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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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101 何も知らない


「……リヴィエール? どうかしたのか?」

「っ、いえ……」


 どうする。ここで言うべきか。

 だが父が南部支部の反乱計画とやらに関わっている証拠はどこにもない。それにそもそも、この疑惑を話せば、扱いあぐねてしばらく秘匿しようとしていたヘルからの情報を話さなければならなくなってしまう。

 話せば当然、情報源はどこだと訊ねられるだろう。しかし正直に敵組織の幹部だと言う訳にもいかない――私だけならばともかく、既にジークレインを巻き込んでしまっているからだ。


(あの時は、2人まとめて殺されないようにするためにも仕方がなかったとはいえ……)


 ジークレインに一枚噛ませるべきではなかった。

 知らなくていいことを、あいつは私のせいで知ってしまった。


「残念ですが、父の思惑には心当たりがありません。……ただ、あの父のことです。おかしいとは思うので、こちらから探りを入れてみましょう。兄が私の疑問に答えてくれるかは定かじゃありませんが、姉ならまだ力になってくれるやも……」

「……そうか。わかった、頼む」


 何か言いたげではあったが、コンスタンティンはそれだけ言うと、下がれと退室を促した。

 ――コンスタンティンの、こちらを凝と見る双眸はあの師と同じ青灰色(ブルーグレー)だ。鋭く、隙のない瞳。何もかも見透かされているような心地になり、ひやりと全身が冷える。

 お前のために、あえて尋ねないだけだと言われている気がした。

 

 ……実力でそう劣っているとは思わない。

 今の自分は本来の力を取り戻してはいないが、一級騎士、兄と同格の聖騎士にもそうそう後れは取らないつもりでいる。

 だが、コンスタンティンは、穏やかさと苦労人性を取り払った目をすると、途端に威厳が出た。感じたのは緊張と畏怖だった。


 ――壊してやると思っていた。自分ならばできると。

 しかし()()()だって、ジークレインよりも経験を積んだ聖騎士長が奴以外に3人。聖騎士長と同格以上の王太子ユリウスがいた。

 だとすれば――はなから。


(あの革命は、失敗する運命だったのかもしれない)


 は、と、心の中で鼻で笑う。

 ――くだらない思考だ。

 失敗は失敗でしかなく、()にもたらされたのは結果、死だった。それ以上でも以下でもなく、たらればに意味はない。


 私は一礼すると、促されるまま踵を返した。




 *




 与えられた部屋に入ると、固い寝台に腰掛ける。修練の時間ではあったが、ジークレインと私は今日はとっとと休めとのお達しで、部屋に戻ることを許されている。

 とはいえ、ジークレインは部屋の中で修業でもしているか、魔法力を高めるための瞑想でもしているのだろう。容易に想像がつく。

 ()がかつて近衛騎士隊員だった当時、休めと言われた時に休んだ記憶はほとんどない。


(父は――)


 どうして闇魔法の研究なんぞをしようと思ったのだろうか。

 今話題に出されると、どうしてもアルフィリア南部支部の計画と紐づけてしまう。無関係である可能性も否定できないというのに――だが、やはり不可解なのだ。なぜ、闇魔法を嫌うはずの、保守派の父が?


 苦々しい気持ちを抱えたまま、インクとペンを取り出した。姉に手紙を書くためだ。

 貴族が主に使う紙は羊皮紙だが、共和国では木材を粉砕したものが原料となった、手触りのいい紙が生産されているという。こちらでは安価な紙は木綿クズを原料としているので、奴らの使うものとの隔たりが想像できない。


『お久しぶりです姉上。いかがお過ごしでしょうか』


 型にはまった時候の挨拶から始まり、いつもの通り簡潔に近況報告をする。ひと月かふた月に一度、姉とは手紙のやり取りをしているが、だいたい私が送るものは簡潔で素っ気ないものだった――今回は、付け加えることがある。

 

 父が闇魔法を研究していることを知っているかという質問。

 そしてそれを父に問いたださないでほしいという頼み。

 

 問いただすな、というこちらの意図を、姉は汲んでくれるはずだ。姉も優秀な騎士なのだから――リヴィエールの当主が、闇魔法を研究しているという異様さに気づかないはずがない。

 

(姉が知っていて、知らせてきていないだけならばさしたる問題はないだろう。不穏な理由で研究をする父を姉が放置するはずもないしな。

 だから、理由があればよし……なければ)


 近衛騎士隊へ情報を流すことを考えなくては。

 直接伝えるのは危険が大きい。ヘルと協力者になったところまで吐かされる危険まで想定すべきだ。

 近衛騎士隊の尋問はそれなりに苛烈だ。――この身体は痛みを耐える訓練を積んでいない。


(私の事情を知ってるツェーデルに情報の横流しを頼むのが無難か)


 その場合も、ヘルの存在を話すのは――まあ、さすがのツェーデル相手でもやめておいた方がいいだろう。

 何かのタイミングでこちらを怪しんだ息子(コンスタンティン)に尋ねられればあの人も答えるやもしれない。


 ――少なくとも前世では反乱なんて起こっていなかったはず。事前に察知した者がいて止めたのか、あるいは……これが、()()()()()()()()()()ことなのか。


 ……ありうる。

 ()()()()()では死ぬはずだったブルクハルトは生存し、マリアはアカデミーにいる。そして第2王妃が死んでいる――。

 この違いが新たな『面倒』を呼び込んだ可能性は十分にあるだろう。 

  

(父は前世でも闇魔法の研究をしてたのか?)


 ――わからない。

 リヴィエールに連なる者は全て殺した。聖騎士になった兄はこの手にかけた。

 父は手にかけていないが、父のことは幹部の1人が殺したはずだ。


だから、わからない――。


(私は……家族だった者のことを何も知らないんだな)


知ろうともしていなかったのかもしれないが。

 



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[一言] 面白くてつい一気読みしてしまいました!
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