俺の手に入れたスキル《魔喰》は全てのモノを喰らう事ができてしまう最強スキルなのでどんな奴にも負ける気がしません!これから俺の俺Tueeeee生活が始まります!!
「あなたは死にました」
小説とかで何億回も見た、もうテンプレとも言えるぐらいのセリフを目の前の神様は俺に告げた。確かに俺は死んだ。交通事故というありきたりのものだ。
「あの、それって...」
「ええ、あなたの考えている通り、あなたにスキルを与えましょう」
俺は死んでいつの間にかこのよく分からない所に辿り着いたらしい。この流れは見た事がある。死んだ者はスキルを貰って異世界転生という奴ができる流れだ。そう考えるだけでワクワクが止まらない。少し吟味しながら、神様は「これが良いですね」とつぶやいた。
「あなたには...この《魔喰》が良いですかね」
「《魔喰》ですか?」
「ええ。これはどんなものも喰らい尽くし、その能力を得るというものです!」
「おお!」
俺はその説明に心躍った。結構当たりな奴なんかないか?これを使えば俺も俺Tueeeeeとかいうやつができる!!俺も女の子たちにモテモテで良い気分になれるんだろうなあ...ぐへへへへ。おっといけない、良からぬことを考えてしまった。はしたない。
「では、新たな世界に....」
そう言うと神様は両腕に上をあげる。すると俺の体は浮いて上の方へと吹っ飛ばされてしまった。ジェットコースターにでも乗っているようだ。俺はその流れに身を任せ、目を閉じた。
「ここが、異世界?」
気がつくと見知らぬ場所にいた。原っぱのようであたり一面に草が生い茂っている。ていうか、飛ばされたのは良いのだが何をすれば良いんだ??そういう事は全く聞かされていないぞ。
「お、スライム!」
目の前の青いゼリーの生物を見てそうつぶやいたRPGでもこいつが最初に出てくる。さて、早速スキルの試し打ちと行こうかなっと!スライムは素手の俺でも簡単に倒せてしまうほど弱かった。早速俺は、倒したスライムを持ってかぶりついた。
なんかサイダーのような味だ。美味しいと言えば美味しい...のか?スライムを食べ終わると今度は花の魔物を発見して、勝負を挑んだ。
「ナンダこいつ!!花粉をばら撒いてくるぞ!!」
その花の花粉は体につくと体が動かなくなってしまう。痺れる効果があるのか。俺が痺れている隙に花は攻撃を仕掛けてくる。俺も負けじと花にぎこちなく攻撃を与えてなんとか倒せた。それと同時にレベルアップの音も聴こえる。やっぱりゲームのような世界観なんだな...。そして倒した花にもかぶりつく。
「まっず...」
花だし仕方ないとは思っていたがこんな美味しくないとは...食べたことのない不味さだ。とりあえず俺は花を全て喰らい尽くすと手を振ってみた。するとそこからあの花が使った花粉が撒き散らされたではないか。それを見て俺はつい興奮してしまう。
「おお!すごい!」
俺は興奮しながら何回もその花粉を出す。これって複数手に入れたら切り替えとかってできるのかな?などと思いながら次の獲物を探すことにした。
「いないな...」
それから少し探したが、全然魔物の「ま」の字すらなかった。少し歩いたからはとてもお腹が減った。早く何か食べないと...そんなことを考えっていると向こう側に少女が牛の魔物に襲われてるのが見えた。やった!ステーキだ!!!俺はそう思いながらその牛の魔物の方へと突っ込んでいった。牛の魔物はこちらに気づいて遅いかかってくる。自分の2倍ほどある、白と黒の模様の牛で斧まで持っている。しかもそれが2匹も。勝てるかどうかなどはもうこの際関係なかった。空腹を満たすことだけしか頭になかった。
「うおおおおおおおお」
「グオオオオオオオ」
まずは先程の花粉で動きを止め、パンチを腹に加えた。何だかこのパンチがすごく効いているようで、1匹が倒れる。もう1匹も同じように花粉を撒き散らしてパンチを加えた。どちらも一撃を加えたら倒れて動かなくなってしまった。
俺は牛の魔物を喰らい始める。少女はドン引きしていたが、そんなもの関係なくひたすら喰らう。そして食べ終わると満腹感が得られた。
「ふー、ってステータスみたいなの開けたのか」
そこには追加効果という欄があり『空腹時に攻撃力が10倍になる』と言うものだった。なんだこれは、強すぎるじゃないか!だからあの牛もワンパンだったのか。そして下の方のスキルの欄には花粉と新たに真髄斬りと言うのが追加されていた。先程の牛のものだろう。
「えっと...」
「ああ、申し遅れました。俺はレーベルって言います」
「ああ、助けて下さりありがとうございます」
その少女は丁寧な口調でお礼を告げる。レーベルというのは俺が昔使ってたゲームの名前だ。本名は恥ずかしいのでこれを使う事にする。
