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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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113 独占宣言


 これには驚かされた。

 ついさっきまで、まさに私たちは空を飛んでいたのだ。

 

(炎を手から出すことでそれを推進力としたのか!)


 鉛直方向とは逆に飛び上がっただけといえばそうかもしれないが、それでも私は静かに魂消た。

 今、人類は空を飛ぶ方法を手にしていない。光魔法、闇魔法、風魔法の一部の強力な使い手が類似の魔法を使えるだけで、通常の魔法を飛行に転用するまでには至っていない。


(いずれ、魔法で空を飛ぶ時代が来るかもしれないな)


 ジークレインを見ているとそう思うが、――まあ今はやつの天才ぶりをしみじみと感じている暇はない。


「随分と時間を短縮できたな。ありがたい……さすがだよ」

「……、ああ」

「どいていろ。ここは私の方が適任だ」


 わかった、とジークレインが頷いて下がり、私が剣を構えて前に出る。


 ――時間がないから、チマチマと窓を開けている暇はない。

 だが、思い切り窓を割ってしまうと音が立つし、飛び散った破片で第一王妃を怪我させてしまったら、もはや諸々を放り出してここまで来た意味がなくなる。


 ゆえに、できるだけ静かに窓を破壊する。

 ――私の得意分野だ。



「蒼月流抜刀術ウの型弍番――《花青(カセイ)》」



 音もなく閃いた剣により、分厚い窓ガラスが細切れになり、さらさらと床に降り積もる。

 風がない時を狙って技を放ったので、細かくなったガラスが無駄に舞うことはない。

 得物が刀であれば砂粒レベルに分解できたが、今はそうする必要もない。


「……相変わらず凄まじいな。剣筋がほとんど見えなかった」

「感心はあとだ。行くぞ」

「わかっている」


 ――突入する。


 積み重なったガラスの破片を跨いで、王妃の寝室に踏み入る。常ならば極刑ものの振る舞いだが、緊急事態だ。許される。

 だが、不法侵入が許されるだけでは足りない。持ち場を離れてきた以上、敵を退け、王妃を無傷で守ることこそが最低条件。


「敵が着実に近づいてきている。クローディア、先に王妃を起こして避難を促せ」

「わかって――」


 いる。

 そう言う前に、カーテンに包まれた大きな寝台から、人が降りてくる気配があった。


「……あなたたち、どなた?」

「リリアナ王妃……」


 間もなくカーテンが開き、ネグリジェ姿の女が姿を現す。

 

 ――起きていたのか。

 こんな夜中に。

 

一瞬影武者を疑ったが、第一王子(ユリウス)と同じ黄金の瞳に、甘い顔立ちだ。第一王妃本人に間違いない。

 

驚いた。

もしかしたら、危険を察知して、既に起き出していたのかもしれない。王族の中にはそういう勘が優れているものがいる。


「王妃殿下。不躾をどうぞお許しください」


 先に反応したのはジークレインだった。

 すぐさまその場に片膝をつき、王族に対する礼を示す。こういうのはジークレインの方が遥かに得意だ。


「私どもはロイヤルナイツアカデミーの研修生。王妃殿下をお守りするために急遽まいりました」

「……なんですって?」

「手短に申し上げます。この花陽宮は――王妃殿下は、巧妙な暴動(テロ)計画を利用して騎士団の裏をかき、出し抜いたマフィアによって襲撃を受け――」


 刹那。

 凄まじい勢いで、寝室の扉が吹き飛ばされる音がした。


「きゃああっっ!?」

「王妃!」


 爆発、ではない。純粋に物体を魔法力で吹き飛ばしたような音だった。

 というより――闇魔法を使い、闇を()()()ぶつけたらああいう音になるだろう。

 魔法を使い慣れていない者でも、暗い中では闇属性の魔法力で攻撃をすることは可能だ。


(来たか……!)


 今まで、襲撃者たち――恐らく南部支部の上層部――は目立たないように行動していた。

 だが、なりふり構わない(リスク度外視)で行動課程を早めることを選んだのだ。対抗勢力(私たち)の存在に気がついたから。


(第二王子派の傀儡め)

 

 マフィアとしても落伍者のならず者どものくせに、判断が早い。

 王妃の寝室が広くて助かった。扉の破壊から突入、寝台のある場への侵入までに僅かに時間ができる。


「何が起きたと言うのです!」

「王妃、どうか落ち着いて」

 

 ジークレインが混乱に陥っている第一王妃(リリアナ)をなだめすかしている。

 

 ――だが襲撃者が来ているということを証明している手間を省けたのは僥倖だった。敵が正面から来た以上、話は単純になった。

 王妃を安全な場所に逃がし、敵を制圧できればいい。制圧が難しければ逃げる。ならず者の中でも、例の闇魔法発現危険魔法薬(ドラッグ)を使って闇魔法に目覚めた精鋭を集めているはずだからだ。


とはいえ。


「ジークレイン・イグニス!」あえて家名を加えて呼び、叫ぶ。「王妃を安全な場所へお連れしろ。私はここで時間を稼ぐ」


暗い中でもジークレインが弾かれたように顔を上げたのがわかった。

 

()()()()()()! 一人でどうにかするというのか。またお前はそうやって――」

「早合点するな、私は全部一人でどうにかするとは言ってない。王妃をお送りしたら戻ってこい」


 

 クロード・リヴィエールは確かにクズだったが、闇魔法の使い手としてはアルフィリアで最も優れていた。()にはその自負がある。


 子供そのものだった五年前ではないのだ。


 数だけ揃えた馬鹿どもに遅れを取るつもりは毛頭ない。

 

 

「それまで私が敵を独り占めだ」

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