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第29話 特訓! レッツダンシング! ・2

 前半の続き!

 オメガ、アギリ、シルフィの三人は最後に全員で歌い終わるとカラオケボックスを後にしてゲームセンターコーナーを抜け、部屋の入口に向かった。しかし、シルフィが先頭に立って扉の前に立っても扉は開く気配を見せない。


「あ……あれ……?」


 シルフィは首を傾げた。


「ど、どうしたんですか?」


 オメガは嫌な予感がしてそう尋ねる。


「扉……開かなくなっちゃいました」


 シルフィが呆然とした顔で言った。


「あ、開かなくなったって……」


 アギリは言う。


「本当は内側からなら自動で開くはずなんですけど……」


 シルフィは扉の僅かな凸凹に手をかけて引っ張るが、扉はびくともしない。


「そ、そんなぁ……」


 シルフィは打ちひしがれたような声を上げた。


「大丈夫です」


 オメガは言った。


「すぐに通信機で助けを呼べば……」


 だが、左腕の通信機を起動させようとするオメガを、シルフィが止めた。


「駄目です!」

「どうして……ですか?」

「艦の電力を無断で使用していることがアリアさんにバレたら……」


 シルフィはぐっと目をつぶった。


「きっと怒られちゃいます」

「でも、今はそんなことを言っている場合じゃ……」

「そうか……。だがアリアにばれなきゃあいいんだろ?」


 アギリがそこで思い立ったように言った。


「は、はい……」


 シルフィがアギリの方に顔を向けた。


「だったら僕に任せてくれ。僕たちの企みにいちばん加担してくれそうな奴を呼ぶんだよ」

「いちばん加担してくれそうな奴……?」


 オメガは聞き返した。


「あぁ、いるだろう? いっつも悪者ぶってアリアさんに反抗ばっかりしている奴が」


 *


 フローラは先程の扉に木の板を打ち付け終わったところだった。


「なるほど、部屋自体を封鎖してしまうんですね」


 クローネは感心したように言う。


「そうですわ。もし部屋の使用者が中に入れば閉じ込められることになりますし、外にいて何らかの目的のために部屋を使っているのならばどうにかアクションを起こすはずですもの」


 フローラはこの状況を楽しんでいるように見える。

 その時、フローラの左腕の通信機が鳴った。フローラはハンマーを工具箱の上に置くと通信の許可を入れる。


「フローラさん……だな」


 通信機の向こうからアギリの声が聞こえた。


「このことは他言無用で頼みたい。特にアリアさんにはな。僕たちは……今、ある部屋に閉じ込められてしまっている」


 フローラとクローネは顔を見合せた。


「きゅう……」


 クローネに抱えられたままモフ子さんが鳴いた。


「で、今『僕たち』とおっしゃいましたわね? 他には誰がいますの?」

「あー、シルフィさんと……あとはアホがひとり」

「酷いですよ! ちゃんとオメガって言ってください!」


 通勤気の向こうからオメガの怒ったような声が聞こえた。クローネは笑いをこらえるためにモフ子さんをよりいっそう強く抱きしめた。


「ぎゅぎゅうぅぅぅぅ……」


 モフ子さんが苦しそうな声を上げた。


「そう、で、どこの部屋にいますの?」


 フローラは獲物を前にした蛇のように瞳をきらきらさせて言った。


「今……座標を送る」


 アギリから現在位置を示す艦内マップが立体映像として送られてきて、空中に投影される。それは、まさしく今フローラたちが封鎖した部屋だった。


「そう、よく聞いてくださいまし」


 フローラは何かを企んでいるような口振りで言った。


「あ、あぁ……」


 アギリも怪訝そうに言う。


「あなたたちを閉じ込めたのはわたくしですわ」

「フローラ……さんが?」


 アギリは聞き返した。


「えぇ、わたくしとクローネはアリアさんから艦の電力が無断で使われる事件を調査するように命じられましたの。それで不振な部屋を見つけて……。あなたたち、その部屋には何がありますの? 言っていただかないと出してあげませんわよ」

