロムの放った弾は振り返ったアイリスの胸元に命中する。彼女の白い薄手のドレスに血が滲んでいく。ゼロムはさらに3発の銃弾を放った。一方、ウィンダーの弾はゼロムの左肩に命中した。ゼロムは拳銃を捨て、左肩を抑える。


「見ろ、ウィンダー。そいつは……」

「ふふ……ふふふ。あはははははははは!」


 アイリスは銃弾をくらってもなお平然と立っていた。


「そんなんで私を倒したつもりぃ? バッカみたい。エルフ風情が私に歯向かうなんて……」

「そいつは人間じゃあない。そのほかの人間を弄ぶような言動、激昂しやすい性格から推測したが……当たったみたいだな。お前、ナイアーラの同類だろう?」

「えぇ、そうよ……」


 アイリスはその瞳を怒りで燃え上がらせながら言った。


「だから私は我慢がならないの。あなたたちのような下等な生き物に反抗されるのが! みんなみんな、私の駒なのに!」

「正体を現したな……」


 ゼロムは呆然と立ち尽くすウィンダーの手を取った。


「行くぞ! オメガたちに追いつくんだ!」


 ゼロムはウィンダーを引いて振り返らずに走り出した。


「あはははははは、どこをどう走っても無駄よ。人間なんていつでも絶望の縁に叩き落とせるわ!」


 そんな声が聞こえた。


 *


 オメガはドゥルヨーダナとセッテによって艦橋へと通された。艦橋には、ティンダロスの乗員たちがそれぞれに椅子を用意されて拘束されている。


「オメガくん!」


 ミラがオメガの姿を見るなり叫んだ。


「オメガ……」


 アギリは呟く。


「みんな……。今、助けますからね。僕は交渉に……」


 その時、ドゥルヨーダナの腕輪型通信機が鳴った。


「ドゥルヨーダナ、聞こえますか……」


 アイリスの声だ。通信機には何故かノイズが走っている。


「アイリス……」


 アギリが沈んだように言う。


「皆さんを殺しちゃってください」

「そんな……どうして……」


 オメガは思わずドゥルヨーダナの通信機に詰め寄った。


「最後には絶望して死ぬ。それがあなたたちにふさわしい末路ですから」


 アイリスは言った。


「と、いうことだ」


 ドゥルヨーダナはニヤリと笑うとオメガを殴った。オメガはそのまま床に倒れる。


「やっとてめぇを殺せるぜ、オメガ。だがその前に、お前自身に絶望を味あわせてやる!」


 そしてドゥルヨーダナは拳銃を抜くと拘束されたティンダロスの乗員たちに向けた。


「させるか!」


 その時、艦橋にゼロムが入ってきてドゥルヨーダナに飛びかかる。


「くっ……このエルフ……!」


 ドゥルヨーダナはゼロムと揉み合いながら床にこ、がった。彼の後からウィンダーも入ってくる。


「ウィンダー……」


 ディーナが呟いた。


「今のうちに……!」


 オメガは人質たちを解放しようとする。だが、セッテがそんなオメガに足をひっかけて転ばせた。


「私のことも忘れないで」


 セッテは再び床にころがったオメガを華奢な少女のものとは思えない力で抑え込む。


「ドゥルヨーダナが戦う理由はわかった……。僕には理解できない理由だけど、それでも彼は戦わずにはいられない性にあるんだ。でも、あなたは……」

「私は……」


 セッテはオメガの首を両手で締め上げ始める。


「私は、邪神を復活させるために造られた兵器だから……」

「兵器? お前は僕と同じ……」


 オメガは息苦しさの中、声を絞り出して言った。

 その時、彼女の右肩が火花を散らし、セッテはオメガから離れた。オメガが顔を上げるとウィンダーが銃を構えて立っていた。


「俺の……守りたいものは……」


 ウィンダーは呟いた。


「ありがとう、ウィンダー」


 オメガは立ち上がりながらセッテに目を向けた。彼女の右肩の皮膚は剥がれ、そこから銀色の機械が顕になっていた。


「あなたは……本当に……」


 オメガは呟く。セッテ・ガーは完全な機械の人間だった。


「オメガ……俺はセッテを引きつける。お前はその間に人質を解放するんだ」


 ウィンダーが言った。


「俺だって……守りたいものくらいある」


 オメガは頷くと人質を拘束していた手枷と足枷を取り外しにかかった。


 *


 クローネは艦橋にて報告を待っていた。作戦通りにいけばオメガとゼロムが人質を解放して帰還するはずだった。


「クローネさん……」


 シルフィがそんなクローネに声をかけた。


「報告待ち……ですか?」

「はい、オメガくんならやってくれます……」


 クローネは確信を持ってそう言った。


「信じてるんですね」


 シルフィはクローネの隣に立つ。


「そうですね、じきにあの通信機から……」


 シルフィは艦橋に据え置かれた通信用のモニターを見て言った。だが途中で言葉を切る。


「どうかしたんですか?」


 クローネが尋ねた。


「いえ、今……なにか……」


 シルフィは通信用モニターに歩み寄った。モニターは今、真っ暗な画面のはずである。だが彼女にはさっきの一瞬、そこにノイズが走ったように見えたのだ。


「参ったな……」


 その時ふたりの耳にアリアの言葉が飛び込んでくる。


「どうしたんですか?」


 シルフィは咄嗟に尋ねた。


「いいや……大したことはないと思うんだが……コンピュータが固まっちまったみたいだ」


 アリアは自身の椅子の前に伸びるアームに取り付けられたコンピュータを見て言った。


「あのふたりが戻ってくるまでの間……報告書でも作成しようと思ってたんだがな……」


 クローネとシルフィは顔を見合わせた。


 *


 オメガは艦橋にいた乗員全員を解放し終えた。


「皆さん、逃げてください。後のことは僕が……」


 オメガは銃を構えてセッテと睨み合うウィンダー、そしてドゥルヨーダナを取り押さえたゼロムを見ながら言った。


「逃げるったって……」


 アギリが呟いた。


「アギリさん……?」

「納得がいかない。オメガ、アイリスはどこにいる!」

「それは……」


 オメガは答えを渋った。


「格納庫……だな。よし」


 アギリは駆け出した。


「えっ、ちょ、なんでわかるんですか!?」


 オメガは慌てて言う。


「お前はわかりやすいからな……」


 ディーナはやれやれと言った。


「だがまぁ……あいつをこのままにしておくわけにはいかない。追いかけるぞ、オメガ……」


 ディーナが言う。

 後半へ続く!

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