愛されない双子の片割れは爆発した
初投稿作品になります。
これが書きたい!という話は思いつくものの…
上手く文章化できず、完結させられないので練習として短編に挑戦しました。
無理矢理話を短くまとめているので、変なところがあるかと思います(汗
読んでみて、誤字脱字やアドバイスなどある方がいらっしゃいましたらどうぞ宜しくお願い致します。
「今の君は…まるで爆弾みたいだな。」
それが私の運命を大きく変えたあの日、彼に言われた言葉だった―――。
ある日、プルウィア伯爵家に女の子が産まれた。
そこの夫婦は互いに愛し合っていたが、長い間子宝に恵まれなかった。周りから心ない言葉を言われていた妻はやっとの妊娠に歓喜し涙した。夫もまた妻だけを愛していけると喜んだ。
そして妻は自分に似た太陽の光の様な明るい金の髪を持つ子供を産んだ。夫はその子を抱き、部屋を飛び出していった。そして屋敷の中はお祝いムードで盛り上がった。
その数分後、妻は更に月の光の様な銀の髪を持った子を産んだが、その子の誕生を喜んでくれる者はその場にはいなくなってしまっていた。
この時からだろう、私達双子の運命が大きく別れていたのは…
数年後、私達は順調に成長した。
先に産まれた金の髪を持つ子はソル、後に産まれた銀の髪を持つ私はルナと名付けられた。ソルは元気な明るい子に育ち、私は大人しく無口に育った。
「おとうさま〜見てみて!ソルね、もぉこんなに刺繍できるようになったのよ!」
「おぉ!さすが私の娘だ。こんなに素晴らしい作品は見たことがないよ!」
「でしょ~!お母様も上手って言ってくれたの。今度はお父様にハンカチ刺繍してくるね!」
「ぁの、お父様…私も刺繍したの。これ…。」
「あぁ、上手くできているな。立派な淑女になれるようこれからも励みなさい。」
「はぃ…ありがとうございます。」
ソルと私と父の会話はいつもこんなもの。
ソルのモノは何を刺繍しているのか分からないのに褒めてもらえる。だけど我が家の家紋だと分かるように刺繍できた私はもっとできるようになれとしか言われない。
「おかあさま〜見てみて!もぉカテーシーもできるようになったのよ!」
「あらあら、カーテシーね?だけどもう立派な淑女ね。ご褒美に今日は貴方の好きなものを料理長に頼んでおきましょうね。」
「ぁの、お母様…私もマナーのお勉強で褒められたの…。」
「そうなの、良かったわね。」
ソルと私と母の会話はこんなもの。
ソルを褒める時、母は抱きしめて頭を撫で、ご褒美がある。私を褒める時、母は私の方を向いてすらくれない。
両親からの愛に差を感じつつも私達は8歳の誕生日をむかえた。誕生日のその日、王家の兄弟との婚約が私達に告げられた。
そして4人での顔合わせを兼ねたお茶会が開かれた。
「初めまして。僕はルス、こっちは弟のソーンだ。よろしくね。」
兄のルス様はふわふわの金の髪と金の瞳の垂れた目で、人懐こい笑顔を浮かべる方だった。そして弟のソーン様はさらさらの黒の髪と金の瞳の切れ長な目で、少し怖い雰囲気の方だった。
だけどそれは最初だけで、すぐに彼の優しさに気づいた。
「はじめましてルス様、ソーン様!わたしはソルです。2人ともかっこよくて王子様みたい!仲良くして下さいね!」
「ソッ、ソル。お許しをいただいてないのに勝手にお名前を呼んではダメだと…殿下とお呼びしなければ…」
「そんな距離を置くのは良くないのよ?ルナ。私たちは家族になるのだから。そんなんだからお父様とお母様にも愛してもらえないのよ?」
