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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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105 決行

――王国騎士団は、誠実をもってよしとする。

正道を重んじ、卑劣な手を嫌う。故に捕り物もおおむね正々堂々、白昼から行うことがほとんどだ。


騎士団の人間が常にご立派な騎士道精神とやらにのっとって行動するわけではないとよく知る自分からすれば鼻で笑いたくなるようなお題目だが、実際に、騎士団は奇襲や虚をつくという手法をあまり取らない。策を弄する必要があれば弄するだろうが、尊ばれるのは真っ向勝負だ。



――そのため珍しいのだ。

夜に奇襲をかけ、捕り物をするなど。



さて、草木も寝静まった深夜である。

近衛騎士隊に所属する【蒼】と同種の部隊が突き止めたアルティスタ・ファミリー南部支部のアジトを包囲するように配置された先鋒の部隊の一つに、私とジークレインはいた。


南部支部のアジト、というが、無法者マフィアたちの本拠地という意味ではなく、あくまで今回の暴動テロの司令部として使われていると思われる建物という意味でのアジトだ。

王都にほど近い森の中に位置する、人目につかない廃教会。共和国の尊ぶ神に祈るための教会だが、アルフィリアには信教の自由があるとはいえ、共和国との関係性が悪化するにつれ信者が減り、誰も足を運ばなくなった場所だ。多少手を入れて、人が寝起き出来る場所にしたのだろう。


今回、夜間の奇襲が作戦として挙げられたのは、作戦自体に憲兵との協働があり、かつ、近衛騎士隊という形にとらわれない隊だからだ。

奇襲は騎士団が選びにくい手だけに、なかなか有効な一手となりそうだが、どうだろうか。ヘルと連絡を取りたいところだが、さすがにそれは無理なので、作戦の実効性が読めない。


「……まったく、こんなところをよく見つけたものだ」


 潜んでいる鬱蒼とした森の中、ひそやかな声で呟いたのはユルゲンだ。言わずもがな廃教会の裏門からの襲撃部隊の指揮を執る一級騎士である。

 先鋒部隊にいる学生は私とジークレインだけで、他の研修生のほとんどは後方部隊か、その予備部隊に所属している。交戦が少なく、あるいはない部隊だ。

 だからこそこの部隊に飛び込んだ私達は、隊の仲間・・にも見定められている。

 仲間には騎士としての価値を。そしてユルゲンには、王国騎士団員としての忠誠を。


(これは思った以上に気を抜けないな)


 ジークレインの表情も硬い。

 私はマフィア幹部の弟子で、しかも革命までやらかした人間だ。夜間の襲撃自体はわりあい慣れっこだが、暗闇を活かしての戦いは、ジークレインには慣れないものだろう。気が抜けないのは間違いないが、暗闇は闇魔法使いにはありがたい場所なのだが。


 ――まあ、ジークレインならばなんとかするのだろう。

 奴は天才なのだ。こちらが時間をかけて吸収する経験や知識を、何倍もの速さで習得し、適応する。掛け値なしにそう思う。



「さて諸君。作戦を説明する」


 声を絞ってそう言ったユルゲンが、こちらをぐるりと見回した。

 灯りはないが早々に目が慣れてきたので顔はよく見える。


「情報では、今夜この廃教会ではアルティスタ・ファミリー南部支部の幹部数名と、貴族の反逆者数名による幹部会談が行われる予定だ。もちろん南部支部長もいる。警備はもちろん万全だろうが深夜だ。おそらく皆眠っている」

「確かに、灯りはありませんね」

「そこで、我々が狙うのは南部支部長がいると思われる三階奥の部屋だ。裏口から入る我々からは手前の部屋だな。裏門から裏庭を抜け、そのまま通用口から中に入る。教会には二階の礼拝室に繋がる中央階段の他にも階段があるが、我々はそれを使う」


 私は裏門の様子を見た。

 裏にも一応見張りが立っている。交戦は避けられないはずなので、なるべく襲撃が敵に知られないうちに、素早く倒してしまう必要があるだろう。


「魔法を使えば光や音で襲撃が露見しますね。はじめは剣での戦闘に努めた方がよさそうだ」

「土魔法や風魔法であれば多少は誤魔化せるか?」

「悲鳴を上げさせないで倒す。なかなか難しそうです」

「その通り。よくわかっているな諸君。なるべく魔法を使うのは控えてもらいたい。交戦は最小限に。騒げば騒ぐだけ、作戦遂行が難しくなる」


 確かに、と騎士のうちの一人が頷き、それから皮肉げに言った。



「――我々には守るもの(・・・・)もありますしね」



「……」


 遠回しな、しかしはっきりとしたお荷物扱いに、ジークレインが闇の中でわずかに眉を寄せたのがわかった。

 だが確かに、経験の浅い近衛騎士隊にとっては、実力が分からない学生など、いくら前評判が高くとも、殻を被ったひよこ、否、卵でしかない。

 その扱いが嫌なのであれば、実力を示すしかない。


 そして私も、ジークレインも、示すべき力くらいは有している。


「足手まといになるつもりはありません」

「右に同じく」


 ――びゅお。

 今まで無風だった森に、突然吹き飛ばされそうな突風が吹いた。


 ユルゲンが静かに言う。



「それを戦いの場でも見せてもらおう。

 ――合図だ。出るぞ」



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