表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/86

第11話 クローネ・コペンハーゲンの覚悟・2

 前半の続き!

 ダンは話を続けた。


「ガンマ・プロメテウスは俺たちの友人にして、敵でもあった……。彼女は、自分たちの仲間が人間たちによって半ば虐殺に近い形で殺されたがため、復讐を誓い、ミレニアム戦役の最終盤で宇宙から地球を滅ぼしてしまおうと考えたんだ……。それで、俺たちとガンマは敵対関係になってしまった……」


 自分の兄弟たちの話は……初めて聞く。と、オメガは思った。


「でも勘違いはしないでほしい。ガンマは決して悪い人間ではなかった……ということだ。だが、最終的に彼女は、決戦に敗れ……そのまま消息を絶った……」

「そうだったんですね……」


 オメガは言った。


「だから……彼女が見たら喜ぶだろうな。オメガ、お前は兵器として造られた人間ながらも、クローネやライラといった者たちに囲まれてひとりの人間として生きている」

「僕は……」


 と、オメガは言った。


「なにか勘違いをしていました……。兵器として造られた人間なんだから、なにか特別なことをしなくちゃあいけないって。みんなより常に強く在らなきゃいけないって……でも……」

「いいや、その必要は無いんだ。お前はひとりの人間として生きて欲しい。それがお前の姉や兄たちの望みでもあろう」

「ありがとうございます……」


 オメガは感謝の言葉を口にしていた。


「あなたと……話せてよかった……」

「あの……お取り込みは終わりましたか?」


 そこで、クローネがバルコニーに顔を覗かせた。


「はい、ちょうど……」


 オメガは答える。


「分かりました。では、今から艦の方に通信をかけます。ですが……」


 と、クローネはバルコニーの三人と、部屋の中の三人を見回した。


「使用出来るRAはオメガくんのハイペリオンオメガと神威かむいさんの月聖神の二機だけ……これだけの人数となると……」

「いや、いいんだクローネ。俺たちはここに残る」


 ダンは言った。


「で、ですが……」

「私たちは旅する画家さんです。ただ困っている人を助けただけで、政治的にどうこうしようとかは思ってませんから!」


 シルフィは敬礼のようなポーズを取る。


「分かりました……ですが、絶対に捕まったりはしないでくださいね」

「大丈夫だ。すぐにライラが政権を奪還してくれるんだろ?」


 ダンが言った。


「まぁ、そのつもりだけどね……」


 ライラックは例の屈託のない笑顔を浮かべて答える。

 その時だった。階下で悲鳴と銃声が聞こえた。次いで誰かの罵声が聞こえる。


「こいつ……家宅捜索を渋ったぞ! 洗え! 家中を洗うんだ! 裏切り者が隠れているかもしれない!」


 兵士たちが宿屋に上がり込んできたのだ。


「やれやれ、どっちが裏切り者なんだか……」


 ライラックがため息をついた。

 やがて、階段を上がってくる足音が聞こえる。


「そ、そんな……いくら今RAを射出してもらったところでこれでは間に合いません……!」


 クローネが悲鳴じみた声で言った。

 ダンがバルコニーから下を覗く。


「通りにもいる……。飛び降りて逃げようにもそうもいかないってわけか」

「いざとなったら私が総督を守る……!」


 と、双子の片割れが前に進み出た。


「いや、待て、今回ばかりはラテの格闘術でも多勢に無勢だ……」

「でも……時間を稼げればいいんだろう?」


 ラテはそう言うと扉を勢いよく開けた。それと同時にすぐそこまで迫っていた兵士たちが勢いよく部屋になだれ込んでくる。だが、ラテは次々と敵をなぎ倒していった。


「艦長! すぐにRAを射出してください! 位置情報は今送った場所です!」


 クローネは通信機に向かって叫ぶ。


「クローネ!」


 ダンが自身の拳銃を彼女に向かって投げた。

 クローネがそれを受け止める。


「こいつはお前が使った方が役に立ちそうだ」

「あ、ありがとうございます!」


 クローネは拳銃を構えた。直後、兵士が銃を構えるものの、クローネはそれよりも素早い動きで相手の銃口を的確に撃ち抜き、使い物にならなくした。


「やれやれ、僕たちは役立たずみたいだね」


 ライラックはそう言って部屋の後方に移動する。そこにはオメガとモカもいた。

 部屋の入口付近には、クローネが武装解除させ、ラテが気を失わせた兵士たちの身体が累々と積み上がっていく。


