3話 生活指導室にて
「1年C組渡瀬 華。16歳O型、両親と三人暮らし。遅刻常習犯であり校内随一の問題児。間違っている所はありますか?」
「問題児って言うのはそっちが勝手に言ってるだけでしょ」
「確かに」
山川君はパタンと冊子のような物を閉じる。
あれから場所は移り生活指導室。
狭い室内には机に二対の椅子、ホワイトボートがあるだけ。
「何これ取り調べ?もう授業始まってるんだけど?スマホ返して」
「ふむ、一つずつ答えよう。取り調べではなく簡単な確認、先生からは許可を得ているので授業はでなくて良い、スマートフォンは後で返す」
「………で、何の用よ」
山川君からちゃんと話をしようとこの部屋に連れてこられた私。ふて腐れている私の様子を知ってか知らずか淡々と話す………いやあれは気づいている。
見かけによらず図太い奴。
「実は先日先生から君の事を相談されてね」
「は?何で貴方に?」
「先生方らは以前から何度も君に注意勧告をし、更にはご両親にも話をしたのに全く改善が見られない」
「…それで?」
「ならばと、同級生である僕からならなんとかなるのでは相談されたのだ」
「やれやれ、教師が生徒に頼るようになっちゃったら終わりね」
「僕はその話を承った」
「………はあぁ!?」
ちょっと何言ってんのコイツ!?
「どういう事よ!?あんたに義務も義理もないでしょ!?それとも何?見返りでもある分け!?」
「失礼な何もあるわけがない」
「じゃ何でよ!?」
「君に興味があるんだ」
「え?」
興味?私に?え?えぇ!?
「以前から見ていたよ」
「あぅあぅ」
彼の真剣な眼差しに後ずさる私。
「遅刻は勿論、髪はバサバサ制服は着崩し忘れ物は日常茶飯事。僕からすればどういった思考回路をしているのか全く理解不能」
こいつ………言わせておけば、
「一瞬のトキメキを返せぇ!!」
「だから思ったんだ、この話を請ければ君の思考が解るかも知れないと、言わば未知の興味と言った所だ。安心して欲しい僕が君を真人間にすると誓う」
「人の話を聞けぇ!!」
私の叫びは空しく室内に響いた。