第1話 約束
思い付きでの新作小説です、まだ1話で始まったばかりですがよろしくお願いいたします。
あの日僕は田舎の神社の畔にいた。
「約束だよ?絶対に約束だからね!大きくなったら…」
第1話 約束
小学学校3年生の夏休み僕は母親の田舎にあるおばあちゃんの家に遊びに行っていた。
毎年夏休みになると親に連れられてこの場所に来る、でもそれは僕にとって苦痛の始まりでしかなかった。
俺の名前は「伊達 悟」今年で41歳になる名もない小説を書いているおっさんだ。普段は東京の自宅で某サイトにて小説を投稿して引きこもりをしている。これは俺が久しぶりに見た懐かしい夢から始まった物語だ。
小学校三年生の時に行ったおばあちゃんの家は村から少し離れた場所にあり、周りは田んぼだらけ。遊ぶものと言ったら山か
川、都会育ちの俺にとっては何をして遊べばいいのかすらもわからない。たまに親戚の集まりがあり、年の近い子供たち
が何人かくるも俺は大体がほかの子供たちのからかいの対象になっていた。
「おいさとる!みんなで肝試し行くけどお前も来るよね?」
俺の三つ上の女の子「飛騨 良子」がニタニタした笑顔で近づいてきた。こいつはショートカットでボーイッシュな
格好をしている、僕はこいつが嫌いだ。田舎に来て顔を合わせるたびに何かと因縁を吹っかけてくる、男のくせにナヨってる
とか、必要以上に何故か腕相撲を強要してくる。僕は自分の学校の女子にも腕相撲で負けるくらい腕相撲は弱い、それがわかっているから
腕相撲なんてしたくないのにこいつはいつもいつもいつも僕を強引に腕相撲大会と称して親戚の前で恥をかかせる。本当に嫌いだ。
「どうすんだよ?いくの?行かないの?お前、行かなかったら今日からビビりって呼ぶからな。」
「い、いくよ!」
僕だって男だ、ビビりとか言われたくない!小さなプライドで答えてしまった。俺はこの返答にとてつもなく後悔することになる。
まもなくして肝試しの時間が始まる、肝試しに行く人数は5人、最年長で高校3年生のみちお兄さん、続いて高校2年生のかずみち兄ちゃん、
中学校2年生のゆかねぇと良子、僕の計5人だ。場所はおばあちゃんちから少し離れた神社に決定した。何でも昼間のうちに人数分のペットボトルを
境内に設置済みだとかで・・・準備がいいことです。
「よし、着いたな。じゃあいいかみんな。今からこの神社の境内に行って帰ってくるだけだ。ただし、境内のどこかにペットボトルが人数分隠されているから
そのうちの一本を持って帰ってくるんだ。ペットボトルはわかりやすいところに置いてあるからな。」
みちお兄さんが簡単に説明して肝試しが始まる。順番は年上順、僕は一番最後になった。
みちお兄さん、かずみち兄ちゃん、ゆかねぇとおわり次は良子の番だ。良子は片手に小さい懐中電灯を手に持ち境内に向かって歩き出した。
その横顔が少し笑っていたような気がしたが誰もそれに気が付くことなく良子は帰ってきた。
「次は悟だな、早くいって来いよ!」
良子が俺に懐中電灯を渡すと俺は真っ暗闇の中の境内に向けて歩き出そうとしたが、暗すぎる目の前にただ一人だけという恐怖が僕の足を引き留めていた。
こわい、こんな暗いとこ一人でなんて行けるのかな?そんな風に足を止めているとゆかねぇが心配して声をかけてくれた。
「悟ちゃん、こわいよね。無理しなくてもいいんだよ?」
「う・・・」
うんと答えようとし時に良子が横から入ってきた。
「悟は根性なんてないからいけないよ。もうかえろ~!」
良子の一言でそうだなって話になったけど、俺は逆にこれで闘志が付いた。
「行く。行ってくる。」
