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第28話 破壊の竜・2

 前半の続き!

 戦場に残ったRAは、ハイペリオンオメガVVとハイペリオンガルー、シームルグ、そして数機のヤザタのみであった。三つ首の龍は敵味方問わず攻撃し、撃墜していた。光線をくらったRAは、跡形もなくその場から消滅していた。


「まずいな……この場から退避しなければ、被害は広がるばかり……」


 呟いたジャムシードだったが、三つ首の龍は次々と光線を発射し、周囲の地形を所構わず破壊し始めた。砂漠の岩山や地面に穴が開き、周囲の地形を変えていく。


「いや……逃がす気は無いということか……」


 ジャムシードは言った。


「こうなったら……。やっぱり……!」


 オメガは自らの精神を機体に集中させた。あの時、出来たのだから、今回だって……! オメガは、いつかイリアム=オリュンポスと戦った時のことを思い出した。あの時は咄嗟のことだったが、感覚はまだ身体の中に残っている。誰かを守りたい。そんな強い思いと同時に自らの身体をハイペリオンオメガVVと一体化させるような感覚だ。あの時は確実に精神と機体とが同期していた。

 だが、精神を集中させようとするオメガにアギリからの通信が入った。


「よせ、オメガ、何を始めようとしてやがる?」

「何をって……僕は……!」

「やめておけ」


 アギリは言った。


「でも……!」

「お前はまだその力を使いこなせちゃあいない。今暴走されちゃあこっちとしても迷惑なんだよ」

「く……」


 オメガは機体を後退させた。三つ首の龍はまだ光線を発射してくる。


「アタックスキル! フェンリル・グレイプニル!」


 アギリはハイペリオンガルーにアタックスキルの鎖を展開させ、攻撃を防御した。鎖と光線とはお互いに相殺される。


「一撃一撃がアタックスキルと同等レベルの攻撃か……。脅威なわけだ」


 アギリは呟いた。

 だがそこに、オメガたちの後方から光線が発射され、三つ首の龍が新たに放った光線とぶつかった。


「あれは……!」


 ジャムシードが振り返ると、攻撃を放ったのはスターペンドラゴンの砲塔だった。艦の前にはミネルヴァΔ、ハイペリオンシュヴァリエ、ハイペリオンミハイルの三機のRAもいる。


「援軍か……!」


 アギリが言った。


「皆さん、大丈夫ですか……って、大丈夫じゃあなさそうですね。ですが、ここはこのまま撤退してもらいます」


 クローネからの通信が味方に入った。


「撤退……? だが……」


 ジャムシードは言う。やつは撤退すら許してくれないぜ。彼は心の中で言葉を続けた。


「安心しな」


 今度はアリアからの通信が入った。


「あのドラゴンさんの攻撃はあたしらが引き受ける。戦艦、なめんなよってな。てぇぇぇぇぇぇ!」


 スターペンドラゴンの砲塔からプラズマ光が一斉発射された。三つ首のドラゴンは装甲も固いようでその攻撃を食らっても機体に穴があくことはない。しかし、バランスを崩させることには成功した。


「隙ができた……!?」


 ジャムシードは言う。そうなれば選択肢はひとつだけだ。


「行くぞ! ひとまずスターペンドラゴンに帰艦する! 味方の弾には当たるなよ……!」


 彼はスターペンドラゴンから発射される光線を見ながら言った。


「はい……!」


 オメガはそう言って機体をスターペンドラゴンに向けるものの、最後に少しだけ、艦の攻撃を受ける三つ首の龍を見やった。


「オメガ……どうした?」


 アギリがそんなオメガに尋ねる。


「いえ、なんでもありません」


 オメガはそう言うと味方に続いて艦に戻っていった。


 スターペンドラゴンは三つ首の龍を攻撃しながら戦場から撤退した。戦っていたRAパイロットたちは、イラン反乱軍のメンバーも含めて全員が艦橋に集まった。


「これで……振り出し、いや、振り出し以下に戻っちまったわけか。初戦はこっちの大敗だった」


 ジャムシードが噛み締めるように言った。


「ま、そう絶望しなさんな。次は勝てばいい話だろ?」


 アリアが言う。


「勝てばって……この状況でよく言えるな。こっちが大敗したとなれば相手の士気は高く味方が集まることも考えにくい。どう足掻いてもこっちの……」


 だが、ジャムシードの言葉をアリアは否定した。


「いいや、逆転する方法はあるさ。あの金ピカのドラゴンを倒せばいいんだろ? そうすりゃあ相手の士気は間違いなくくじかれる。奴らは完全にドラゴンに頼りきっているみたいだったからな、その証拠にドラゴンさんは味方まで諸共に攻撃していた。自分以外のものを戦力として見ていないということだ」