こてんと首を傾げて言われた言葉。ソルに悪気は無いのだろうが、言われた内容にもそれを初めて会ったお2人にも聞かれたことにも恥ずかしくなった。
「ぁっ…」
「そんなことより!テーブルでお茶しながらお話ししません?ルス様とソーン様の好きなものとか色んなお話を聞きたいです。」
そう言って2人の手を両手にとって走り始めてしまう。まだ挨拶もできていない私はどうしたらいいのか分からずに立ち尽くしてしまった。
3人の姿が見えなくなってしまうと涙がこぼれそうになり、うつむいていたら視界に靴が映った。
「大丈夫か?」
そう言ってソーン様は私の手を握ってくれた。
「ごめんな、置いて行って。一緒に行くぞ。名前を聞いてもいいか?」
「私は、ルナと申します。このような姿をお見せしてしまい申し訳ありません…。迎えに来ていただけて…本当に…嬉しいです。」
「そう言って貰えると助かるよ。ご令嬢を放置したのが母にバレたら大目玉さ。君は…さ、月の女神様みたいだな。」
「えっ?そ、そんな私なんかが!恐れ多いです。」
「本当にそう思ったんだ。戻ってきて君を遠くから見た時、日の光が銀の髪を照らして…輝いて見えたんだ。」
「…ぁの、ぇっと、その…嬉しいです。誰かに褒めてもらえたのは初めてで…本当に本当に嬉しいです。ありがとうございます第3王子殿下。」
「できれば、名前を呼んでほしい。俺も君をルナと呼んでもいいか?」
「っはい!もちろんです。………ソーン様。」
そうしてそのまま手を引いてもらい、ソル達のいる場所へ向かった。その時間は今までの人生で一番幸せだった。ソーン様とずっと一緒にいたいと心の底から思った。
…だけど私がそう願ったからなのか、その思いが叶うことはなかった。
お茶会から帰って両親とそのまま話し合いになると、ソルは婚約者にソーン様を望んだ。理由も両親が喜びそうなものだった。
「ん~とね、ソルずーっとお母様とお父様と一緒にいたいの!だから王家から出る弟のソーン様と結婚するわ!」
ソルの言葉に両親は嬉しそうに頭を撫で、そうしようかと言っている。
「わっ、私はソーン様を好きになったのです!ソーン様と婚約したいです!」
私の言葉に父はため息をついた。
「わがままを言うな。第3王子であるソーン殿下に我がプルウィア家に来ていただかねばならん。そして長女であるソルが我が家に残らねばならん。」
「でっ、でも…」
「お前は王族へと嫁げるのだ。譲ってくれたソルに感謝すべきところだろう。」
(私はそんなこと望んでいない!それにソルがこの家に残るのが当たり前だと言うのなら譲ってもらうというのもおかしいわ!)
「ですが…お願いです!今回だけいいのです!私はソーン様が…!!」
バシッ
「本当に聞き分けの無い子だ。おい、これを部屋に入れておけ。」
そして痛む頬をおさえた私は自室に戻された。
初めて手をあげられたことに呆然としながらも、涙は出なかった。だけど、今決まっているであろう婚約者の件を思うと心がじくじくと痛んだ。
何かを口に出すとこうして怒られるのなら、もう何も言わない方がいいよね。
そしてその後、私は自分の気持ちは心の中で言うだけになってしまった。
両親とソルだけで買い物に街に行った。
(どうして私だけお勉強をしなくちゃいけないの?)
他家に呼ばれたお茶会に母とソルだけが参加した。
(どうして私だけ置いていくの?)
毎年の2人の誕生日、父が買ってくるのはソルが欲しいものばかり。
(どうして私には何が欲しいか聞いてくれないの?)
ソルが転んだ時、私に押されたのだと泣き喚いた。
(どうして貴方は皆に愛さているのに更に嘘をついてまで私を陥れるの?)
