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第26話 砂漠の白鷲・2

 前半の続き!

 黒髪のパイロットはビームシャムシールをしまい、腰部からプラズマライフルを取り出すとオメガストライカーに向けた。


「戦闘機風情を差し向けてくるとは俺も舐められたものだな……」


 男は呟くと光弾をオメガストライカーに撃ち込んでいく。

 オメガストライカーはその攻撃を右に左へとかわしながら相手に近づいていった。


「そう簡単に……当たるものか!」


 オメガは呟く。


「なるほど、パイロットのセンスはなかなかということか……」


 男は言った。


「えぇい! 当たれ……!」


 オメガは翼の下部から光弾を発射した。しかし相手の機体はその攻撃を素早く避ける。


「だがな、戦闘機。俺だって機動性なら負けてはいないさ!」


 パイロットはプラズマライフルを腰部に戻すと、ふたたびビームシャムシールを展開し、オメガストライカーに斬り掛かる。

 まずい……。とオメガは思った。相手の動きが速すぎる。接近戦に持ち込まれたら勝ち目はない。

 オメガは慌てて機体を左に旋回させた。危ないところだった。


「オメガくん!」


 そこで、スターペンドラゴンにいるシルフィからの通信が入った。


「今から、ハイペリオンオメガVV(ブイツー)を射出します! 合体準備、OKですか?」

「大丈夫です! いえ、むしろ早めにお願いします!」

「承知之助です!」


 シルフィは敬礼のようなポーズをとる。

 オメガは相手との距離をなるべく一定に保った。


「避けに徹した……? 一体何を企んでいる?」


 相手のパイロットは呟いた。

 しばらくして、オメガの視界が遥か彼方から飛来する金属の塊を捉えた。

 オメガは機体をそちらに向け上昇させる。飛来してくるのは、ハイペリオンオメガVVだ。


「コネクト・イン・トゥ!」


 オメガは叫んだ。ハイペリオンオメガVVとオメガストライカーの間に誘導レーザーが照射される。オメガストライカーの前部が下方に折れ曲がる。しかし、コックピットは地面と水平を保っていた。連結用アームがハイペリオンオメガVVから伸び、オメガストライカーをがっちりと捕まえた。

 オメガストライカーはハイペリオンオメガVVの背部の窪みにすっぽりとはまり、ハイペリオンオメガVVの両眼が光り輝いた。


「ハイペリオンオメガVV! 起動します!」


 オメガは叫んだ。そして腰部からビームセイバーを引き抜く。


「合体機……か」


 相手のパイロットは呟いた。


「集団戦では戦闘機として仲間のサポートにあたり、一騎打ちではRAと合体をして攻撃力を高める。なるほど、戦略的ではあるか……」


 ビームセイバーとビームシャムシールが互いにぶつかった。黄色い火花が空中に散る。


「一気にカタをつける!」


 オメガは言った。


「アタックスキル! フォトンスラッシュVV(ブイツー)!」


 ハイペリオンオメガVVの頭部にあるエッジが虹色の光を放ち始めた。


「アタックスキル……!」


 相手のパイロットの男は目を見開いた。


「こちらは既にスキルを発動しているので魔力量が残っていない……。まさか、あいつはそれを見越して俺の相手をこの合体機に譲ったのか……?」


 だがその時だった。

 男の前方のモニターをピンク色の何かがよぎった。

 ショッキングピンク色をしたそのRAは、前方にアタックスキルと思しきシールドを展開して相手の攻撃を受け止めている。


「お前は……!」


 男は言った。


「ごめん……来ちゃった……」


 新たに現れた機体から通信をかけてきたのは、銀色の髪をふたつ結びにした褐色肌の少女だった。

 その機体も、頭部にはふたつ結びのような飾りがついている。


「新手……?」


 オメガは呟いた。


「待て。そういう問題ではないだろう」


 アタックスキルが消滅すると、男は言った。


「そう? 私が兄のように慕っている騎士長さんの大ピンチなのに?」


 少女はからかうように言う。


「だがお前は第八皇女、何かあってからでは遅い。早急に安全な場所に……」

「またまた、そう言っちゃってぇ。私だって戦えるっての!」


 少女はそう言うと機体のバーニアを吹かしてハイペリオンオメガVVに突撃させた。ショッキングピンクの機体はビームシャムシールを抜いて斬りかかってくる。

 オメガは新たな敵に戸惑いながらもビームセイバーで攻撃を防御した。


「まったく……」


 と、男は呟いた。


「ならば俺も手伝おう。お前に何かあったら大失態だからな」

「余計なお世話だっての」


 オメガは一機で二機の相手と戦うことになってしまった。


「駄目だ……多勢に無勢すぎる……」


 この状況を打開するには……。オメガは攻撃を受け止め、機体を後退させながら考えた。駄目だ……あれは使えない。アブソリュートモードを使って、クローネさんやみんなに心配をかけるわけにはいかない。

