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更改のクローディア ~闇落ちして最強の敵キャラになった元落ちこぼれのライバルポジの男は、最終的に主人公を守ったら女として逆行していた~  作者: 日下部聖


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098 俯いている暇はない

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い申し上げます。


今年はもしかしたらいいお知らせをお伝えできるかもしれませんので、乞うご期待です。

「……マジで出鱈目だなこれ」

「結論を聞いてるんだが?」


 倒れ伏した大男を横目で窺いながら呟くヘルを睨みつける。剣を鞘に戻した、チャン、という軽い金属音を聞くと、奴はようやく観念したように笑った――あくまでも『ように』だが。


「……わかった。あんたが蒼月流抜刀術の使い手で、あの『東の帝国支部』のアタマと繋がりを作ってくれるってこと、信じるよ」

「つまり?」



「――俺はあんたと組む。

 この国を好いてるとは思えないあんたのみちの先を、俺も見てみたい」



「……」


 ヘルの真っ直ぐな視線が、こちらに向けられる。

 その瞳に宿るのは、決して恭順の意ではない。私の都合のいい駒に成り下がってやってもいい、と、そう思っている目ではない。

 不甲斐なければその喉笛に食いついてやるという意志と、骨の髄まで利用し尽くしてやろうというハングリー精神(熱い飢餓感)こそが、奴の目の中で燃えている。


「……そうか」


 だが、それでいい。

 俺はふ、と目元を緩める。

 

 初めから『同志』だった『クロード()』と『ヘル』の関係ではないし、彼と私の間には、同盟関係に先立つ信頼関係もない。

 ――それでも私はこいつが欲しかった。

 新しくていいのだ。私は何一つ、前回通りに進んでやるつもりなどないのだから。


(『革命軍』側は、あと二人か。

 ……必ず味方につける)


「……ふーん。あんた、名前、なんて言ったっけ」

「クローディアだ。クローディア・リヴィエール」

「そう、クローディア。あんた喋り方怖いしクッソ可愛げのない女だなって思ってたけど、そうやって笑うと可愛いじゃん」

「「……は?」」


 思わず半眼になって発した声と、他の声が重なる。今のはジークレインの声か?

 振り返ると、しばしの間黙って待ってくれていたジークレインが、眉間に深いシワを刻み、見るからに不機嫌そうな表情でこちらを睨んでいた。……なんだ? ヘルのふざけた物言いがそんなに気に障ったのか? ヘルは大概女好きだ、今の物言いも戯れに過ぎないのだから、気にしなければいいものを。相手だって私だろうに。


(まあ、ジークレインは堅物だからな……いくら相手が私だろうと、軽薄な物言いは腹立たしいのかもしれない)


 前世でも結婚はしてなかったみたいだしな。婚約者については知らんが。恋人の一人でもいたのだろうか。


「……いつまで遊んでるつもりだ、お前たち。ここの異変もしばらくすれば気づかれるだろう。

 終わったなら、とっとと憲兵を呼んで突入準備だ」

「ああ、悪い。そうだな」

「……それはいいけど」


 ヘルが不機嫌そうなジークレインに一歩近づく。


「さっきから思ってたんだけど、ジークレイン・イグニス、だっけ。もしかして、()()()()感じなのかよ?」

「お前には関係ない」

「へー? 俺は具体的に何とは言ってないんだけど、何を指してんのかはわかるんだ?」

「お前……」

「おい、遊んでいるのはやめるという話じゃなかったのか」


 なぜだか知らんがヘルに対して敵意を飛ばしているジークレインに呆れる。お前が早くしろと言ったんだろうが。お前がヘルと揉めようとしてどうする。


 なんにせよ――。


「さあ、捕物の時間だ。派手に行こう」




 *




 呼び寄せておいた憲兵の連中は、あれよあれよという間に『遊び場』の貴族たちを捕縛していった。

 こんな地方繁華街のたまり場にいる貴族なんざ、階級や身分からしてもたかが知れている。お育ちのいい者が半数を占めている憲兵団は、貴族たちのなけなしの『身分の盾』とやらを気に留めることもなく、清々しいほどの手際の良さであった。


 ――そして、(こちら)としてはヘルにはうまく『行方不明』になってもらわねばならない。

 替えの死体でも用意出来ればよかったのだが、

さすがに近衛騎士隊の目まで騙せる偽装をする時間はなかったので、なんとか私たちで奴を逃す他なかった。

   

「じゃあ俺はとりあえず遠くへ逃げる。便りはなんとかして出すからその時は頼むぜ、クローディア」

「ああ。落ち着いたら知らせてくれ」

「ん。……っはは、そんなに睨むなよジークレイン。仲良くやろうぜ」

「気安く呼ぶな」


 ヘルとっときの『いざという時の逃道』――相変わらず抜かりのない男である――の前で手短に別れを済ませる。別れといっても別に大袈裟なものではないが。

 しかし、奴に返答するジークレインだが、……まるで舌打ちでもしそうな不機嫌顔である。

 こうまで徹底的にウマが合わないものなのか。まあ確かにお育ちのよろしい堅物な天才と、機転が利いて軽薄で狡賢いヘルじゃあ相性は悪かったかもしれない。


「じゃあな」

「ああ」


 一般の貸出馬車に偽装された簡易なつくりの車に乗って遠ざかっていく奴を見送り、私は「さて」とジークレインに向き直った。


「さて、私達も帰還だな」

「ああ。……作戦は成功、とはとても言えないだろうが」


 さもありなん。

 アグアトリッジの裏切りにより、アレンは重傷を負い、今も尚生死の境をさ迷っている。


 とはいえ、捕縛以外に何も得られなかったわけではない。

 ヘルから得られた、アルフィリア南部支部の企み――王国に動乱を齎す可能性のある情報。それこそが、私たちが今回手にした最大の戦果と言える。


「……俯いている暇はない。やるべきことをしよう」

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[一言] ジークレイン君応援してるぞ!無理そうやけども()
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