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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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067 小競り合い

 寮長会議専用の会議室ブリーフィングルームに、順々に入室していく。品のある調度品が申し訳程度に置かれた会議室はわりかし無機質で、アカデミーの中ではかなりの実権を持っている監督生プリーフェクトたちの集いに使われている部屋にしては少々味気ない。騎士見習いであればこそ、華美な装飾は控えるべきだということが表れた内装なのかもしれない――今期の監督生たちには確かに華美な装飾を好む者はいないが。かつてのマリアはどうだったかは知らないけれども。


 部屋中央に置かれた円卓の、あらかじめ決まった席に着いていく。私はマリアの席のすぐ後ろに控え、立った。監督生以外の者、つまり寮弟ファグなどの同行者は寮長会議では着席しないというのがしきたりである。


「あ。マリアさまの同行者は、ロディだったのね」


 土の監督生プリーフェクトの席に着いたフェルミナが声を掛けてくる。私は目元を緩めると頷いた。


「ああ、ほぼ無理やり連れてこられたんだけどな」

「もう、そんなこと言わないの。五年生で、かつマリアさまが信頼を寄せているのがロディってことでしょ? 少なくとも()()()の中では、ロディと一番仲がいいのはマリアさまと聞いているし……」

「諸々素直に肯定したくない表現が端々に現れている気がいたしますけれど、概ねその通りですわ」


 なかなかいい性格していますわねあなたも、とマリアがフェルミナを見て肩をすくめる。フェルミナは何も言わず、変わらずやわらかで甘い翡翠色をした目をゆったりと細めるばかりだ。どうしたのだろう。


「……何かマリアがお前に不都合なことを言ったか? フェルミナ。それなら――」

「何故わたくしに非があることが前提なんですの」私が言うと、マリアが心外だとばかりにきつく眉を吊り上げる。「納得いきませんわ」

「違うのか」

「違いますわよ本当に失敬な方ですわね」

「……確かに、年々あからさまになっていってるな」今度は、寮弟の用意した珈琲を飲みながら、ジークレインが小さく文句を言った。「フェルミナへの依怙贔屓が」

「……そこに何か問題でも?」


 フェルミナが私の中で最優先事項であるのは不変の真理だ。騎士見習い――実際は近衛騎士であるが――としての最優先事項、つまり主君は、アルフィリア王国とその運営を担う王族だが、それはそれである。

 

 問題しかないだろうが、と言って眉間を揉むジークレインはまだ会議が始まってもいないにも関わらず、どうやら大変疲れている様子だった。何がジークレインをおかしくさせているのかは知らないが、きっと次期聖騎士の筆頭候補として気疲れがあるのだろう。……とはいえ、この世界ではまだイグニス伯爵が健在なので、切羽詰まる必要もないはずなのに何故、という疑問は生じるが――。


 などと、とりとめもないことを考えていると、「ふふ、」とフェルミナが小さく笑い声を零した。マリアとジークレイン、胡乱な二対の目が彼女に向けられるが、フェルミナはさして気にした様子もなく私に視線を寄越して、言う。


「何もないから、大丈夫よ、ロディ。『不都合なこと』なんてないわ。それに、マリアさまはおかしなことをおっしゃったりする方じゃないし」

「……ふうん、そうか。フェルミナがいいならいいけど」

「何一つよくありませんわよ」

「そういうところだぞクローディア」

「はあ……?」


 何がどういうところなんだ。なんの話だ。

 ……というか、こう、すぐ結託するところを見ると、マリアとジークレインは仲がいいのか悪いのか、いまいちよくわからなくなってくる。お前たちは一体どういう関係なんだ。


「……なんでもいいが、君たち、そんなにズブズブで息苦しくないのか?」


 しばらく静観していた風の監督生プリーフェクト――ベンジャミンが呆れたように口を挟んできた。なんのことだと私が問う前に、「同行者たちが戸惑うからそういう争いはよそでやってくれ」とベンジャミンはかぶりを振る。言っている意味がわからない。



「――風の監督生の言う通り、アカデミー幹部陣がおかしな争い方をするのはやめなさい」



「あ……学園長先生」


 出し抜けに響いた、落ち着いた声。

 その方向を窺い見れば、そこには杖を手にしたロマンスグレーの男、学園長アレイスター・スケアクロウが立っていた。


「遅れて申し訳ない。監督生・同行者も含め全員、揃っているようですね。何よりです」

「はい、学園長先生」


 学園長は焦げ茶のローブの裾を翻しながら、私たちのいる円卓まで歩いてくると、余裕のある動作で空いた席に腰掛けた。それを見て、それまで言い争っていた寮長たちはぴたりと口論をやめ、寮弟ファグたちが用意した書類に目を落とした。さすがの切り替えだ。

 私もマリアのために必要書類を用意してやりながら、がらりと空気の変わった会議室に少し感心する。こういうところはさすがアカデミーの幹部陣といったところだろう。


「――さて。空気も温まっているところで、話し合いを始めていただくとしましょうか。今回の議長は」

「私です」


立ち上がったフェルミナが、穏やか笑顔を湛え、立ち上がる。



「では、学園長先生もいらしたことですし、寮長会議を始めましょう。

議題は皆さんご存知の通り――五年生の実地研修インターンシップについてです」


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― 新着の感想 ―
[一言] すごくおもしろいです!
[一言] クローディアは、結構スタイルがいいんですか? お胸が大きいとか
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