使用人達はいつもソルと比べて私をあざ笑う。
(どうして?私が何かした訳ではないのに皆が私を嫌う。どうして…どうしてなの…)
暗い気持ちに押しつぶされそうになりながらも王族に嫁ぐ為の教育が王城にて始まった。
婚約者の件はまだ悲しかったがルス様を好きになろうと気持ちを整理した。それに自分の家にいるよりもいいと思ったから初めは嬉しかった。
ソルが来ないここでは頑張ればきっと愛してもらえると思ったから。
ルス様は一緒にダンスの練習をしてくれた。
「どんどん上手くなっていくね!僕ももっと頑張らなきゃな。」
教育をしてくれる先生は優しく、たくさん褒めてくれた。
「素晴らしいわ!もうそこまで覚えたのね。貴方はどんどん吸収してくれるから教え甲斐があるわ。」
ルス様達のお兄様の王太子殿下もその婚約者様もとても優しかった。
「ルスと共に私達をぜひ支えておくれ。妹殿よ。」
「そんな堅苦しく言わないの!ふふ、一緒にこの国をよくする為に頑張りましょうね!今度お茶会に招待するわね。」
皆に優しくしてもらって、私は嬉しくてたまらなかった。だから必死に努力した。何でもできる様に、皆から頼ってもらえる様に。
そしてソーン様への気持ちを忘れ、ルス様を愛せるようにたくさん知ろうとした。
だからたとえ、途中からルス様が伯爵家でソルとソーン様と遊ぶことが多くなっても我慢して教育を受け続けた。
それがずっと続いたある日、私が王城で勉強をしていた所へ3人で遊びに来た。初めてお城の中に入るソルに案内をしようとなった。
「うわぁ~、すごい!大きくて綺麗ね。ルスとソーンはここに住んでるんでしょ?いいなぁ」
「広いから昔は迷子になったりしたけどね。なぁソーン。」
「あぁ。」
「そうなの?でもこの広さならしょうがないよね。」
「…。」
私がいるのに、いないかのような会話が続いていた。この環境が辛かった。そして、恐れていた。まさかここでも私は必要とされなくなってしまうのではないかと。
「…大丈夫か?」
「…。」
「…ルナ。具合悪いのか?」
「えっ?」
自分に話しかけられたことにも驚いたが、それを言った人にも驚いた。そして名前を呼ばれたことにも。
「さっきからずっと俯いてる。」
「いえ、そんなことは…」
心配そうな顔で見つめられ、鼓動がいつもよりも早くなる。
「あー!ソーン様ったらルナとばっかり話してないで私達とおしゃべりしましょ!」
婚約者であるソルに腕を組まれて先をいってしまった彼は、私の初恋を簡単に蘇らせていった…。
そして私の恐れていた予感は少しずつ現実となっていった。
王城に務める人達は度々遊びにくるようになったソルの笑顔を褒める。そして最後に私と比べるのだ。
どうして双子なのにあんなに違うのかと。あんなに冷たい子が婚約者でルス様が可哀想だと。
そして何度かソルと話す内に先生でさえも変わっていった。
「なんでこんなこともできないのですか!」
バシッと背中から音がする。
「わた…」
「口答えをしない!」
さっきよりも強く背中を叩かれ声が漏れそうになるが唇を噛んで痛みに耐えた。
「はぁ。こんな子にルス様を支えることなんてできるのかしら…。愛想もないこんな地味な子で。はぁ。ソル様が来てくれたら良かったのに。」
「申し訳…ありません。」
「王妃様から私が直接教育を頼まれたのです。貴方には全てを完璧にこなしてもらわねば困るのですよ。いい?貴方は私の言うことをちゃんと聞いてその通りにすればいいの。貴方の意志なんていらないの。全て私に確認しなさい。」
「……はい。よろしくお願いします。」
私は何も考えなくていいなら、そうしよう。そうすれば先生も背中を叩かないし。もしかしたら私を嫌いにならないでくれるかもしれないもの。
そうして、先生の人形になった私はどんどん表情がなくなっていった。
そして周りの人達からは感情のない冷たい女、氷の人形と陰で呼ばれるようになった。だけどもうどうでもよかった。
王城に行かなくて良い日、朝から自分の部屋にいた私は喉が渇いたなと、使用人を呼べないので自分で水を取りに歩いていた。
すると何故かソルの部屋からルス様の声が聞こえた。その瞬間、心臓がうるさいほど鳴った。周りにも聞こえているのではないかと思ったが、それよりもと、空いていた隙間から部屋を見てしまった。
(どうして?なんで?ソルの婚約者はソーン様でしょ?どうしてあなたたちで抱き合っているの…?)
