第30話 竜の少女・1
オメガ・グリュンタールらは三つ首のRBの討伐に向かう。
やがて、竜のコックピットから姿を現したのは……!
ハイペリオンオメガVVとハイペリオンガルーはシームルグに従って砂漠を飛行していた。周囲には数機の反乱軍仕様のヤザタもついてきている。
「オメガ、アギリ」
ジャムシードがふたりに声をかけた。
「例の三つ首の龍がこの近くの基地を襲撃している。基地は我々に賛同しザッハーク一派へと反乱の狼煙をあげた基地のひとつだ。我々の作戦は味方の救出、および相手の最大戦力であるかのRBライドビーストを破壊することによって、相手の戦意を完全にくじく。新しいお前たちの連携とやら、しっかり見せつけてやれ!」
「あぁ!」
「分かりました!」
ふたりは頷いた。
しばらく飛行していくと前方に煙と土埃が立ち上る光景が見えた。目をこらすと、金色の龍が機械の両脚で地面を踏み締めながら進撃しているところだった。口からは雷のような光線を放ち辺りを破壊し尽くしている。
「あいつ……また!」
オメガは言った。
「オメガ、落ち着け、むやみやたらに突っ込んでいってもやられるだけだ」
アギリが窘める。
「分かってます! でも、あんなに破壊されて……! それに……」
オメガはRBをしっかりと見据えた。あの中には、パイロットがいるはずだ。そしてRBというマシンの特性上、その精神は暴走状態に……。まるで、アブソリュートモードの時と同じだ……! と、オメガは思う。自身が暴走してしまう恐ろしさは僕自身がいちばん分かってる……! あのパイロットを、助けたい!
「やっぱり、行かせてください! それに、僕にアブソリュートモード使用の許可を!」
「オメガ……!」
「今は、これしかないんです! 向こうのパイロットを助けるには……!」
「オメガ、お前……」
アギリはやや考える表情をするがそのうちに言った。
「分かった。だがお前まで暴走したら僕はお前を許さないからな」
「は、はい……!」
オメガは頷くと精神を統一し、自身の心とRAのフレームとを同期させた。僕は、この力をみんなのために使うんだ……! 自分のためじゃあない。だから、もう一度力を貸してくれ! ハイペリオンオメガVV!
ハイペリオンオメガVVの機体が金色に輝き始めた。
「う、うおぉ……うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
オメガはマシンに精神が呑まれていくのを感じた。
だがそこでアギリが声をかける。
「オメガ! 負けるな! 僕が、いや、僕たちがついている!」
「僕は……負けないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
オメガは叫び、自らの精神を支配しようとするマシンの呪縛を振り切るようにバーニアの出力を上げ、三つ首の龍に突撃していった。ハイペリオンオメガVVが通過した地上は深くえぐられ道が作られる。
三つ首の龍の頭部がすべて、ハイペリオンオメガVVに向いた。
ハイペリオンオメガVVはビームセイバーを抜くと龍に斬り掛かる。
龍はそれぞれの口から雷のような光線を発射した。ハイペリオンオメガVVはその攻撃に呑み込まれる。
「オメガ……!」
ジャムシードが叫んだ。
「いいや、あいつなら……」
それに対してアギリは呟く。
アギリの言葉通りだった。光線が収まるとそこには、無傷のハイペリオンオメガVVがいた。
「無事……なのか?」
ジャムシードは言った。
「くらえ! 化け物!」
ハイペリオンオメガVVの頭部にあるエッジが銀色に輝き始めた。
「アブソリュートアタックスキル! アブソリュートフォトンスラッシュ!」
ハイペリオンオメガVVから銀色の光の鞭が放たれる。光の鞭は三つ首の龍目掛けて振り下ろされた。
「やった……!」
アギリが言った。
「いいや、待て……」
ジャムシードは言う。
光の鞭は三つ首の龍に届く前に止まっていた。そこには、金色に輝くもう一機のRAがあった。頭部に4本の角のようなアンテナを持ち、両腕に鉤爪状の武器が取り付けられたそのRAは、エンディミオンヴリトラだった。
