第22話 合体! ハイペリオンオメガVV・2
前半の続き!
戦場に新たに現れたRAは、オレンジ色の獅子のようなRAだった。頭部を覆う装甲はたてがみのようにも見える。
ラムダはオメガに通信をかけた。
「あなたは……!?」
オメガは問う。
「初めまして……かな、オメガくん。俺はラムダ・プロメテウス。君の兄にあたる人物さ。そしてどうかな? こちらには君の大好きなクローネちゃんも、そして君の兄自身もいる。仲間に……」
「クローネさんは……!」
オメガは言った。
「お前たちの仲間になんかならない!」
「そうか……そこまで俺たちを拒絶するか」
ラムダは言った。
「悪い弟だ。俺が直々にしつけてやらなくてはなぁ!」
ラムダは自身のRAにビームセイバーを抜かせると瓦礫に埋もれるオメガストライカーに斬りかかった。
「やめてください!」
クローネはミネルヴァΔをオメガストライカーのもとに駆け寄らせようとするが、ラムダのRAは振り返らずにそれを蹴飛ばした。
「ううっ……!」
ミネルヴァΔは後方に倒れる。
「クローネちゃん!?」
アンフィプテラがミネルヴァΔを助け起こした。
「くらえ! オメガ!」
ラムダはRAにビームセイバーを振り上げさせた。だがその時、空から降ってきた何かがラムダのRAを弾き飛ばし、オメガストライカーの目の前に着地をする。それは、RAのようだった。濃い灰色の装甲、そして肩や胸部、頭部にある一枚のエッジは深緑色をしている。
「ハイペリオンオメガ……?」
オメガは呟いた。
それは、ハイペリオンオメガに似ていた。しかし細部のデザインは、今までのハイペリオンオメガよりもより鎧らしさが増しているように見えた。そしていちばんの違いは、背部に大きな空洞が存在していることである。
「オメガくん!」
シルフィからの通信が入った。
「シルフィさん!? 今のは……!」
「ハイペリオンオメガVVです! 以前にライラさんたちが届けてくださって……」
「シルフィさんが乗っているんですか!?」
オメガは尋ねた。
「いいえ、私はスターペンドラゴンにいます! その機体を操縦するのはオメガくんです!」
シルフィは答えた。
「操縦って……乗り換えろと……」
「あぁ、乗り換えなくても大丈夫ですよ」
シルフィは得意げに言った。
「え……?」
「合体しちゃってください! その、オメガストライカーと、ハイペリオンオメガVVを!」
「合体……どうやって……」
オメガは言いかけたが、脳内にイメージが浮かんできた。
「いや、分かります……これは!」
それは、戦闘用として造られた人造人間であるオメガの特権だった。初めて操縦するRAでも、その方法が勝手に脳内へイメージされてくる。
オメガはオメガストライカーを上昇させた。
「合体します!」
オメガは操縦桿をスライドさせた。
「コネクト・イン・トゥ!」
オメガストライカーの前部、コックピット部分が下方に折れ曲がる。一方、コックピットそのものは地面と並行になるようにスライドした。ハイペリオンオメガVVの背部から接続用の短いアームが伸び、そこから誘導レーザーがオメガストライカーに照射される。レーザーはオメガストライカー側の接続用アームと繋がり、両者は引力のように引き合った。
オメガストライカーはハイペリオンオメガVVの背部の窪みへと入り、合体をする。ハイペリオンオメガVVの両目が光り輝いた。
「ハイペリオンオメガVV。起動します!」
オメガは大きくレバーを引いた。ハイペリオンオメガVVは腰部からビームセイバーを引き抜き、戦闘態勢に入る。
「合体機……か」
ラムダは呟いた。
「行くぞ! 弟! それでこそ俺の弟だ!」
両者のビームセイバーは何度もぶつかりあった。力の程はほぼ互角だ。
「兄さんは……!」
オメガが言った。
「あなたたちの目的はなんですか! どうして、クローネさんを引き入れて……僕まで仲間にしようと!」
「復讐だ!」
ラムダは叫んだ。
「ナイアーラが仕組んだ世界をめちゃめちゃにするための道具? そんなものが構うものか! 俺は、世界に復讐をしたい!」
「そんなことをして……」
「お前には分からないだろう!」
ラムダは言った。
「俺はお前と違い、兄弟たちが殺された時、その場にいた! 俺自身も銃弾をくらった! だが俺はその弾が少し逸れていたためにひとり生き延びた! 奴ら人間どもは、こう言ったんだ! 『悪魔』と……! 神に造られなかった俺たち人造人間は、悪魔であると! 自分たちが生み出した張本人のくせして!」
