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第33話 悪夢の再会・2

 前半の続き!

 オメガ、クローネ、アギリ、ガンマはその後広間に戻った。

 アギリは、ガンマがまた少しだけみんなと距離を置いた場所にいるのを見つけ、声をかけた。


「ガンマ……どうしたんだ? さっきのロヴェナとやらの話を聞いてから、心がお留守だぜ」

「私のせい……」


 ガンマは言った。


「何が……だ?」

「私は、かつて復讐心にとらわれてこの世界を滅ぼそうとした……。そのせいで、私のような造られた人間を含めた異種族への反感が人間たちの間で高まったのならば、ゲルマニアの人たちが苦しんでいるのは……」

「お前は……」


 アギリは言う。


「オメガを苦しめたいのか?」

「え……?」

「お前がそう思うことによって同じ人造人間であるオメガも苦しむに決まっている。だから少なくともやつの前でそんなことは言うんじゃあないぜ。あいつは僕と違って精神的にも肉体的にも貧弱なんだからな」


 アギリはにやりと笑うと言った。


「それにな……。お前は……確かに世界を滅ぼそうとしたが、最後は地球に落下しようとする大量破壊兵器を止めて、そのまま宇宙に消え去った……。ダンさんの話から僕はそう記憶しているが? だとしたらお前は、より多くの命を救ったことになる。もしかしたら、この僕を含めてな」

「そうかもしれない……」


 ガンマは言った。


「そんなことよりも、踊ろうぜ。せっかく、オメガやクローネやウィンダーやまな板ちゃんが僕たちのためにRAを手に入れようと頑張っているんだ。ここで僕たちがサボってたら立つ瀬がないだろ?」


 ガンマは頷いた。

 ふたりは手を取り合って広間の中央に向かった。


 *


 イズミル家の屋敷の塀の向こう側にいたセッテの元にロヴェナが戻ってきた。


「お待たせ! セッテちゃん」


 ロヴェナはセッテに声をかける。


「槍の在処は……?」


 セッテは訊いた。


「ごめん、分からなかった……」


 ロヴェナは言う。


「それよりも……私……」


 セッテはロヴェナに瞳を向ける。そこから彼女の感情は読み取れない。


「ううん、なんでもない」


 ロヴェナは言った。


「そう、じゃあすぐにここから逃げるべき」


 セッテはロヴェナの手を取る。


「え? どういうこと?」

「来る」


 セッテは言った。


「な……何が?」


 ロヴェナが訊く。その時、彼女たちの上空を赤い何かが轟音を立てて飛び去っていった。


 *


 アギリとガンマはお互いがまるでひとつになったかのように曲に合わせて踊っていた。いつの間にか、ふたりはふたりきりで広間の中央に来ていた。

 やがて曲が終わると周囲から拍手が生じた。その中にはオメガとクローネ、ウィンダーとミラの姿もあった。


「君……社交ダンスの経験があるのかい?」


 ひとりの男が声をかけてきた。


「い……いや……。ただ……昔……何回か見たことがあるというか……」


 アギリは過去の記憶を思い出していた。僕が研究所にいた時……。アイリスはよく、社交の場に招かれていた。その容姿や身のこなしからして、研究所の運営者たちにとっても彼女は特別な存在だったのだろう。そんなアイリスがよく、ひとりで社交ダンスの練習をするのをアギリは見ていた。


「素晴らしいエスコートの仕方だったよ。そちらのお嬢さんが初心者だということは伝わってきたが、それを完全にカバー出来ていた。それに、お互いの気持ちも通じ合っているみたいだったしな」

「ありがとうございます」


 アギリはガンマの方を見ながら言った。

 ガンマは少しだけ笑顔を見せていた。

 そこに、イズミル家の使用人が飛び込んできて当主に伝える。


「た、大変です! 赤いRAが本屋敷上空に現れて……ロンギヌスの槍をよこせなどと意味不明なことを……」

「ロンギヌスの槍……?」


 当主は何か思い当たるものがあるような表情をした。


「赤いRAって……!」


 オメガはアギリのそばに来て言う。


「あぁ、言動からしてあいつだろうな。おそらく、セッテやロヴェナの作戦があまりにも進行しないことに業を煮やしたんだろう」


 アギリは分析した。


「すぐにスターペンドラゴンに連絡して、僕たちのRAを射出してもらえるように……」

「いいや、それよりも手っ取り早い方法があるさ」


 アギリはそう言うとイズミル家当主の前に進み出た。


「アルスラーン・イズミル様。すぐにこの舞踏会の賞品にする予定だったRAを出撃させてください。僕はあの敵を知っています。あいつは大量虐殺も厭わない危険な男です。そうでもしないとここは血の海になる……!」