「今度こそてめぇを殺しに来たぜ、ハイペリオンオメガ……!」
ドゥルヨーダナはエンディミオンヴリトラのコックピット内で舌なめずりをすると言った。
「お前は……!」
オメガも前方を睨みつけた。
「僕はもうお前なんかに負けたりしない!」
エンディミオンヴリトラはビームフィランギを抜くと光刃を展開した。両者の黄金に輝く刃は互いにぶつかり合う。
「くっ……!」
「これは……!」
その衝撃はオメガの仲間たちにも届いた。ジャムシードもアギリも、空気が振動するのを感じていた。
三つ首の龍がふたたび光線を放った。光線は地を裂き、数機のヤザタを消滅させる。格闘するハイペリオンオメガVVとエンディミオンヴリトラにも命中するが、両者はその攻撃を相手にせず戦い続けた。
「はっ、てめぇ、さっきアタックスキルを使っちまってたよなぁ。つまり、もうスキルを使える魔力は残っていないってわけだ」
ドゥルヨーダナのオレンジ色の瞳がきらりと光った。
「だったらやってやるぜ! アブソリュートアタックスキル! カルキ・ジョティ!」
地面が大きく振動した。
「なんだ……?」
アギリは咄嗟に地上を見下ろす。すると、ハイペリオンオメガVVの下方の地面から火柱が吹き上がり、ハイペリオンオメガVV目掛けて上昇していく。
「オメガ……!」
アギリは叫んだ。
「くっ……!」
オメガもその攻撃に気がついた。まずい、このままだと避けられない……!
「アタックスキル! フェンリル・グレイプニル!」
だがそこで光の鎖が空中に出現した。鎖はほとんどがハイペリオンオメガVVに到達する前にその機体から放たれるエネルギーによって破壊されたが、それでも何本かはハイペリオンオメガVVを捕らえ、後方に引いた。ハイペリオンオメガVVは既のところでエンディミオンヴリトラのアブソリュートアタックスキルを回避する。
「アギリさん! ありがとうございます!」
オメガはアギリに通信をかけた。
「ったく、手間かけさせやがって」
アギリは言った。
「オメガ、そいつは僕がやる。お前は三つ首の龍のパイロットを救いたいんだろ?」
「でも、このエンディミオンはアブソリュートモードに……!」
「アブソリュートモードがなんだってんだ。僕の力量を見誤らないでほしいな。お前よりはずっとましに戦えるさ」
アギリはハイペリオンガルーのバーニアを吹かすとエンディミオンヴリトラに向かって突撃していった。
「あいつ……馬鹿なのか? アブソリュートモードの俺様相手に……!」
ドゥルヨーダナはやや驚いた表情をする。
「分かりました! でも、死んだら許しませんよ!」
オメガは言う。
「誰が死ぬか! お前こそ死ぬんじゃあないぜ」
アギリは言い返した。
オメガは三つ首の龍の方に方向転換をする。
アギリはその様子を見てふっと笑った。
「それじゃあいくぜ! この炎野郎!」
アギリは自らの機体の装甲が剥がれていくのも気にせずに相手に機体を近づけて言った。
「馬鹿が! 俺様相手に何が出来るってんだよ!」
エンディミオンヴリトラはビームフィランギを振り上げた。しかし、その攻撃は展開された古代文字状のシールドに弾かれる。
「アギリ、お前ひとりにやらせはしない」
ハイペリオンガルーの隣に並び立ったのはシームルグだった。
「まとめて死に急ぐか!」
エンディミオンヴリトラは光のシールドを破壊すると二機に襲いかかった。しかしそこで下方から光弾の雨がエンディミオンヴリトラを襲った。
ドゥルヨーダナがその方向に目をやるとそこにはヤザタたちがプラズマライフルを構えて散開していた。
「騎士長をやらせはしない!」
パイロットのひとりが言った。
「貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドゥルヨーダナは激昂した。
「まとめて、ぶち殺してやるぜ!」
「美しくないな……」
アギリは呟いた。
「むしろ見苦しい」
アギリはさらに機体が損傷を受けていくのも気にせずにエンディミオンヴリトラに突撃するとその両腕を押さえ込んだ。コックピット内の計器類が警告音を発し始めた。