見たくなくて扉をしめてその場を走り去った。2人はあの後どうしたのだろう。誰かに見られたと慌てるのか、それとも気にせずにまだ抱きしめ合っているのか。
(ルス様…どうしてですか。婚約者に決まったあの日、私におっしゃったのは嘘だったのですか?弟の事が1番大切なんだと、だからそれを支えてくれと…。どうして!)
自分の部屋に飛び込んで枕で口を覆い声が漏れないようにした。
(何故?なぜ?な…んで?私はどうすればいいの。忘れればいい?いいえ、彼を裏切っている2人を許せない。自分達で選んだ道ではないの?ソルがソーン様を選んだんでしょ?ルス様はソーン様を幸せにしたくて王家から離したんでしょ?その為に2人でとおっしゃったのはなんだったの?なんで、なんでなんでなんでなんで…
…そうだ何も考えなければいいんだ。私は考えちゃいけないんだ。みんなの言うことを聞く人形でいればいいんだ。)
私が考えることを放棄してからも今までと何も変わらなかった。
ただ私の様子をみた王太子殿下と王太子妃様が休養をとるようにと家に帰された日があった。
部屋で何をすればいいのかと思いながら窓を開けるとソルの声が聞こえてきた。どうやら庭でお茶をしているみたい。
相手は見えなかったけど、知りたくなかったから部屋の中に戻ろうとすると私の名前が聞こえた。
「ルナなら大丈夫ですよ!言えば分かったって言いますもん!」
「どうだろうね?兄上の所に後継ぎが産まれさえすれば領地を貰って王宮は出ることにはなるけど。」
「ルスがもらった領地が遠いかもしれないじゃない!そしたらここに来れなくなっちゃうでしょ?そんなの嫌!寂しいもん…だからこの家にルスも住めばいいのよ!領地は誰かに任せて!ね?」
「僕もここに来れなくなってしまうのは残念だけど、王家から頂いた領地を誰かに任せるなんて無理だよ。それにソーンがいるんだ。寂しくはないだろう?」
「そんなぁ………そうだ。ルナに任せちゃえばいいのよ!それでルスはたまに行くようにして。そしたらここにお部屋も用意するわ!そしたらずっと3人一緒にいられるわ!すごい、完璧なアイディアね!それでね……」
窓から離れて唇を噛みしめる。ソルと話していたのはやっぱりルス様だった。しかも2人きりで。
それにあの会話はなんだろう。私のことをなんだと思っているんだ。ルス様と会えなくなるのが寂しい?
ソルの婚約者はソーン様ではないのか。それにルス様もルス様だ。何故ここにいる。貴方の婚約者は私なのに、何故ソルと2人でお茶をしているのか。あぁやっぱり、私は何も考えない方がいい。こんな感情知りたくない。
部屋にいると色々と考えてしまう。それが嫌で裏庭の奥にある誰も行くことがない道具小屋へ行く。
ここにくるのは週末に来る雇われの庭師だけだから1人になれる。何も考えるな、今日の事は全部忘れればいい。私は言われたことだけをこなせばいいんだ。
暗い小屋の隅で座っていると、いきなり一筋の光が入ってきた。
「っつ……」
「誰かそこにいるのか?」
(だれ…なんでこんなとこに。)
「ルナ…か?なんでこんな所にいるんだ。」
「…ソーン様。何故このような所に?ソルとルス様なら庭の方にいましたが。」
「あぁ。俺はこの本を借りに行ってたんだ。そうしたらこの小屋へ入っていく人影が見えたものだから。」
「そうですか…。」
「君は?ここに用事がある訳ではないだろう?それに今日は王宮に行かなくて良かったのか?」