「し……しかしあれは賞品……」

「だったらこの場で優勝者を決めればいい! こういう舞踏会に来るのですから、だいたい戦闘経験はある者たちでしょう!?」

「それなら……今この瞬間、決まった」


 アルスラーンは言った。


「では、すぐに……!」

「それはお前たちだ。アギリ・ランゴーニュ、それからガンマ・グリュンタール。お前たちの踊りは多くの人を魅了し、また、それだけではなく、いざという時の行動力も今この場で示してくれた。これ以上の適任はいないだろう」

「え……」


 アギリとガンマは驚いて顔を見合せた。


「すぐに行け! これが格納庫の場所だ。最新型RAの実力を見せてやるのだ!」


 アルスラーンは屋敷の地図とふたり分のRAのキーをアギリに手渡した。


「分かりました!」


 アギリとガンマはそのままの格好で広間を飛び出していった。


 イズミル家の屋敷の格納庫に、2機のRAがあった。アギリとガンマはそれらを見上げる。

 一機は深緑色の装甲に覆われたRAだった。頭部には1本のエッジが伸びており、それがハイペリオンタイプの機体であることが分かる。両肩には狼の頭部のようなアーマーが装着されていた。頭部の両側にも狼の耳のような意匠が施されている。手の甲にはビームクローを展開する装置が取り付けられていた。

 もう一機は、両側にウイングを広げたような形の頭部をしたRAだった。ハイペリオンタイプのもう一方の機体よりは明るめの緑色の装甲に覆われている。だが、そのいちばんの特徴は両腕や胴体の一部の装甲が半透明の緑色をしており、そこから内部フレームが透けて見える点だ。


「行こうか、ガンマ」


 アギリは言った。

 ガンマはこくりと頷く。

 ふたりはRAの周囲に巡らされた足場の階段を駆け上がるとキーを押してその胸部のハッチを展開させる。

 ふたりはほぼ同時にコックピットに飛び込んだ。コックピットハッチが閉まり、内部にメインカメラから得られた映像が投影される。

 ふたりはそのメインモニター下部にあるサブモニターに映し出された文字を読み上げ、RAの機体名を確認すると、唱えた。


「アギリ・ランゴーニュ。ハイペリオンナベルス、美しく……なぁ!」

「ガンマ・プロメテウス。メルセデス、出撃する……」


 *


 ドゥルヨーダナ・ヴァラナシィは屋敷に照準を定め、プラズマライフルの銃口を向けた。

 ちっ、楽しそうにパーティなんかしやがって、この俺様が全員消し飛ばしてやる……。

 だがその時、彼の目に屋敷の前庭の地面が左右に開き、そこから二機のRAがせり上がってくるのが見えた。


「RA……?」


 ドゥルヨーダナは思わずプラズマライフルを下ろす。


「こいつは面白くなってきたぜ……!」


 二機のRAは背部から魔法粒子を噴射するとエンディミオンヴリトラに向かっていった。


「ガンマ、やるぞ……!」


 アギリはそう言ってハイペリオンナベルスに両腕のビームクローを展開させた。


「分かってる……」


 ガンマのメルセデスは左腕に取り付けられていたビームセイバーの柄を分離させ、光刃を展開する。


「はっ、何機でも来やがれ!」


 エンディミオンヴリトラもビームフィランギを抜いて応戦にかかった。

 エンディミオンヴリトラは二機の攻撃を次々とかわしていく。


「速い……!」


 ガンマが言った。


「あぁ、こいつは強敵だぜ。ガンマ、久しぶりの戦闘、大丈夫か?」

「私は……」


 ガンマは舞踏会のために広間にいた人たちの顔を思い浮かべた。


「どんな強敵相手でも、みんなを守りたい……」


 ガンマは魔法粒子の出力を上げるとエンディミオンヴリトラに突撃した。エンディミオンヴリトラはその攻撃に押されて少し後退する。


「やったぞ! ガンマ……!」


 アギリがすかさずビームクローで追加の攻撃を加えた。


「ちくしょう……舐めやがって……! アブソリュート……!」


 エンディミオンヴリトラは機体から金色の光を放ち始める。だが、完全にアブソリュートモードに変化する前にハイペリオンナベルスの蹴りがエンディミオンヴリトラを襲った。アブソリュートモードは解除される。