俺は、みんなの心配をよそに暗闇に向かって歩き出した。
暗い、怖い、なんで人間はこんなことを楽しむんだろう、どうして僕がこんなとしないといけないんだろう?そんなことが頭によぎっていた、そんな僕のことなんかより外で待っているみんなが良子のいたずらでいなくなっていることなんて微塵にも思わなかった。
「悟の奴強がっていたけど大丈夫かな?」
「まぁ、行って帰ってくるだけだから大丈夫だろ?」
「う~んちょっと心配ね…」
「やべ、ちょっとトイレしたくなってきた。」
「私も。」
「俺もだよ!」
さすがに悟をこのままにしてトイレに行けないと思った三人は悟を迎えに神社にはいろうとした。
「私が悟が帰ってくるの見てるから大丈夫だよ。」
良子が三人の足を止める。この場所からトイレまでは100メートル離れていた、良子が大丈夫と言って三人をトイレに行かせると良子はうんうんとうなずく。真っ暗な森の中で女の子なのに度胸は大したもんだった。
一方俺は暗闇と戦っていた、怖くて前に進めない、後ろにも戻れない。ペットボトルがどこにあるのかもわからない。そんな状態で立ちすくんでいると前方の神社のほうから淡い光とともに僕と同じぐらいの年齢の女の子が歩いてきた。
「ねぇ?あなたどうしたの?」
「き、き、肝試しに来たんだ。」
「そうなんだ、この奥に行くの?」
「うん、境内のペットボトルを取りに行くんだ。」
「ふーん、ねぇ?一緒に行ってあげようか?」
女の子は僕向かって右手を差し伸べた、正直こんな時間にこんなところに女の子一人でいるなんてお化けじゃないか?とも思ったけれど僕だって同じようなものじゃないかと思い女の子の手を取った。
最初は怖かったけど女の子と話しているうちに恐怖心も薄れて、いろんな話をした。TVの話、流行っている遊びの話。ただ、女の子はピンときておらず僕の話を『うんうん』といいながら聞いていた。
気が付けば境内からだいぶ外れた神社の池に来ていた。夜中だというのに池の周りだけ電気が付いたように明るく女の子の姿もはっきり見えた。
とても日本人のような顔立ちではなくフランス人形のような綺麗な顔で瞳は澄んだブルー、髪の毛はセミロングで水色だった。印象的だったのは肌が驚くほど白くとても美しいと子供ながら思ったことだった。
一方、良子のほうは良子のたくらみによりトイレに行った三人が戻ってきていた。
「悟はまだ戻らないのか?いくら何でも遅くないか?」
「みちお兄ちゃん実は悟の奴戻ってきたんだけど、怖すぎて泣きながら走って帰っちゃったんだ。私止めたんだけど、私までここはなれたらみんなが心配するだろうと思ったからここに残ったの。」
「えぇ?!まじか!俺たちも帰るか。ったく悟は・・・」
「しょうがないじゃない、この中で一番小さいんだから。だいぶ遅くなったしもう帰ろうよ、悟ちゃんもかえったんだしここにいる必要ないじゃない?」
「そうだな、帰るか。」
みんな良子の嘘にまんまと引っ掛かり神社の入り口から帰っていった。その後は自分たちの家に各々が帰り夜も遅いことだったからそのまま寝たと後から聞かされた。
俺はその間も女の子と楽しく話したりして過ごしていた。
「あ、そろそろペットボトルとりに行って帰らないと。」
「もう帰っちゃうの?」
「うん、みんなも心配しているだろうし・・・」
「そっか、また会えるかな?」
「また来るよ!あ、でも僕、東京に住んでるからめったに来れないけど年に何回かはおばーちゃんちに来るからその時には必ず会いに来るよ。どこにすんですの?」
「うん、わかった。わたしはね、ここに住んでるの。」
「ここ?そうなんだ、じゃあ神社の子なんだね!僕の名前は悟、伊達 悟だよ。君は?」