「ごめんなさい……!」


 今度はシルフィの声が聞こえた。


「部屋が余ってるみたいだったから、勝手にアミューズメント用のお部屋を作ってしまって……! 犯人は私です! 皆さんに楽しんでもらいたくって……」

「そうだったんですのね」


 フローラは納得したように言った。


「クローネ、部屋を解放して差し上げて?」

「えっ、もう解放しちゃうんですか?」

「当たり前ですわ」


 フローラは言った。


「相手はわたくしたちの味方でしたし、閉じ込めたことに結果的にはあまり意味はなかったようですしね。……それに……」


 フローラはにやりと笑って付け加えた。


「アリアさんを出し抜いたことは尊敬に値しますわ」

「フローラさん……」


 クローネはやれやれといった様子で言った。


 *


 しばらくして、オメガたちが閉じ込められている部屋にある扉の向こうから騒々しい物音が聞こえ始めた。音が収まった頃、シルフィが扉のセンサーに手をかざすと扉はゆっくりと開いた。

 扉の向こうにはフローラとクローネが立っていた。クローネの両腕にはモフ子さんが抱えられている。


「あの、フローラさん……。このことは……」


 シルフィが言った。


「安心してくださいまし。わたくしは誰にも言いませんわ。特にアリアさんには……」


 フローラはよくぞやってくれたと褒めるような口調で言った。


「良かったです……」


 シルフィはほっと胸をなでおろした。

 だがその時だった。廊下の向こうから足音が聞こえてきた。


「で、誰に内緒だって? フローラ」

「うげっ」


 現れたのはアリアだった。傍にはレアーノも控えている。


「お前たち、しばらくこれを首から提げていろ」


 アリアが差し出したのは「私は艦長に無断で艦内にゲーセンを作りました」と書かれた画用紙だった。


「ひ、酷いですわっ! この鬼艦長!」


 フローラは抗議するが、アリアは言った。


「いや、このくらいで許してやってるんだから鬼ではないだろ……」


 やがて、フローラ、クローネ、オメガ、アギリ、シルフィ、モフ子さんはそれぞれに首から画用紙を下げられてその場を去っていった。

 誰もいなくなるとアリアは呟く。


「んで、問題はこの部屋をどうするか……だな」

「あの、せっかくだからなんすけど……」


 レアーノが言った。


「遊んでいきません?」

「おいおい、あたしらが……いや、待てよ? たまには……いっか」


 アリアはきらびやかなゲームセンターを眺めながら言った。


 *


 オメガたちは道場へ戻ってきた。今度は先程出会ったクローネとフローラ、それにモフ子さんも一緒である。五人と一匹はアリアから首にかけられた画用紙を外すと、クローネとフローラは部屋の壁際に座り、オメガ、アギリ、シルフィは部屋の真ん中に並んで立った。