「いえ…今日も行きましたが王太子殿下方に帰って休めと言われました。ここに来たのは、なんとなく…です。」
「そうか…。暗くて分かりづらかったが顔色が悪くないか?体調は大丈夫か?」
「だ、だいじょう、ぶです。」
(ソーン様は優しいな。こんな風に心配してくれるのか。)
「王宮の教師達は厳しいだろう?辛くはないか?」
「はっ、はぃ…」
(どうして私を気にかけてくれるんだろう。)
「頑張りすぎるなよ?」
「…はぃ。大丈夫です。」
(…優しくしないで…今そんな風に話しかけられたら考えちゃう…。ダメ!あの気持ちは忘れたの。初めて会った日にくれたあの言葉だけでいいの。私の1番大切な思い出…。)
「ルナ?どうしたんだ?」
「いいえ、何でもありませんわ。ソルがきっと待っています。お早くお戻りになった方が良いかと。」
「…大丈夫だよ。俺と話すと叱られるから嫌なんだと。俺は怖いしつまらないらしい。だからルスとここに来た時は基本的に俺は本を読んでいるんだ。」
「そんな…!ソーン様はお優しいです。こうして私なんかのことも気にかけて下さりますし、それにソルはソーン様と婚約したいと自分から言ったのです。だから、だから…。」
「そうなのか。だけどルスの方が優しいだろう?あいつは何でも完璧にできる。きっと君を幸せにしてくれる。」
「そぅ…ですね。お優しいと思います。ですが…」
「どうした?」
(ダメ。私は愛されていないからきっと幸せになんてなれない、なんて言っちゃいけない。嫌なところを見せてソーン様に嫌われたくない。)
「…何でもありません。気にかけていただいてありがとうございます。ソーン様の婚約者でルナはきっと幸せですわ。」
「何を耐えている?そんな顔をして。」
「そんな顔…ですか?」
「泣きそうじゃないか。」
(どうして分かるの?なんで貴方はいつも私に気づいてくれるの?血のつながった家族も婚約者でもないのに。貴方なら私を嫌わないでいてくれる?私のこと愛してくれる?…ダメよね、貴方の婚約者はソルだもの。)
「何でもありません。」
「だが…」
「…何でもないのです。」
「今の君は…まるで爆弾みたいだな。」
(ばく…だん?なんで…なんで貴方が…!!)
「どうして…どうしてそんなこと言うの!貴方だけからはそんな言葉聞きたくなかった。初めて会ったあの日、貴方が私を月の女神のようだと言ってくれた。初めて褒めてもらったの。それがどれだけ嬉しくて、それだけ私の支えになっていたのか貴方には分からないでしょう!?」
涙が溢れて止まらなくなる。それと一緒に言葉も溢れて止まらない。
「婚約者を決める日、初めて自分の願いを言ったの。なのにソルのお願いしか両親は聞いてくれなかった。私のはわがままだと言われたわ!……貴方の婚約者になりたかったのに!」
言ってはいけない。と自分の理性は止める。が、それでも今は全てを吐き出したいと思った。だから相手の顔の方向は向いても表情を見たりせずに言い続けた。
「でも婚約者は貴方とソル、ルス様と私に決まった。だから諦めた。そしてルス様を愛したいと思った。…なのに彼も私を見てはくれなかった!表面上は優しかった。だけどそれはソルにも同じ。ルス様の特別はソーン様だけだった!」
息がしづらい。でもこれだけは言わなくちゃ。
「どうやったら愛してもらえるのか、特別になれるのかずっと考えてた!そんな時に聞こえたの、ソルとルス様の会話が。3人でずっと一緒にいる為に一緒の家に住もうってなに?そこに私はいるの?私のことなんて誰も考えてくれない、見てもくれない!