「しかし……あいつを倒す方法が……」

「必ずある」


 アリアはきっぱりと言った。


「人が造ったものだ。人に壊せないはずがないだろう?」

「やっぱり……僕が……」


 オメガはその様子を見て小声で言い、拳を握りしめた。隣にいたクローネがそんなオメガの方を心配そうに見た。


 スターペンドラゴンはやがて、ジャムシードたちが決起をした基地へと帰還した。基地は今、反乱軍の一時的な本拠地となっている。オメガは、スターペンドラゴンの格納庫へ続く廊下を歩いていた。自分でもなぜそこを歩いていたのかは分からなかった。だが、彼は今、そうせずにはいられなかった。格納庫に収容されているハイペリオンオメガVVと無言の対話をしたかったのかもしれない。

 しかし、そんなオメガを呼び止める者がいた。


「オメガくん!」


 それは、クローネだった。


「クローネさん……?」


 オメガは振り返る。


「なにか、また悩んでいるんですね?」


 クローネは言った。


「何もかもお見通しなんですね」


 オメガは言う。


「だってオメガくん、すごく分かりやすいじゃないですか」


 クローネはからかうように言った。


「僕は……今、力が欲しいんです。アブソリュートモードを完全に制御することが出来れば、あのドラゴンだって倒せるかもしれない。それに、敵だってどんどん強くなってきている。アブソリュートモードさえあれば……」

「オメガくん」


 クローネはやや厳しい口調になって言った。


「そうやってなにか物に頼ろうとする間は、いつまで経っても強くなれないと思いますよ」

「え……?」

「大切なのは道具でも、目に見える力でもなく、なにかもうちょっと心の奥底にあるような……そんなものだと思います」

「でも、そんなもので敵は倒せません。三つ首のドラゴンも、ドゥルヨーダナも……」

「オメガくんは、どうして戦っているんですか?」


 クローネは尋ねた。


「はい……?」

「敵を倒すためにだけ戦っているのなら、今すぐこの艦を降りるべきです。でも、そうじゃあないことは私だって知っています。オメガくんはもっとその先の、戦いの先にあるものを求めているはずです」

「戦いの……先にあるもの……」


 クローネはにこりと笑って続けた。


「あ、そうですね……ですがそれを分かったうえで強くなりたいのなら、アギリくんと一緒にダンさんのところへ行くことをおすすめしますよ」

「ダンさんのところに……?」


 オメガは聞き返した。


「はい、たっぷりしごかれてきてくださいね」

「しごかれ……」

「嘘です。いっぱいいいアドバイスが聞けると思いますよ」


 クローネは、いつものオメガをからかう時の口調で言った。


「まったく、心臓に悪いなぁ……」

「頑張ってくださいね」


 クローネはそう言うとオメガの頭をぽんぽんと撫でた。


 オメガは、クローネに言われた通りアギリを連れてスターペンドラゴン内のダンの部屋へと向かった。アギリはオメガの言葉に「お前に言われたから行くんじゃあない。クローネさんのアドバイスなんだろ? そこだけは勘違いするなよな」みたいなことを言って存外素直についてきてくれた。