 その時、ハイペリオンオメガVVと敵機との間に緑色の何かが飛来した。それは、ジャーファルの機体、ホルスだった。


「見ていたぜ、オメガ」


 ジャーファルは通信をかけた。


「お前の操縦技術……なかなかのものだ。ここからは俺が引き受ける!」


 ジャーファルはホルスのビームシャムシールを振り上げるとショッキングピンク色をした機体に斬りかかった。

 ショッキングピンク色の機体もビームシャムシールを展開してその攻撃を受け止める。


「ありがとうございます、ジャーファルさん……!」


 オメガは再び白い機体と向き直った。


「なんとしてもこの俺を討ち取りたいか……」


 白いRAに乗った男はそう呟いた。


「ふん、だが返り討ちにしてくれる……! 来い!」


 ハイペリオンオメガVVのビームセイバーと白いRAのビームシャムシールとが何度もぶつかりあった。

 と、そこにオメガへの通信が入った。


「オメガくん、聞こえますか?」


 シルフィからの通信だった。


「シルフィさん?」


 オメガは言う。


「全軍に通達がくだりました。付近の砂漠で砂嵐が発生しました。現在、猛スピードでこちらに向かってきています。すぐに撤退を……!」


 見ると、ミネルヴァΔやハイペリオンシュヴァリエらは撤退を開始していた。ハイペリオンミハイルはプラズマビットを展開して相手の攻撃を迎撃していたが、機体を少しづつ後退させている。