「させるか! さすがに初陣で恥を晒すわけにはいかないんでね」


 アギリは言った。


「アギリ……。アタックスキルを……」


 ガンマが言う。


「あぁ、分かってるぜ。アタックスキル! ケルベロスファング!」


 ハイペリオンナベルスは光に包まれ、黒い光を放つ巨大な三つ首の犬の姿になった。犬はそのままエンディミオンヴリトラに突撃する。エンディミオンヴリトラは両腕のオリハルコン合金製の爪でそれを防御するものの、何度も間髪なく食らわされる攻撃にオリハルコン合金の爪さえも砕かれてしまった。


「これでトドメだ!」


 青い光に包まれたコックピット内でアギリは叫び、機体をエンディミオンヴリトラの正面に突撃させる。

 だがそこで、上空から金色の光線が発射され、ハイペリオンナベルスをはじき飛ばした。

 元の姿に戻ったハイペリオンナベルスをメルセデスが受け止める。


「なんだ……!?」


 アギリとガンマだけではなく、ドゥルヨーダナまでもが光線の飛んできた上空を見上げた。

 そこには、金色に輝くRAが静止していた。アブソリュートモードの輝きとは違う、神々しい輝きのRAだ。


「あいつは……」


 美しい……と、アギリは思った。僕が今まで見てきたものの中でいちばん美しい……あれは1種の芸術作品だ……。アギリは心を奪われる。

 そのRAは細身で、両腕の先は槍状になっている。特徴的なのはその頭部でまるで古代の女神像そのままの形をしていた。

 金色のRAの顔を見た途端、アギリの頭に、脳内に直接電気ショックを浴びせられたかのような衝撃が走った。


「う……うぅっ!」

「アギリ……!?」


 ガンマが心配そうな声を上げる。


「アイリス……なのか?」


 アギリは言った。アギリには、RAの顔と、かつて憧れの存在だった者の顔とが照らし合わされて見えた。

 金色のRAの中で紫色の髪の少女は呟いた。


「ふふっ、そうですよ。私はアイリス・ランスです。……お久しぶりですね、アギリさん」

「ど……どうして……」


 アギリは彼女の声が聞こえたような気がしてそう言っていた。


「どうしてあなたが……そんなところに……」

「どうして……? 同じ言葉を私はあなたに返します。どうしてあなたがそんなところで戦っているのですか……? どうして私とあなたは敵同士として……」


 テレパシーだ……。と、アギリは思う。アイリスはテレパシーで脳内に直接語りかけてきているのだ。


「アギリ……大丈……夫?」


 ガンマが心配そうに声をかける。


「うるさい! 僕は……僕は……」

「アギリさん」


 アイリスは言った。


「もう、私を悲しませないでください」


 金色のRAはそう言うと背部から魔法粒子を噴射して、目にも止まらぬ早さで戦場を離脱した。


「待っ……!」


 アギリは後を追おうとするが、そんなハイペリオンナベルスの腕をメルセデスが掴んだ。


「行っては駄目……」


 ガンマは言う。


「でも……!」


 ガンマは無言で首を横に振った。


「ちっ、この俺様を無視して妙なことをしやがって……」


 その間に、ドゥルヨーダナは二機に攻撃を加えようとする。だが、そこにセッテからの通信が入った。


「待って。今の機体はアイリス主教」

「なんだって!?」

「主教様には何か考えがある。だから、今は抑えて……」

「はっ……面白かねぇ。いや……待てよ」


 ドゥルヨーダナは言った。


「奴は確実にあの機体を見て動揺していた……。こいつは確実に何かありやがるな」


 ドゥルヨーダナは満足気ににやりと笑うとその場から撤退した。


「アイリス……どうして……」


 アギリは虚空を見上げながら呆然と呟いた。

 その聖槍を人々は求めた。

 聖なる力を持つものは、その力ゆえに邪となるのか。

 聖なる槍は今、真実を穿つ。

 開かれるは悪夢の未来。

 次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『槍の在処』。

 運命は、悪夢へと進んでいく。

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