「私・・・龍 しろな。」
「じゃあしろなちゃんまた来るね!ばいばい!」
「うん、ばいばい!ここで待ってるからね!約束だよ!」
「うん!約束だよ!」
こうして俺は池から境内に向かった、だが・・・
「いたぞーーーーーー!悟がいたぞーーーーー!!」
「さとるぅぅぅぅぅぅぅ!」
目が覚めた俺は母親の腕の中にいた。夜が明けて明るくなった森の神社の境内で寝てしまったようだ。
横ではめちゃくちゃ怒られている良子が泣きながら良子のお父さんに怒られているのが見えた。
「あれ?おかぁさん?どうしたの?」
「あんた昨日の夜肝試しに行くって言ってでていったきりかえってこなかったんだよ!」
「あ・・・うん」
「一緒に行った子たちに聞いたら良子ちゃんが悟は先に帰ったといったからって・・・よかったよ!無事でほんとによかった!」
「あれ?あ、そっか僕境内に行く途中で寝ちゃったんだ。」
「すみません奥さん!ウチの良子が!ほらお前も謝れバカ娘!」
「うわぁぁぁぁん!ごめんなざいぃぃぃぃ!」
良子のこんな姿を見たのは初めてだった。お僕たちはとりあえず家に帰り、東京の家に帰ることになった。
その時思ったのは『あ、しろなちゃんにバイバイしてなかった・・・』こうしてその年の帰郷は終わった。
次の年のお正月、春休み、夏休み、冬休みは里帰りしてしろなちゃんとずっと遊んだ。もちろん他のみんなとも遊んだけど良子はいつも俺に嫌がらせばかりしてきていた。ほんとになんなんだあいつは・・・でもそんなことよりも何よりもしろなちゃんと遊んだり、話したりするのが楽しくて田舎に行く目的がしろなちゃんと遊ぶこになっていた。
ある年の夏休み里帰りした俺は衝撃を受けた、もうとしたっだというおばーちゃんが亡くなったと聞いたからだ。大好きだったおばーちゃん、なんで死んだんだと泣きじゃくったのを覚えている。
『さとぉ、おめぇさんは竜神様となかがえぇんじゃなぁ。おばぁもむかぁし遊んでもらったことがあるけぇのぉ。だいじにせなあぁあかんよぉ。』
前に来た時におばーちゃんが僕に言った言葉だけど、なんのことかわからなかった。その答えも聞かずにおばーちゃんは天国に行ってしまった。俺はいつも通りとは言えないがしろなちゃんのところに来ていた。
「さとる?どうしたの?目が赤いよ?泣いてるの?」
「しろなちゃん・・・おばーちゃんが死んじゃったんだ・・・」
「うん・・・そうだね・・・」
「かなしくて、ヒック、僕悲しくって!」
泣き出した僕をしろなちゃんがそっと抱きしめてくれた、悲しかった気持ちが少し和らいだようだった。
そしてまたおばーちゃんの声が聞こえたような気がした。
『だいじにせなあぁあかんよぉ。』
うん、おばーちゃん。約束するよ・・・
「ねぇさとる?もしさとるがよかったらだけどね。私と大きくなったら結婚しよ?」
「え?結婚?!」
「うん、いや?」
「えっと・・・嫌じゃない。」
「じゃあ約束ね、指切りげんまん。」
「嘘ついたら針千本のーます、指切った!」
「「約束!」」
僕たちはいつの間にか笑顔で笑っていた。
そして俺は懐かしい夢から覚めPCの電源を入れて小説の続きを書き始めた。
「そういえばそんな約束したっけな・・・」
あれから何十年もたった、もうあの子も覚えていないだろうし、いつからか田舎にも帰ることもなくなった。両親は真面目な人だったが二人だけで旅行に行った際に交通事故にあい亡くなった。俺は両親の残してくれた遺産で生活をしている。あのこ・・・元気かな・・・
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