 オメガはすっと深呼吸をするとダンの部屋の扉をノックした。すぐに扉がスライドしてダンが姿を現した。


「クローネから話は聞いている。アブソリュートモードのことだろう?」


 ダンはふたりに部屋に入るように促すと言った。

 ダンの部屋は、さながらアトリエのようだった。至る所に描きかけの絵が並び、壁には数枚の油彩画がかかっている。


「上手いですね……。ね、アギリさん。……って、アギリさん?」


 オメガは言ってアギリの方を見ると、アギリはとても感動したという表情で壁にかかった絵を取り憑かれたように眺めながら近づいていった。


「美しい……これこそ芸術じゃあないか……」


 アギリは言う。


「あ、あの……アギリさん?」


 オメガの二度目の呼び掛けにアギリはハッと我に返ったように首を横に振った。


「い、いや……見ろ、オメガ、この人は今に有名な絵描きになるぜ。僕が言うんだから間違いはない。まったく、お前の知り合いにしておくなんてもったいないくらいだ」

「アギリさん」


 オメガは怒ったように口をとがらせた。


「僕だって絵くらい描けますよ。後であげますか? 僕が描いた金魚の絵」

「いいや、嫌な予感がするから遠慮しておくよ」


 アギリは答えた。


「アギリ、気に入ってくれたのなら何よりだ」


 ダンは言った。


「どうせなら一枚あげようか?」

「え、えっと……いいのか……? いや、いいんですか?」

「あぁ、俺の絵は、それを気に入って飾ってくれる人のためにあるようなもんだからな。お前みたいに感動してくれる人のものになるなら、絵だって喜んでくれるはずだ」

「か、感謝します! ダンさ……いえ、師匠!」


 アギリはそう言うと姿勢を正した。


「ね、変な人でしょう? クローネさんよりも変なんじゃないかと思ってます……」


 オメガはダンに小声で言った。


「オメガ、お前にだけはその言葉を言われたくないな」


 アギリがオメガを肘で軽く小突いた。


「仲がいいようでなによりだ」


 ダンは言う。


「で、本題に入ってもいいか?」

「は、はい……」


 オメガは緊張して返事をした。


「と言っても答えは簡単だ。アブソリュートモードを完璧に操ることは出来ない。……だが……その力を誰かのために使おうという強い想いがあれば、ある程度までは制御することは可能だ。仲間を傷つけたくない。この力で大切な人を守りたいという強い思いがあればな」

「でも、それくらいなら僕だって……」

「お前は……」


 ダンが口を開くよりも前にアギリが言った。


「安易に力に頼ろうとしすぎなんだよ。もう少し……ぎりぎりまで考えて、それで最終的に他の手段がないといった時ならば僕だってお前のアブソリュートモード使用を止めたりはしない」

「そうだな……」


 ダンは考えるように言った。


「タイミングを見極めるにはチームワークが重要だ。時にはブレーキ役となる仲間が必要だ。確かに今のお前たちは俺から見てもなかなかいいセンスをしているとは思う。だが決定的に、まだ決定的な何かが足りないんだ……」

「あっ」


 オメガは思い当たるというふうに言った。


「確かにアギリさんはことある事に僕に突っかかってきます!」

「それはお前が余計なことをするからだろう? 第一僕はお前となかよしこよしになったつもりはない……」


 だがダンはふたりを制しながら言った。


「あぁいや、それはいいんだ。俺が言っているのはそういう表面的なことじゃあない。もっとお前たちの奥深くに眠っているものだ。お前たち……まだほんの少しだけ敵同士だった頃のことを引きずっているだろう?」

「えっ……」


 オメガは思い返した。確かにそうかもしれない。ウィンダーやミラちゃんとは敵対していた頃も少しは共感するところがあった。むしろ、陣営は違えどもお互いに分かり合えそうな気がしていた。だが、アギリさんは別だ。彼と直接会って話すようになったのは味方になってから。それまでは、機体越しに戦場で敵として会うばかりで話をしたことだってなかった。


「そうかも……しれません」


 オメガは頷いた。


「だとすれば……特訓はその枷を取り払うことがメインになるな……。ついでにお互いのチームワークも強化して……っと……」


 ダンはしばらく考えるような表情をしていたが、やがて決意を固めたように言った。


「お前たち、ダンスは得意か?」

「はい?」

「んえ?」


 オメガとアギリは口々に聞き返した。


「俺はあんまり得意じゃあない。だが、今のお前たちの特訓には最適だと思ってな。……だから代わりに特別講師を用意してやることにした」


 ふたりが戸惑う中、ダンはさも当然だという動きで自らの左腕に取り付けられた通信機に向かって言った。


「シルフィ、今から艦内の道場に来れるか? 少し頼みたいことがあるんだ」


 何も知らないシルフィさんが犠牲に……!? オメガは少しだけ彼女に同情すると共に、これから何が起こるのだろうかと思い、アギリと顔を見合せた。アギリはそんなオメガからわざと視線を逸らせた。お前のせいで変な特訓に付き合わされることになったんだからな? その瞳はそう言っていた。

 こんにちは! シルフィ・オルレアンです。

 なんかいろいろあってオメガくんたちの特訓に付き合わされることになっちゃいました。

 ここはこの私、鬼教官シルフィがジープを乗り回して……っていうのは冗談ですが、特訓って何をすればいいんでしょう……?

 次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『特訓! レッツダンシング!』。

 来週も、私のハートがビートを刻む! ……なんちゃって。

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