「だからといって、本当に悪魔になろうとしなくても……!」
「俺を悪魔にしたのは人間たちだ! だからその人間たちに知らしめてやる!」
ラムダのRAの連続攻撃がハイペリオンオメガVVを襲った。ハイペリオンオメガVVはその攻撃にやや圧倒されかける。
「確かに……僕たちを造った人間は身勝手な奴らかもしれない! でも、人間はそれだけじゃあないんだ! クローネさんや、ダンさんや、それに僕を導いてくれた数え切れない人たちみたいな人間もいる! たった一部の者たちを恨んでいるというだけで、そういう人たちを巻き込むわけにはいかないんだっ!」
「だからお前は未熟なんだっ! 俺の怒りは! 復讐は! 理屈じゃあないっ! アタックスキル! ネメオス・レオン!」
ラムダのRAが金色のオーラに包まれたかと思うと、そのオーラが黄金のライオンの姿に変化をした。黄金のライオンは赤い目を光らせながらハイペリオンオメガVVに突撃してくる。
「こっちだって……! アタックスキル! フォトンスラッシュVV!」
ハイペリオンオメガVVの頭部のエッジから虹色の鞭のような光が放たれ、黄金のライオンと激突した。周囲は光の爆風に包まれる。
「くっ……」
「クローネちゃんっ……」
クローネとティラエは眩しさに瞳を閉じた。
やがて、爆風が晴れると、瓦礫の山の中に佇むハイペリオンオメガVVとラムダのRAの姿があった。
「そうか……アタックスキルをもってしても、俺のイリアム=オリュンポスとあのRAは互角か……」
しかしラムダはにやりと笑う。
「だが、この力はお前にはあるまい!」
ラムダの機体、イリアム=オリュンポスは黄金に発光を始めた。さっきの金色のオーラとは違い、機体の装甲が黄金色の光を放っているのだ。
「あれは……!」
クローネは息を飲んだ。
「俺はこの力で貴様たちの司令塔を撃破した……。オメガ、次はお前だ……!」
黄金色の光を放つイリアム=オリュンポスは同時に装甲から膨大なエネルギーの衝撃波も発生させていた。周囲の建物の外壁が破壊され始める。
オメガは、機体を立たせるのもやっとであった。
「これが……俺の……アブソリュートモードだ!」
イリアム=オリュンポスはゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。それと同時に、ハイペリオンオメガVVを襲う衝撃波と強まってきていた。
「お前を倒すのにもう武器なんていらない……」
イリアム=オリュンポスはビームセイバーを腰部に戻した。
「俺は予言するっ! 貴様をこの素手一本で倒してやると……!」
イリアム=オリュンポスは右腕を振り上げた。
「オメガくん! 逃げてください!」
クローネが必死に通信をかけた。
「くっ……」
駄目だ……逃げられない……。オメガは本能的にそう直感した。あの形態になった敵は、現存するどんなRAよりも速く動ける。たとえ1発目の攻撃をかわしても、二発目の攻撃がすぐに襲ってくるだろう。そうしたら、もう僕には……。いいや、僕はここで引くわけにはいかないんだ! オメガは自分の心に言い聞かせた。
それから、通信機越しにラムダを見据えて言う。
「僕は、復讐を否定しない! 君たちは僕には想像も出来ないほどの苦しみを味わっているんだろう! ……だけど! だからといって関係の無い人を巻き込むわけにはいかないんだっ! 僕は、そういう人たちのためにお前を倒すっ!」
「そういう台詞は、勝ってから言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
イリアム=オリュンポスの拳が振り下ろされた。
「オメガくん……っ!」
クローネははっとして身を乗り出す。
だが、コンマ一秒後、そこには信じられない光景が広がっていた。ハイペリオンオメガVVがイリアム=オリュンポスの拳を受け止めているのだ。それだけではない、ハイペリオンオメガVV自身も黄金色に光り輝いていた。
「お前は……!」
ラムダは驚いて目を見開いた。
「分からない……分からないけど、これなら! お前を倒せる!」
オメガは右手に持っていたビームセイバーを腰部に戻した。
「ここからは格闘戦だ! 兄さん! 僕はお前と決着をつける!」
「いいだろう。来い!」
二機の拳と拳がぶつかりあった。その度に新たな衝撃波が発生した。周囲の建物は砕け、地面は割れ、そして瓦礫が舞い上がった。
「す……すごい……」