「シルフィさん、特訓再開ですね!」


 オメガが言った。


「はい、もちろんです! 今回はお客さんがいますし、失敗は許されませんからね?」


 シルフィはクローネたちの方を見て言った。


「大丈夫ですよ。私たちは、ありのままの特訓の様子を見に来ただけなので」


 クローネはモフ子さんを撫でながら言う。


「きゅうきゅう」


 モフ子さんも鳴いた。


「分かりました! じゃあ、自然体で行きましょう!」


 シルフィはオメガたちふたりに向かって敬礼のようなポーズをとる。オメガはそのポーズを返した。

 フローラが床に置かれた蓄音機のスイッチを入れた。ポップなメロディーの曲が流れ始める。

 三人はお互いの動きを感じながらお互いに踊り始めた。


 数分後、曲が終了した。


「良かったですよ!」


 開口一番にシルフィが言った。


「今まででいちばんよかったです。やっぱり、さっきのカラオケの成果ですね!」

「ほ、本当ですか!?」


 オメガが嬉しそうに言った。


「はい、オメガくんもアギリくんも、ふたりとも息ぴったりでした。やっぱり、本当は仲良しさんなんですね!」


 シルフィはふたりの肩をぱんぱんと叩く。


「いや、僕は別に……」


 アギリはオメガの方を見て言いかけるが、彼と目が合い、ふっと笑みをこぼした。


「いいや、そういうことにしておいてやるよ、オメガ」


 アギリはそう呟いた。


「やっぱり、そうだったんですね」


 クローネは嬉しそうに言った。


「そうだったって……何がですの?」


 フローラが尋ねる。


「おふたり、なんだかんだで息ぴったりなんです。いいお友達になれると思っていたのですが……」

「オメガくん、アギリくん」


 シルフィはふたりに向き直って言った。


「では、次はいよいよ発表ですね!」

「発表?」


 オメガとアギリは首を傾げた。


「はい、艦のみんなを集めて、その前でおどるんです! えっと曲は……」


 シルフィは床に置いてあった自身の焦げ茶色のカバンを漁って1枚のレコードを取り出した。


「この曲なんてどうでしょう! 特訓のために私が作曲したんですよ!」

「あの……前々から思ってたんですけど……」


 オメガは言った。


「シルフィさん、ハイスペックすぎません?」


 艦橋にはスターペンドラゴンのクルーたちが集まっていた。ティンダロスからはディーナ、ミラ、ウィンダーの三人も来ている。ミラは「I♡OMEGA」と書かれた団扇を持っている。


「それじゃっ、始めますね!」


 シルフィは元気よく言うと部屋の真ん中に置かれた蓄音機のスイッチを押した。


「な、なんかまだ心の準備が……」


 オメガが言っている間に前奏が始まった。


「いいさ、自然体で続ければいい」


 アギリが言った。


「わ、分かりました!」


 オメガはアギリの言葉に従って曲に合わせて踊り始めた。

 前に踊った時よりも、お互いの動きを感じ合うことが出来ている気がした。これなら、共に力を合わせて敵と戦うことも出来るかもしれない……。オメガはそう思った。アギリの方を見ると、彼も前に見た時よりもしっかりと動けていた。それだけではない、今や艦橋にいる者たち全員が一体となっているような気がした。

 数分間のダンスはあっという間だった。曲の終わりのメロディと共に三人は決めポーズをとる。

 観客たちが拍手をした。


「終わっ……た……」


 オメガは息を切らしながら言った。


「終わったな」


 アギリもそう言ってからオメガに右手を差し出してきた。オメガはその手を右手で握り返した。シルフィはそんなふたりの様子を満足気に眺めていた。

 しばらく余韻に浸っていると、そこにクローネとミラ、それにウィンダーもやって来た。


「クローネさん、ミラちゃん、それに……ウィンダー」


 オメガは三人に声をかける。


「オメガくぅぅぅぅぅぅん! 可愛かったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 オメガに飛びつこうとするミラだったが、その間にクローネがさりげなく立って行く手をふさいだ。


「お疲れ様です。オメガくん、アギリくん」


 クローネは言った。


「きゅきゅきゅう!」


 クローネに抱えられていたモフ子さんが飛び出してオメガに擦り寄ってきた。


「モフ子さんまで……」


 オメガはモフ子さんを受け止めるとそのふわふわとした毛皮を撫でた。


「良かった」


 ウィンダーは抑揚のない声でそうとだけ言った。


「次踊る時は、ウィンダーもだね」


 オメガは言うが、アギリは首を横に振った。


「よせ、オメガ。こいつはそんなキャラじゃあないぜ」

「でも、アギリさんだって元々はこういうキャラじゃなかったような……」

「それはお前といたせいだ。お前のせいで僕の本来の調子が……」

「ふふ、やっぱり仲良しさんですね」


 クローネはその様子を見て微笑ましそうに言った。


「いや、別に……でも……ちょっとは認めてやってもいいかもな、こいつのこと」


 アギリは小声で言った。


「もう、素直じゃないですよ」


 オメガがアギリを肘で小突いた。


「うるさいな。僕はお前のそういうところが苦手なんだ」


 ウィンダーは小突き合うふたりを横目にそっとその場を離れた。

 艦橋を後にしようとするウィンダーにフローラが声をかけた。


「あなた、混ざらなくていいんですの? あの方たちに」


 だが、ウィンダーは振り返らずに歩いていく。


「俺は、いいんだ」


 彼は相変わらずの調子で言った。


「俺は、あんなふうにみんなと楽しくは出来ない。俺は……暗い人間だからな」


 そっと前を見つめたウィンダーの紅い瞳は少しだけ寂しそうだった。

 黄金の竜の腹の中、眠る少女は何を見る?

 高みを往く者が帰りし時、彼は思わぬ再会をする。

 それは美しき破壊者。

 憎しみを抱き世界を裏切った少女は今……。

 次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『竜の少女』。

 その姿は女神か、悪魔か。

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