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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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108 動かねば


 言いながら、ジークレインに力を受け渡すようにイメージして、闇魔法のエネルギーを行き渡らせる。


 私の闇の魔法力を知覚したのか、ジークレインの肩が僅かに跳ねる。


「わ……かった。わかったからとりあえず手を離せ」

「は? 力を同調すると言っただろう。触れないで同調なんてできるか」

「じゃあせめて肩に手を置けっ。嫁入り前の女が異性の、単なる学友の手を握るなんて常識に悖るだろ!」

「はあー?」


 何を言ってるんだこいつは。 

 そういう堅苦しいところがある男だということは知ってるが、アビスでの潜入任務でもそれなりに密着しただろうが。

 今更なんだと言うんだ。あほくさい。

 

「せせこましい奴だな。今そんなことを言ってる場合か、時と場所を考えろ」

「……もうやってる」


 やってるのか。

 じゃあなんで文句を言うんだ意味がわからん。


「……お前はそういうところに隙がある。俺が言わないと、誰も言わないだろうがこんなこと。それともフェルミナが言わないと聞かないのか」

「何を言って……」

「お前、自分が男だと思って過ごしてる時がないか。()()()()じゃなくて、()()()()()だ」


 ジークレインが気配を探るように目を閉じる。

 薄暗い灯火の下で、長い金の睫毛が陶器のような色白の頬に細い影を落とした。


 それはある意味私の核心に触れるような問いだったが――質問の意味がわからず、困惑した。


 今の私は女だ。そんなことはわかっている。

 だから女の武器(美貌)を利用する潜入までしたんだろうが――。


「男だ女だと言うのは嫌いだが、お前は性別に()()()なんじゃなくて()()()なんだと、最近気づいた。……それは危ういだろ。自己に対する認識くらい正したらどうなんだ」

「なんだと……?」


 私が何かを言おうとした時、意識してかしないでか、ジークレインがそれを遮るようなタイミングで声を発した。「――いないな」と。

 

「闇魔法の気配を掴むのはそう難しくなかったが、少なくともこの廃教会にお前以外の闇魔法の使い手はいない。……目覚める片鱗を見せてる奴はいるようだが、南部支部長はさすがにそうじゃないだろう」 

「……、そうか」


 さすが、早いな。

 ここまで早く闇魔法の気配を辿れるとは――しかも、片鱗を見せているという人間まで感知するか。

 

 のジークレインに、そんな感知能力はなかったはずだ。ないわけではないが、特に鍛えてはいなかったはず。


(こいつがこのまま成長すれば、()()()の遠距離攻撃も、あるいは……)


「それでどうする? クローディア。とっとと撤退すべきだと伝えるか」

「……そうだな……」

「ただ、きな臭いのは確かだ。念には念をということなのかもしれないが、……いささか膠着状態が続きすぎじゃないか」


 ホールでの戦いは一進一退だ。

 守りと逃げに徹する敵。できれば殺さず捕縛したい騎士たち。双方の思惑が嫌な感じに噛み合ってしまい、誰も上手く立ち回れないでいるように見える――それはユルゲンもだ。


「……お前の疑心もわかる。が、とりあえず知らせよう」

「だが……」

「聞いてから判断すればいい。単純に念を入れただけの可能性もあるしな。――隊長殿!」


 バルコニーに駆け寄り、下で戦闘をしている騎士たち全員に届くように叫ぶ。


「廃教会内に支部長はおりません! 既に逃げたと思われます!」

「リヴィエールか。根拠は!」


 ユルゲンはこちらに視線を向けない。目の前にいる敵を蹴り倒しながら声を張り上げている。

 私は続けて叫んだ。


  

「二階もあらかた捜索しましたが特にそれらしき人物はいません! イグニスが気配を探りましたが廃教会内にそれらしきものはないと!」



 ――緊張が走る。

 ユルゲンにでもない。騎士たちにでもない。その場で留まって戦闘を行っているマフィア構成員たちの間にだ。

 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ように。


(どうやら隠すのは下手のようだな……!)


 おそらく間違いない。

 マフィア(こいつら)は時間稼ぎのため、つまり近衛騎士隊をここに引きつけるための人員だ。――マフィアの別働隊がいる。そしてあらかじめ分かれていたその別働隊を、南部支部長が指揮しているのだろう。


「すぐに撤退をすべきです!」

「――リヴィエール。お前の進言は貴重なものだが、一研修生にすぎんお前に隊の方向を決定する権限はない」

「!」

「イグニスの感知がどれほどのものかもわからない以上、迂闊には動けん。隈なく探せ、そしてこの場の者らの捕縛を優先しろ!」


(――だめか)


 目を細める。

 ジークレインが納得いかなそうに「なんで……」と呟く。

 

 こちらの声が聞こえていたらしい近衛騎士隊員たちも、戸惑ったように顔を見合せてみたりはしていたが、そこは上の命令は絶対と言われてきた組織の人間。

 ……いくら自由度の高い近衛騎士たちといっても、ここまではっきりとここでの戦闘を続けろ、と言われたら独断専行は無理だろうな。


 正直近衛騎士たちがユルゲンに異を唱えないのは、彼を尊敬し命令に忠実だからというものもあるが――ジークレイン(たかが学生)が出しゃばるなという気持ちが大きいからだろう。

 学生の一意見をそう重んじるべきではないというのは正しい。――だが、不審は不審だ。

 

 目的の頭がいない可能性が高いんだ。

 優先順位はここの制圧じゃなくてその目的の行方を探すことだろうが。

 

(これだから騎士団は好かない)


 仕方がない。

 動くしかないか――独断でも。

 

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