「暴走状態にあるエンディミオン……。貴様をこの場で押さえ込み暴れられない状況にしたらどうなるか、僕は大いに気になるぜ。ひょっとして、内部に溜まった魔力を解放できずに機体自体がどうにかなっちまうんじゃあないか?」
「舐めやがって……。くたばりやがれぇぇぇぇぇぇぇ!」
ドゥルヨーダナは叫ぶとエンディミオンヴリトラの全身のフレームに力を込めさせた。ハイペリオンガルーの四肢が破壊された。だが、一時的にエンディミオンヴリトラの動きを拘束したその功績は大きかった。エンディミオンヴリトラも同時に機体を覆っていた金色の光が弾け飛び、本来の姿に戻ったのだ。
ドゥルヨーダナはエンディミオンヴリトラの右腕の爪を地上に落下していくハイペリオンガルー目掛けて振り下ろした。
「ちくしょう! ふざけやがって! アブソリュートモードにすらなれねぇやつが調子に乗るんじゃあねぇ!」
しかし、その攻撃はシームルグのビームシャムシールに防がれる。
「本来の姿に戻ったお前など、敵では無い!」
だがそこでドゥルヨーダナは不敵に笑った。
「だがてめぇら、大きな勘違いをしていやがるようだな?」
エンディミオンヴリトラのオリハルコン合金製の爪が炎をまとい始めた。
「な……!」
ジャムシードは目を見開いた。
「アブソリュートモードは周囲の魔力を吸収し、エネルギーに変換してフレームから放出するシステム。もしそれが解除されたならば、後に残るのは魔力の有り余った魔動機ってわけだ!」
「アタックスキルが使える……?」
ジャムシードは慌てて機体をエンディミオンヴリトラから離れさせた。
「アタックスキル! カリ・ユガ!」
エンディミオンヴリトラの銀色の爪が炎を放った。炎はシームルグに襲いかかる。
その時、シームルグよりもはるか後方から発射された光線がそのアタックスキルを相殺した。
ジャムシードは背後を振り返った。
そこには、ガンモードにしたビームバイオネットを構えるミネルヴァΔの姿があった。
「アタックスキル。エターナル・シューティングスター。間に合いました……」
クローネは自身を落ち着かせるように呟いた。
「貴様は……!」
ドゥルヨーダナはミネルヴァΔの方に顔を向けた。
「クローネ!」
ジャムシードが言った。
「オメガくんは……!?」
クローネが尋ねる。
「たった今、あの三つ首の龍と格闘中だ! 手伝ってやれ!」
「はい!」
クローネは大きく頷いた。
オメガは三つ首の龍が放つ光線をビームセイバーで防御しながら敵機に着々と近づいていっていた。
「オメガくん!」
そこにクローネからの通信が入る。
「クローネさん……?」
「相手の攻撃は私が引き受けます。オメガくんは自分のやるべき事に集中していてください!」
「で、でも……」
「大丈夫です」
クローネはにこりと笑って言った。
「私はオメガくんと違ってやわではないので」
「むぅ、僕だってそんなにやわじゃ……」
クローネはガンモードのビームバイオネットから光弾を発射し三つ首の龍を挑発した。
龍はそちらに顔を向けると雷のような光線を放った。ミネルヴァΔはその攻撃を空中を自在に飛行してかわしていく。
「オメガくん! 今のうちに!」
クローネは叫んだ。
「分かりました!」
オメガは答えると三つ首の龍に向かっていった。
オメガは相手の機体に精神を統一させた。気持ちを落ち着かせ、コックピットの位置を感じ取る。本来、外からでは分からないコックピットがどこにあるか、オメガには感じることが出来た。アブソリュートモードのおかげだろうか。それとも、オメガの戦闘用人造人間としての素質だろうか。
「そこか……!」
オメガは三つ首の龍の真ん中の首の付け根に向かう。彼はそのままアブソリュートモードを解除した。
「今、助ける……!」
オメガは慎重にビームセイバーを相手の金色の装甲に突き立てた。パイロットを傷つけないようにそっと装甲を引き剥がす。
やがて現れた姿に、オメガは目を丸くした。
「女の……子……?」
そこにいたのは、緑色の髪をした少女だった。彼女は拘束具のような服を身にまとい、コックピットでぐったりとしていた。