ティラエが呟いた。
「すごく……ないです」
クローネは言った。
「え……?」
「アブソリュートモードの技術は、二年前の戦役で永久凍結されたはずです! その理由は、一種の機体の暴走状態だから……。その暴走は、パイロットの精神にも影響を与える……。おそらく、今はふたりとも、周りが見えていません!」
クローネは慌てて機体を立ち上がらせた。
「止めないと……!」
だが、そんなミネルヴァΔをアンフィプテラが制止する。
「待って! アブソリュートモードじゃあない普通モードであの中に飛び込んだら、多分、機体は……。それだけじゃあなくて、クローネちゃんは!」
「だったら、オメガくんやラムダさんはどうなってもいいんですか!?」
クローネは言い返した。
「それに……あの状況でアタックスキルの強化版、アブソリュートアタックスキルでも放たれれば、多分この街は消滅するでしょう」
「だったら……私が……止める」
ティラエは言った。
「ティラエさん……?」
「クローネちゃんには未来があるもん。オメガくんと幸せになるっていう。でも、私に未来はない。私の人生はとうに終わっている。だから……」
「馬鹿なことを言わないでください!」
クローネはミネルヴァΔにアンフィプテラの頬を引っぱたかせた。
「私が言うのも難ですが、人は何度だってやり直すことができます。ティラエさんだってきっと……!」
「ありがとう、クローネちゃん。でも、私は……もういいんだ。もう誰も、恨まないでね。復讐なんて……あんたみたいな子にはいちばん似合わない言葉だからさ……」
ティラエはそう言うと、ミネルヴァΔを突き飛ばし、アンフィプテラに戦場のただ中へと向かわせた。
ティラエはふたりに通信をかける。
「聞いて! ふたりとも、マシンに飲み込まれてる! 自分を取り戻して!」
「邪魔をするな!」
ラムダが叫んだ。
「僕は、兄さんを止める!」
オメガが言う。そして、両者ともに目の前のアンフィプテラを無視して拳を振り上げた。
「アタックスキル!」
ティラエは叫んだ。四枚のウイングがそれぞれふたつづつハイペリオンオメガVVとイリアム=オリュンポスに向けられる。
「ドラゴニック・フルバースト!」
四つの砲塔から赤いレーザーが発射された。
ハイペリオンオメガVVとイリアム=オリュンポスはその攻撃をくらうもののびくともしない。
「そんなアタックスキルが、効くものか!」
ラムダがアンフィプテラにターゲットを変更し、襲いかかろうとした。
「僕たちの戦いの……邪魔を……!」
だが、拳を振り上げたハイペリオンオメガVVの右手を受け止めたのは、ミネルヴァΔだった。
「そこまでです!」
クローネは言った。ミネルヴァΔの装甲にヒビが入り始める。
「オメガくんは……私を救ってくださいました……。ですから今度は、私が、オメガくんを救う番です! オメガくん! 戻ってきてください!」
クローネは言う。
「でも、こいつは……!」
「目を覚ましてくださいっ!」
クローネはほとんど叫ぶように言った。
「クローネ……さん?」
その途端に、オメガの心で何かが砕けたような気がした。
「そうか……僕は……」
オメガははたと気がついた。
「僕には、戦うよりも大切なものがあるんだっ!」
そして、アンフィプテラに迫っていたイリアム=オリュンポスの拳を蹴り飛ばす。
ハイペリオンオメガVVはみるみるうちに元の色に戻っていった。
「何故……。何故俺と戦わない!」
ラムダが叫んだ。
「僕は戦わない。君は僕の兄さんだ。だから……僕は君を救いたい」
オメガは答えた。
「オメガくん」
クローネはオメガに声をかけた。
「おかえり……ですね」
オメガは答えた。
「はい! 申し訳ありません。色々とご迷惑を……」
「いいえ、大丈夫ですよ? もし、僕がクローネさんの立場なら、同じことをしていたかもしれません……」
それからオメガは続けた。
「帰りましょう、クローネさん。みんな、待っています」
「そうですね」
クローネはにっこりと笑って答えた。
やっぱり……あなたには笑顔がいちばん似合いますよ。オメガはそう心の中で呟いた。
そこは赤き大陸。
砂塵は行く道を覆い、来たりし道を隠す。
新たなる出会いは再開かそれとも。
砂漠の姫君は何を見るのか。
次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『アラビア帝国にて』。
暑さ、乾き、そして希望。