少女は一国のお姫様で外に山菜積みをしていたらしい。これはハーレムの道の第一歩じゃないか??俺はウキウキしながらそのお姫様の警護をする事になった。
お城まではそこまでの距離はなく。途中で現れた魔物は俺が全て倒して全て平らげた。俺が魔物を食べるところはお姫様には刺激が強かったようでやはり少し引いていた。
引いているお姫様をよそに、色々な魔物のおかげで色々なものを手に入れる事ができた。そしてレベルもどんどん上がっていく。
「何!?」
お城に着くと何だか様子が変だった。魔物の襲撃を受けているようで、外壁には羽のついた魔物がうじゃうじゃいる。ちょうど腹も減ってきたし、丁度いいな。
俺は城に突っ込むと中にいた魔物を全て倒して喰らい尽くした。外に羽の奴も全て倒してこれも喰らった。色々な技がある俺の相手にもならない雑魚ばかりだった。レベルもさらに上がっていく。中には「トイレ星人」なる人間に擬態しているものもいたが、関係なく食らった。
「うう...足りないな...」
俺がそんな事を考えていると、城の者たちの歓声が湧いた。一人で全滅させてしまう者に祝福をと言っている。まあ俺的にはいっぱい食べれたしこっちが感謝したいぐらいだ。まあまだまだ足りないが。
「どこのどなたかは存じませんがありがとうございます」
「いえいえ」
「お父様!この方は私を助けて下さったのですよ!!」
「そうか!!それは感謝を2倍にしないといけませぬな!」
お父様...という事は国王的なアレか。これは無礼の無いようにしないとな。
「それが良いのでお腹が...」
「ああ、じゃあご馳走を用意しますぞ!」
俺はまあ耐える事はできたので、料理まで待つ事にした。だが待っている間も何だか腹がどんどん減ってくる。何だ?こんな腹が減るものなのか?魔物を食べたからか??まあ料理を食べれば収まるだろう。数時間ほどで完成し。誘導された場所にたくさんの料理が並んでいる。俺は椅子に座ってまずは骨のついた肉を食べた。うん、美味しい!!色々と食べ進めていく。そのスピードは衰える事なくどんどん料理が減っていく。自分で言うのもなんだが、まるで掃除機に吸われているようだ。
「終わった...が足りない」
全て皿の上にあった料理は食べ終わったが全然足りなかった。それどころか空腹とまあ感じるほどだ。くそ...どうなってるんだ?なんでも満腹にならない?最初の時はだいぶ満腹までいったというのに...。
「どうでしたかな?」
「ああ、美味しかったです。
目の前の国王が美味しそうな肉に見えてきた...ああ、美味しそう。美味しそう...食べたい!だが俺は我に帰る。それはダメだと自我と戦わせる。こういうのはアレだ。なんて言ったっけ?カニがサンバリズムとかなんとかってやつだったな。違う気がするけど。
「どうしましたかな?」
「あ...あ...」
俺はおかしくなりそうな体をなんとか食い止めようとした。何度も何度も何度も...だが空腹で頭がおかしくなりそうだった。もう我慢ができないほどに...。
「うぐじゅはああああああああ!!!」
俺の理性はついに壊れた。その前に一瞬だけ先程の正しい言葉を思い出した。カニバリズムだ。
「何をする!!うぎゃああああああ」
まずは国王を喰らう。鋭い牙で噛み付いて爪で心臓を一突き。これもどちらも魔物の能力だ。そして喰らう。人間は鶏肉の味がするらしいが、あんまりよくわからなかった。空腹でそれどころでは無いからだ。そして俺はやってきた兵士を全て皆殺しにして腹の中に収めた。空腹なので攻撃力10倍で太刀打ちすらできずに無惨に喰われていく兵士たち。美しい城は無惨な姿になっていく。
「足りナイ!足リない!!
これジゃア足りなイ!もっトもット肉を!!肉ヲ!!!クレ!!!!!」
俺はその城の兵士を全て喰らい尽くした。花粉で痺れさせ腕や頭を喰らう。その姿を見ていたお姫様は怯えたように俺を見ていた。だがもうハーレムだとかそういうのはどうでもよかった。ただただ腹を満たしたいだけだったにだから。お姫様を喰らっても足りないだろう。だからこの世界の奴らを全然美味しくいただけやろう。
お姫様を襲おうとしたその瞬間、頭に何かが打ち込まれた。そしてその瞬間、俺の生命活動は終わった。
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神様は人間を《魔喰》を使いたくさん食らった異世界人を見た。頭を撃ち抜かれ血を流している。おそらくもう立ち上がる事はないだろう。それにしてもあのスキルでこうなってしまうなんて...とその神様はため息をついた。
「空腹度が3倍になるデメリット言うの忘れてた...けどそれを教えても結局はこうなっていましたかね。それにしてもこの者に《魔喰》を与えた私も責任があります。このスキルは、消去しておかないといけませんね...。
そう言い、神様は《魔喰》と書かれたスキルの球を破壊した。