 一方、ジャーファルのホルスは相手の攻撃がしつこく、なかなか撤退出来ないでいた。

 そんなホルスの所に、ハイペリオンガルーが飛んできて戦いに割り込んだ。


「お前は……?」


 ジャーファルがアギリに通信をかける。


「こいつの相手は僕が引き受ける。だからあなたは……!」


 アギリは言った。


「だが……」

「あなたは軍の大佐でもある。ここで何かあってからでは遅い。その分僕は軍属ですらない。だから多少のことは……!」


 それからアギリはオメガに通信をかけた。


「いくぞ、オメガ。こいつらをなんとしてもここで食い止めるんだ」


 ハイペリオンガルーはホルスを半ば押しのけるようにしてショッキングピンク色の機体との戦いに参じた。


「お前ら……」


 ジャーファルは呟く。


「いや、何か考えがあるんだな?」


 ジャーファルはバーニアを吹かしてホルスを後退させた。


「アギリさん……」


 オメガは呟く。


「作戦があるんですね!」

「当たり前だ 」


 アギリは答える。


「僕はお前と違って常に慎重に考え、行動をしているからな」


 そう言ってからアギリは撤退しようとし始めた 敵機に敢えて深く斬りこんでいった。

 オメガもそれに倣う。


「こいつ……」


 白い機体のパイロットは呟いた。


「砂嵐が怖くないのか?」

「どうするの?」


 と、ショッキングピンク色の機体に載った少女が通信をかけてくる。


「ここで始末する?」

「いいや……」


 白いRAはハイペリオンオメガVVの右手を蹴りあげ、武器を手放させた。


「ここでこいつらを捕らえ、敵の内情を探る……」


 男は言った。


「いいか? オメガ。なるべく自然に捕まれ。僕たちはあいつらに捕まって、その内情を探るんだ……」


 アギリは作戦を説明した。


 ジャーファル、クローネのふたりがスターペンドラゴンの艦橋に戻ってきた。


「あの、ジャーファルさん。オメガくんは……」


 クローネは、モニターに映る戦場を旋回していく風景に目をやりながら言った。


「あいつらは……おそらく、わざと敵に捕まるつもりだろう」

「え……?」


 クローネは聞き返した。


「そうやって相手の内情を探ろうっていう考えだ」

「で、でも失敗したら殺されて……」

「その可能性は薄い」


 ジャーファルは答えた。


「相手だってこっちの事情を知りたいはずだ。それにあいつら……こういうことには慣れてるんだろ?」


 ジャーファルは言った。

 まぁ確かに、オメガくんはちょくちょく戦線を離脱して変なところに行っちゃいますけど……。クローネは思った。


「本当に、大切に思ってるんだな」


 ジャーファルが言う。


「はい……?」

「オメガのことだ。信頼と心配とが同時に顔に出ているぜ」


 ジャーファルはにやりと笑った。


「えっ、あ、その……」


 クローネははっとして顔を両手でおおった。


「なにも恥ずかしがることはねぇさ。お似合いだと思うぜ」

「からかわないでくださいっ!」


 クローネは怒ったように、それでいて少しだけ楽しそうな口調で言い返した。


 ハイペリオンオメガVVとハイペリオンガルーは戦場からさほど離れていない砂漠地帯に設けられた基地の地下格納庫に連行された。2機とも、武装を取り上げられ、両サイドにそれぞれ二機づつプラズマライフルを構えたヤザタがついている。

 格納庫に着陸をしてしばらくすると、二機の目の前にひとりの男が歩いてきた。黒髪に赤色の瞳、そして褐色肌の二十歳ほどの男だ。

 彼が何かを言おうとしているのを察知したふたりは集音マイクのスイッチを入れた。


「今すぐに降りてこい。さもなくば機体ごとお前たちの身体を解体する」



 男は言った。

 オメガとアギリは通信機越しに顔を見合せた。

 ふたりはほぼ同時にコックピットハッチを開いた。

 その様子を見て男は少し驚いた顔をした。

 あれがテロリストのパイロット? まだ子供じゃあないか。彼はそう思った。

 ふたりはコックピットから取っ手付きのワイヤーを垂らし、岩盤が直接露出した地下格納庫の床面に着地をする。


「お前たちが……その機体のパイロットか」


 男は呟いた。


「俺はジャムシード・アラーク。イラン帝国軍大佐だ」

「アギリ・ランゴーニュ」


 アギリは慎重に言った。


「オメガ・グリュンタール……です」


 オメガも答える。


「そうか」


 ジャムシードは右手を挙げた。それを合図にイラン軍の武装兵たちが銃を構えて現れた。


「こいつらを地下牢へと連行しろ。抵抗するならば撃ち殺してもいい」


 ふたりはなすすべもなく兵士たちによってその場から連行されていった。


 地下牢は、地下に掘られた通路に鉄格子を張り巡らせた牢獄が並んでいるという様相だった。どうやら、ほとんどの牢屋が無人のようで、オメガたちが入っていっても人の気配は感じられなかった。

 ふたりはその中のひとつの部屋に案内され、外側から鉄格子に鍵をかけられた。兵士たちは無言で立ち去っていった。

 オメガは鉄格子に両手をかける。


「無駄だ。何をやっている?」


 アギリが部屋の奥に腰を下ろしながら言った。


「あの、よくお話の世界だと鉄格子をぐにゃっと曲げて……」

「どこの世界線の話だよ……」


 アギリは呆れるように呟いた。


「お前とふたりきり、しかもこんな美しくない牢獄だなんて……」

「でも、これはアギリさんの計画のうちじゃ……」

「監獄の環境は想定外だ」


 アギリは言い返した。


「まったく、どうして僕はお前と一緒に行動するという道を選んじまったんだか……」

「あの時、敵の魔動機と戦っていたのは僕たちですから……」


 オメガは言った。


「だったら僕は運命を呪うね」


 アギリはあまり衛生的とはいえない藁のベッドや部屋の隅に用意されたトイレの便器をちらりと見ながら言った。


「オメガ、藁のベッドはひとりぶんだ。お前が使え」

「えっ、いいんですか?」


 オメガは言う。


「いいもなにも、お前は鈍感そうだからそういうところでも寝られるだろう?」

「でも、アギリさんは……」

「僕はいい。こんな環境じゃあどうせ眠れやしないさ」


 アギリは立ち上がり、鉄格子の方に向かいながら言った。

 男は自らの正義を疑い少年に問う。

 裏切り、それは正しき行いなのか。

 そして砂漠に、死を呼ぶ翼が降臨する。

 黄金が地を割く時、彼らは何を思うか。

 次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『反逆の日』。

 その竜の名は、破壊。

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