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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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110 お前に似たんだ


(有り得る……)


 第一王妃はまさしく第一王子派閥の根幹だ。出身も公爵家であるだけに多くの支持者を抱え、その人柄からも王宮内に慕う者が多くいると聞く。

 第一王子(ユリウス)は騎士団の団長と近衛騎士隊の隊長も兼ねており、貴族の支持もあるにはあるが、それはあくまで騎士系貴族のものだったはずである。

 彼本人は普段から騎士の任務に打ち込んでいるため、王政にはほぼ参加していない。ロイヤルシヴィルアカデミーに通い、少なからず王政に参加している第二王子に比べれば、王国の政治を司る文官たちにとっては、ユリウスは関わりが薄い王子で、持ち上げにくい神輿だ。

 ――第一王妃がいなければ。


 文官系騎士系どちらにも顔が利き、その信奉者の多さから魔性の女とすらも呼ばれる女傑リリアナ・ル・アルフィリア。

 彼女が排除されれば、ユリウスの王太子の地位すら有力な文官系貴族たちにひっくり返されかねない。


(荒唐無稽だ。荒唐無稽だが……)



「おい。どうした、クローディア」

「……ジークレイン」

「急に黙り込んで……ここで足踏みしている時間はないだろう。とっとと――」

「お前、私の主張を信じる気はあるか?」


 は、とジークレインが息を飲む。

 

「私はこれから荒唐無稽なことを言おうとしている。そしてお前の感情いかんにかかわらず勘に従って行動するつもりでいる。どうする? 私に付き合わずここで引き返すのも手だぞ」

「……」


 私とジークレインは敵に気にされていない。

 そのため『捕縛(生け捕り)』をするために苦戦させられている近衛騎士たち(せんぱいがた)を横目に、もうほとんど廃教会出口まで辿り着いていた。

 やめておくならば今だ。


「いい加減くどいぞ、クローディア。俺は俺の考えのために行くと決めたんだ。このままこの廃教会で無闇にやり合うのが合理的とはとても思えないからな」

「……」

「それにお前は割といつも荒唐無稽だし猪突猛進だろう。同道する以上、勝手に突っ走られるのは困る。さっさと考えは共有してもらうぞ」

「――、わかった。移動しながら話す」


 鷹揚に頷いたジークレインが走り出す。

 廃教会に突入する前の道を逆戻りし、いまだ気絶している門番を跨いで加速する。

 

 馬車はないが魔法力で全身をまとって全力で走れば、王都までそこまで時間はかかるまい。何せ元革命軍頭目(わたし)天才様(ジークレイン)だ。


「それでどこを目指す」

「王都だ。花陽宮に行く。……もしも何もなかったら最悪アカデミー除名だがな」

「そうか? アカデミー側の面子もある。うまく言いくるめられれば、学生の無茶無謀で済ませるかもしれないぞ」

「……」


 私は走りながら横のジークレインを見た。

 史上稀に見る火魔法の天才は、どこか晴れ晴れとした、楽しげな表情をしている。

 

 まあ確かにジークレインはロイヤルナイツアカデミーきっての天才だ。看板と言ってもいいかもしれない。

 そんなのが除名処分となれば、アカデミーの面目丸潰れ。それを避けるために何かしらの()()があるかもしれないが――。



「――嫌な奴になったな、お前」

「お前に似たんだ、クローディア」


 


 *




 花陽宮。


 王都中央にある王城から僅かに離れた場所に位置する離宮であり、主に第一王妃が住まいとする。王は基本的に王城の内廷を生活圏とし、外交や有事の際以外はそこから出ないのだが、リリアナ王妃の住まう花陽宮には足繁く通っているという。

 白亜の宮殿は、まるで創成の時代から存在すると言われる女神の住まいとも称される美しさだが、神話よりも現実を重視する第一王妃の住居らしく女神像はないらしい。


 王都外れで捕まえた貸馬車は、明らかに普通の馬車の限界速度を超えている。尋常じゃないほどに揺れるキャビンの中で、私とジークレインは馬車がその花陽宮に辿り着くのを待っていた。


「酷い揺れだな……」

「我慢しろ。道なき道を疾走し、無茶な運転をしても客を速く送り届けるのがこの貸馬車の御者の仕事だ。

 蛇の道は蛇。私たちが魔法を使って道を爆走するよりも目立たなくていい」


 捕まえた貸馬車はいわゆる裏稼業(その道のプロ)の運び屋だった。中にいる客が死なない程度にとんでもない運転をするが、送り先へ届けてくれる。


「まあ、それはそうだな。これ以上無茶に走ると足が燃える」


 ジークレインは自らの足を見下ろした。

 走っている途中で編み出した――その時点でこいつの才能の意味がわからない――足に炎をまとい、その勢いで走る速度を上げる魔法により、踝辺りの布は黒く焦げついてしまっている。

 

 時間短縮はできたので有難いが、ジークレインもなかなか無茶をするものである。

  

「そろそろつきますぜお客さん! まだ夜明けの気配もねえ、夜代金は高くつきますぜ」

「わかってる。さっさと到着させろ」


 御者が馬車を走らせながらキャビンの中を覗き込んできたので、フードを深く被って答える。


「詮索は無用だ。私たちのことをべらべら他に喋れば――」

「わかってますぜ。我々の仕事じゃ信用第一。運んだ荷物のことには深く関わりませんし言いません」

「それでいい」


 馬車が止まる。

 ジークレインとともにはっと顔を上げた。いつの間にやら、花陽宮の敷地にごく近い街道まで来ていた。

 月の位置を確認して口の端を上げた。――上出来だ。


「着きました」

「助かる。これが報酬だ」


 いざという時のために持ってきていた、いつだったか『ティア』が身につけていた装飾品を御者に投げ渡し、二人で馬車を飛び降りる。

 さっさと行かねば。手遅れになる前に。

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