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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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106 待ち伏せ


 一斉に、飛び出す。

 

 驚くべきはその場の隊員全員が、ほとんど音もなく森を抜けていることだ。他四隊に比べれば隠密性が求められるのが近衛騎士隊員とはいえ、草木が生い茂る森の中をほぼ無音で駆けている。【蒼】のような諜報部隊ほどではないとはいえ、見事だ。


(だがさすがに、近づけば見張りも気づく)


 何せ少なくない人数だ。

 騒ぎ立てられる前に見張りを倒さなければならない。


 先駆け部隊に続くように走り出しながら――なら、と私は近くの木に飛び移った。

 近くを走っていたジークレインが目を見開く気配がしたが、かまわず、そのまま枝から枝に飛び移ることで、前へ前へと進んでいき、ユルゲン含む先駆けの隊員たちに追いついた。


 さらに、彼らの先頭へと躍り出る。


「なっ、お前……!?」


 突然前に出てきた研修生わたしの姿に驚いたのか、ユルゲンの副官が声を上げた。果たしてその驚きは、学生ごときの先行へのものか、あるいは学生ごときの気配に気付かなかったからか。


 ――まあ、どうでもいいことだな。


 勝手に前に出てくるな、と後から言われるだろうがまあそれはいい。

 なめられたまま後ろにいるよりも、とっとと実力を見せて前に出させてもらわなければならない。でなければいつまで経っても騎士団への忠誠を疑われたままだ。非常にやりにくい。


 それに。



(闇に乗じて相手を討つのに、私ほどの適任はいない!)



 蒼月流抜刀術ウの型参番――『草薙クサナギ


 威力を弱めた飛ぶ斬撃で、数人いた門番を一気に屠る。

 夜の闇の中で、叫ぶ間も与えられることなく人影たちがどうと倒れ、裏門の警備に穴が開く。


「なっ、一撃……」

「斬撃が剣から、いや、衝撃波か? 何をした? 魔法か?」


 魔法ではないことはわかっているだろうに、困惑した声が二、三。

 しかしそこは近衛騎士隊、目標であった門番が倒されたことを知ると、すぐに切り替える。ユルゲンの、無声音ながらもなぜか響く「そのまま走れ!」の命令通り、静かに、しかし荒々しく、近衛騎士隊のメンバーはアジトの中へと雪崩れ込んだ。


 ――しかし。



「眠っているんじゃ、なかったのか……!?」



 裏口から侵入し、最低限の警備の中、静まり返った廃教会を突っ切って、南部支部長がいる部屋を襲撃する予定――だったはずだ。

 だが、いざ裏口から中に雪崩れ込んでみて、私たちは揃って蒼白になった。


 中には、起きてこちらを睨む警備の面々や、マフィアの構成員と見られる者が多くいた。

 会談があったときの、万全な警備のままで――しかしきっちり灯火は絞っている。近衛騎士隊の奇襲があるとわかっていて、待ち伏せていたとしか思えない対応だった。


「侵入者だ! かかれ!」

「一人残らず始末しろ!」

「くそっ……総員! 迎撃!」


 奇襲が完全に予測されていた。

 剣で斬りかかってくる者をいなしながら、私は夜目がきいてきたので、素早く辺りを確認した。クロスボウを打持っている者や――銃を所持している者も中にはいるようだ。


「こうなっては仕方ない! 誰か灯りを――ぐあっ」

「やめろ! 火魔法使いは無闇に火をつけるな! 場所を知られれば撃たれるぞ!」


アルフィリアでは、あまり銃は武器として一般的ではない。

 撃たれれば重傷を負うことくらいはわかっているだろうが、戦い慣れていないはず。

――銃は、騎士と相性が悪い。何せ中距離以上からの攻撃ができて、かつ、土魔法以外では防ぐのが難しい攻撃だ。風や水、火では、飛んでくる銃弾をとっさに防ぐには足りないことが多い。


(騎士対策がされている……!)


 ――間違いない。

 作戦が漏れている。

 

いや、だが、どこから? 

近衛騎士隊の作戦は基本、騎士団の中でもっとも任務の機密性が高い。だというのに、どうやって漏れた? 腕のいい情報屋がいた? 


(あるいは――)



 裏切り者がいるのか?

 近衛騎士隊の中に。



「研修生二人とB班は廃教会内を捜索し、南部支部長を見つけ出して引きずり出せ!」

「了解!」


 ユルゲンが飛ばす指示に先輩近衛騎士隊員たちがすぐさま応えるが、探したところで大した意味はないだろう。作戦が漏れていたのなら、南部支部長はとっととどこかに逃げているはずだ。


 ――いや、待てよ。

 おかしい。逃げ出せるなら、わざわざここで下っ端どもが私たちを待ち伏せる必要すらもないのでは?

 近衛騎士隊は精鋭ぞろい。いくら数を揃えて待ち構え、準備を万端にしておいたとしても、下っ端や警備たちでは近衛騎士隊の一隊を破れないであろうことは明らかだろうに。


 なぜ?

 待ち伏せ自体に意味があるのか?


 それとも、ただ単に逃げる時間がなかった? 

南部支部長をはじめとする、幹部たちを逃がすため、引き付ける役目を負っている?


「全員個別に分かれて探すぞ。研修生二人は用心のためツーマンセルで動け。なるべく交戦はするな。いいな!」

「了解!」

「了解」


 ジークレインとともに指示に頷き、走り出す。

 ――嫌な予感がする。

 だがどういう類の嫌な予感なのかはわからない。


 このまま、無駄な捜索に時間を使っていていいのか――?



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