「皆さん、こっちです! 多分、この分なら正面突破で脱出できるかと……!」

「あの子……なかなか凄いですね……」


 モカが呟いた。


「あぁ、そうだろう? クローネはそういう子なんだ」


 ライラックはそう言ってオメガとモカを伴って部屋の入口に移動した。

 オメガはダンとシルフィの方を振り返る。


「本当に……」

「あぁ、行ってくれ。俺は……お前と話せて楽しかったぜ」


 ダンは手を振った。


「大丈夫です! 私たち、これまで何回ピンチになっても、切り抜けてきましたし!」


 シルフィも言った。


「分かりました……でも、無理はしないでください」


 オメガはそう言って部屋を出て、ふたりに別れを告げた。

 ラテは宿屋の一階の食事スペースの敵を次々と気絶させていった。クローネは銃を撃ち、自分の弾丸で相手の放った弾丸を弾くという高度な防御方法をとっていた。たとえ弾切れをしても、床に倒れた兵士からすぐに新しい拳銃を調達する。

 そこで、宿屋の外で地響きが聞こえ、兵士たちが悲鳴をあげて逃げていくのが見えた。五人は外に飛び出す。

 そこには月聖神が立ち上がり、地面に膝をつけて着地したハイペリオンオメガの姿があった。

 月聖神も、すぐに膝立ちの姿勢になり、コックピットハッチを開く。


「んで、誰が俺のところに乗るんだい?」


 神威が言った。


「ラテ、行きますよ……」


 モカがラテの手を取ると月聖神によじ登った。


「と、言うことは僕は……」


 オメガはキーを取り出してスイッチを押し、ハイペリオンオメガのハッチを開く。


「初めまして、よろしくお願いしますね」


 クローネが面白そうに言った。


「クローネ、君……オメガにはそんな冗談まで言うの?」

「だから言ったでしょう? クローネさんはいつも僕のことをからかってくる困った先輩だって」

「仲良しだねぇ」


 ライラックはさも微笑ましいものでも見るような表情で言った。


「さっ、オメガくん、行きますよ? 操縦のお手並み、すぐそばでたっぷりと拝見してあげますからね?」


 クローネが言い、ふたりを先導してコックピットに飛び乗った。オメガとライラックもそれに続き、コックピットハッチが閉まる。

 オメガが操縦席に座ると、外部の様子がモニターに投影された。

 ハイペリオンオメガの両眼に黄色い光が灯る。


「ハイペリオンオメガ。オメガ・グリュンタール、翔びます!」


 オメガはレバーを大きく引いた。ハイペリオンオメガが立ち上がる。前方に目をやると、既に月聖神は飛んでいくところだった。

 ハイペリオンオメガもバーニアを吹かし、それに続こうとする。だが、ライラックが叫んだ。


「オメガ! 伏せて! 危ない!」


 咄嗟にその言葉に従ったオメガの頭上を、ビームセイバーが通り過ぎた。ハイペリオンオメガが顔を上げると、前方に紫色と白の機体色をしたRAが着地をしたところだった。背中には鳥の翼のようなウイングが生えた機体だ。頭部のエッジは紫色をしており、その先に先が二本に分かれた金色のアンテナが取り付けられている。緑色のツインアイが光り輝いていた。

 RAはウイングからバーニアを噴射するとビームセイバーを構えてこちらに突撃してきた。


「くっ……あくまでも邪魔をするつもりなのか……!」


 オメガもハイペリオンオメガにビームセイバーを抜かせ、立ち向かう。


「お前なんか……この場で倒して……」


 だが、そんなオメガにクローネが言った。


「落ち着いてください! 今は逃げることが先決です! 過剰攻撃は……!」

「でも、こいつを倒さないと、僕たちは……」

「代わってください」


 クローネは言った。


「え……?」

「操縦を代わってください。私が手本を見せます」

「でも……」

「オメガ、クローネに代わってやるんだ。彼女の戦い方、しっかりと目に焼き付けておくんだよ……」

「分かりました……」


 オメガは操縦席をクローネに明け渡した。

 クローネは操縦席につくと深呼吸をし、言った。


「行きますよ……。見ていてくださいね……!」


 クローネが操縦するハイペリオンオメガはビームセイバーをしまうと、武器を持たないまま相手に突撃した。相手はビームセイバーを振るう。だが、その光刃が当たろうかという直前で、ハイペリオンオメガはプラズマライフルを抜いて相手のビームセイバーの柄を撃ち抜いた。光刃を発生させる装置が損傷し、光の刃は消滅する。