…私は生きている意味があるのかしら。」
すごく小さく言った最後の言葉。だけど彼にはちゃんと届いた。
「ある。俺は君に生きていてほしい。」
その言葉を聞いて我慢できなかった。
「お願い、好きって言ってよ…。私は誰かの…。いいえ、貴方の特別になりたい…。」
もう前を向けなくて手で顔を覆う。すると私の手ごと頬に両手が添えられた。
「君が好きだよ。一度隠した気持ちだけど俺も初めて会ったあの日、君に恋したんだ。だけどルスも多分君を好きだったんだ。だから…」
「嘘です…私はソルの様に美しい金の髪も可愛らしさもない。ソルの様な周りを照らす笑顔や明るさもない、氷の人形と呼ばれる位に。ソルの様に…」
「彼女と君は違う人間だ。同じでなくていいんだ。ルナにはルナの素晴らしい所があるじゃないか。」
「私…の?」
「あぁ。ルナの髪は月の光のようで綺麗だよ。可愛いというより綺麗という言葉の方がルナに合っていると思う。笑顔だって心から楽しい時は自然に出ているよ。他の人よりも少し分かりづらいだけさ。」
「ですが…」
「ルナはとても素敵な女性だよ。努力家なところも尊敬できる。だから俺たちは…。…俺の言うことは信用できない?」
「そんなことないです!ですが私は本当にダメで…。ソルと…」
「もう自分と彼女を比べるな。たとえ誰に何を言われたとしても、俺はルナを尊敬してる。君はすごい。偉いし、美しい。最高じゃないのか?」
遠慮がちに彼に抱きしめられた。彼の腕の中におさまった瞬間心が落ち着くのを感じた。今まで生きてきてこんなにおだやかな気持ちになったのは初めてかもしれない。
「ふふ。そん…、うれしい…です。ソーン殿下。」
かすかに聞こえる鼓動が早い気がして嬉しくなる。本当の素直な気持ちを言える位に。
「できれば呼び捨てにしてもらいたいが…それは色々と解決したらだな。2人で居られるように色々と動かないと。」
「はい。…ですが大変です。誰も私の味方なんてしてくれません。ご迷惑しかおかけできないかも…。」
「大丈夫。ルスは俺達の味方になってくれるよ。それに兄上も義姉上も。2人はいつも君を心配しているんだ。母上も君のことを褒めていたし。
…王族に魅了は効かないからね。」
こんなに近くにいるのに最後の言葉だけ小さすぎて聞こえなかった。
「え?」
「何でもないよ。とりあえず、俺がまずは今日ルスに話すよ。
…これから辛いこともたくさんあるかもしれない。それでも俺といるために、一緒に頑張ってくれるかい?」
「…はい。もちろんです。」
そうして私達はしばらくの間、言葉もなくただ抱きしめ合った。
これからたくさんの嫌な言葉を聞くだろう。両親やソル、王宮に務める人々、もしかしたらルス様も?
それでも私はソーン様と一緒にいたい。ずっと感情を出すことをおさえてた私の心を解き放ってくれた彼と。
今日この日から、私は変わろう。皆に愛されなくてもいい、ただ1人愛する彼と共にいる為に、もう我慢しない。自分の心に嘘はつかない。
…もう心の爆弾なんて抱えないわ、だって彼にまたそんな例え方されるのは嫌だからね。
【side???】
2人がいる道具小屋を遠くから見つめる者がいた。
「ふぅ。やっとめでたしめでたし…ってね。」
その人物は窓際にもたれ、空を見上げていた。
「本来の物語で2組の双子は揃わなかった…。先に生まれた内の1人であった私は生まれてすぐに殺されるはずだった。だけど貴方のおかげで私の運命は変わった…。」
「だから幸せになって欲しかった。物語通りの辛くて悲しい人生を歩んでほしくなかった。少し失敗して辛い思いもさせてしまったけど、今やっと幸せになれたよね?」
暗い部屋の中、頬を流れた一筋の雫だけが光っていた。
「これで良かった。たとえこの想いを伝えることができなくても…。今までも、これからも、そして前世からも私は貴方を愛していました。どうかずっと笑っていて、私の愛しい人。」
ご閲覧ありがとうございました!
今回は練習で短編をということで、友人と以下のテーマを入れて書きました。
・双子を出す
・恋愛モノ
・1話完結
・爆弾という言葉を入れる
・「好きって言ってよ、」を入れる
上手くできていたか、不安なところです。
本当は設定として、ソーンは相手の心が形として見てしまう…だったり、ソルは無自覚だが魅了を使っている、最後の???の人物は転生者だったりします。
まとめていく上でうまくその辺りを伝えられませんでした(汗
次回作も書き上げられるよう励みたいと思います。