「たぁっ!」


 すかさずハイペリオンオメガは相手の頭部メインカメラを撃ち抜いた。そして空中に飛び上がる。


「相手のメインカメラを撃ち抜きました……これで敵は追っては来れないはずです……」


 クローネは言った。


「凄いです……無駄がなかった……」

「相変わらず、君の戦い方は洗練されているよ。近接戦以外は完璧だということがよく分かるね」


 ライラックも言った。


「ちょっと、近接戦の話はやめてください。私だって気にしてはいるんですから……」

「でも、クローネさん、この前の戦いではその近接戦で機体を壊しちゃいましたからね」


 オメガもからかうように言った。


「オメガくんまでっ!」


 クローネは頬を膨らます。


「えぇっと……君、機体を壊しちゃったのかい?」


 ライラックが尋ねた。


「はい……だから今回の作戦に参加したのは、神威さんの機体とオメガくんの機体だけなんです……」

「で、後任機体は?」


 ライラックは尋ねた。


「まだ決まっていません……」

「そうか……」


 ライラックは少し考えるような表情をしてから続けた。


「だったら、僕たちが所有している最新型の機体があるんだ。そいつを使うといいよ」

「え……」


 クローネはライラックの方を見た。


「ほら、僕とクローネの友情の好でさ。譲ってやるよ。幸いにしてまだパイロットも決まってないし……」

「良かったですね、クローネさん。元カレからのプレゼントですよ!」


 クローネの無言の肘鉄がオメガを直撃した。


「ありがとうございます……」

「なぁに、ただ……ちょっとだけ武器が扱いにくいっていうのが難点かな」

「武器が……扱いにくい……? どんな武器なんですか?」


 ライラックは答えた。


「銃剣、すなわちバイオネットさ」


 スターペンドラゴンは新たに三人の乗員を迎えた。ライラック・ソフィアとモカとラテの三人である。今後は、そんな彼らの政権奪還に向けて作戦を進行することとなった。

 作戦会議室でアリア艦長がライラックたちと話している間。クローネは艦内の道場で神威を呼び出していた。この道場は、神威が自身の武道の鍛錬のために造らせた部屋である。

 紺色の道着に身を包み、長い黒髪をひとつに結わえたクローネの姿を目にして神威は言った。


「どうした? クローネ、イメチェンかい? 似合ってはいるが……」

「神威さん……」


 と、クローネは言った。


「私に、剣術を教えてください」

「別に構わないが……どうしたんだ? いきなり……」

「私は……これまで、自分は遠距離戦闘向きだと思ってきました……。確かにそれは、己の強みでもありましたが、同時に弱みでもありました。……前回の戦闘で、私はそれを思い知りました。私の今度の新しい機体は……遠距離戦闘と近接戦と……両方に適した特殊機体です。ですから、私は自分の新しい戦い方に挑戦したいんです……!」


 それからクローネは何故かミラの姿を思い出した。


「それに、私には絶対に負けたくない相手がいますし……」

「分かった……」


 と、神威は言った。


「お前の覚悟、確かに受け取った。ならばこちらとて容赦なく、本物の稽古といこうではないか」

「望むところです……!」


 しばらくして、道着に着替え竹刀を持って現れた神威に、クローネは同じく竹刀を持って対峙した。


「さぁ来い! クローネ!」

「分かりましたっ!」


 クローネは畳を蹴ると竹刀を振りかぶった。

 だが、神威の竹刀は目にも止まらぬ早さでクローネの腹部に命中し、彼女は畳に倒れ込む。


「どうした? もうおしまいか?」


 神威は問う。


「い、いいえ……まだまだです……! まだ……これからです!」


 クローネは力を振り絞って立ち上がるとふたたび神威に打ちかかった。だが、今度も竹刀を弾かれ、後方に倒れてしまう。


「まだ……まだ行けます!」


 クローネは、何度倒れても不死鳥のように立ち上がる。だが、神威の力の足元にはまだまだ到底及ばなかった。

 彼らは、強くなるために生まれ変わる。

 覚悟を決めた時に、まだ見ぬ力が覚醒する。

 仮面の向こうには何があるのか。

 それを知る者は、かつての英雄。

 次回、魔法戦線ハイペリオンΩ『その名はディーナ』。

 正義と正義が、ぶつかり合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