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科学と魔法の超融合(フィズオーン)  作者: 村上隼人
第1章 そして時代は再び動き始めた
13/15

鉄の男編IV 輝く鎧

魔暦523年 6/7(水) T-Factory内部CEO専用研究室


「...人を殺してる?何、何を言っているんだ」

 手嶋黎乃は自らの研究のために造った部屋で呆然としていた。

「私も何がなんだか分かんないよっ。ただ前嶋さんがそう言ってて...。さっきも言ったけどニュースだって!」

 前嶋というのは社員の一人だ。黎乃と同い年という事もあってよく話している。

「とにかく、現場にっ...」

 黎乃は研究室の扉に向かおうとする。

 しかしその腕を美空が掴んだ。

 思ったより強い力に黎乃は少し驚く。

「ダメ、行かないで」

 美空はそれだけ言って黎乃の目をしっかりと見つめてくる。

 黎乃はその目を見つめ返し、ゆっくりと美空の腕をほどいた。

「心配してくれてるのか?」

 そう尋ねる。

 美空は少し俯いて小さな声で言った。

「当たり前じゃん...」

 黎乃も同じように俯く。そして美空の頭をポンと叩いた。

「大丈夫だよ。もう前までの僕じゃないんだ。今の僕には...」

 そう言って黎乃はアーマースーツの方に目を向ける。

 そして決意を固めた声で続きの言葉を口にした。

「アイツがある」



魔暦523年 6/7(水) シブヤ区画警備署


 警備署の前まで来ると小山輝は装甲車の中で握りしめているスイッチを押す。

 装甲車に取り付けられた砲身から弾が発射される音がした。

 その直後に爆発音とともに人の悲鳴が聞こえる。恐らくは署に勤務している隊員だろう。

 魔法が効かないという情報が入っているのか、装甲車に立ち向かおうとする者は誰もいない。

「へへっ、楽勝だな」

 荒本康樹はそう言いながら小山の隣でふんぞり返っている。

「どうする?俺たちはこのままここにいるか?」

 小山はそう尋ねた。

「あー、俺はここにいるわ。逃げようとするヤツを殺す快感は何物にも代えられねえよなあ」

 荒本はニヤニヤしながらそう言った。

 小山は半ば呆れながら席から腰を上げながら言った。

「そうか。なら俺はちょっと出てくる」

「おー、なんか今日はヤル気じゃん。いつも爆弾作ったら持ってきて、すぐに帰るのに」

「随分痛い目に遭わされたからな。仕返しってヤツだよ」

「ハハハッ、いいねえ。外のヤツが魔断石とか色々持ってるから借りな」

「ああ、サンキュー」

 そう言って小山は装甲車から出る。

 中がむさ苦しかったせいか、爆煙で曇った外の空気もなんだか美味いような気がした。

「小山さん、中入るんすか?」

 そう言って話しかけてきたのは後輩の一人だ。

「ああ、やられた分やり返しに行こうと思ってな」

「お供しますよ」

「心強いな」

 そう言って二人は警備署の中に入っていく。

 しかし、先に入った部隊が粗方片付けてしまったのか、生きている人間はほとんどいなかった。

 虫の息の隊員にトドメを刺していくぐらいだ。

「なぁんか、つまんないっすね」

「楽でいいじゃないか。それにまだ上の階があるだろ」

「んー、でも上もやられちゃってんじゃないですかねー」

「そん時はそん時だ。別の所に...」

 そこまで言った時だった。無線に連絡が入った。

 しかし、その声の主、荒本康樹の様子は普通ではなかった。

(おい!輝か!?なんか...なんかヤベェぞ!なんなんだ!なんなんだよテメェはぁぁ!)

 その言葉を境に無線は途切れた。

「なんだ!?どうしたんだ!おい、康樹!」

「え、荒本さんなんかあったんすか?」

「分からん!とにかく戻るぞ!なんか嫌な予感がする」

 小山はそう言うとその時いた三階から階段を駆け下り入り口に向かった。

 そして、そこで目にした光景は信じられないものだった。

 装甲車が真っ二つに割れ荒本は外に放り出されていた。

 装甲車の断面はオレンジ色に光っていて、まるで何かで焼き切られたようだった。

 小山は荒本に駆け寄る。

「おい!康樹!どうした!?なんだ!?何があったんだ!?」

 しかし荒本は気を失っているらしく返事はない。

 小山が戸惑っていると後ろから声がした。

「大丈夫。彼は気絶しているだけだ」

 聞き覚えのある声だった。

 小山の中で渦巻くあの男の声だ。

 小山はゆっくりと声のする方を向く。

 そこにいたのは銀と紺の輝く鎧だった。



魔暦523年 6/7(水) シブヤ区画警備署前


 荒本康樹は警備署の中に入るという小山輝を見送ると、警備署から逃げてくる者がいないかを目を凝らした。

 しかし、人は全く出てこない。

 先に行った部隊が中で始末したか、もしくは別の所から逃げているのかもしれない。

 荒本がいる場所は正面入り口だから、わざわざそこから逃げるヤツはいないのかもしれない。

「はぁー、つまんねえなあ。別の場所行くかな。あーでも輝が戻ってきた時ここにいなきゃ困るよな」

 荒本はブツブツと独り言を呟きながら、砲身を動かすレバーをグリグリと回した。

「やっぱ俺も行くか」

 そう言って装甲車から出ようとした時だった。

 装甲車の天井にガン、という何かが落ちた音がした。

「なっ、なんだ?」

 装甲車の出入り口は天井にある蓋のような扉だ。

 荒本はその扉にそっと近づく。

 そして扉を押しあけようとした瞬間だった。

 外側から丸い蓋は引きちぎられ外の空気が装甲車の中に流れ込んできた。

 しかし驚いたのは次に起こった出来事だ。

 銀と紺の腕が荒本の胸ぐらを掴み外に引っ張り出したのだ。

「うわっ。クソッ、何しやがる。誰だテメェはっ!」

 顔を上げた先にいたのは全身が鉄でできているであろう鎧だった。

「な、なんだお前は...」

 荒本は驚きの余り、しっかりと声が出せない。

「クソッ、離せっ!」

 荒本がそう言った後、鉄の手は荒本から手を離す。

 荒本は装甲車から地面に落ちた。

 高低差が思ったより大きく、体に激しい痛みが走る。

「テメェ...ふざけんなぁぁ!!」

 荒本は叫びながら懐から拳銃を取り出し、迷いを一切見せず鉄の鎧に向かって乱射した。

 しかし鎧は銃弾をものともしない。

 結局銃弾はなくなるまで相手は微動だにしなかった。

「ハッ、ハハッ。文字通り鉄人ってわけだ」

 荒本は驚きを通り越し、呆れた声を出す。

「...だがっ、コイツならどうだぁ!」

 荒本はそう言いながらポケットに入っていたリモコンを操作しだした。

 すると無人の装甲車が動き出した。

 鎧は背中から光を放つとフワリと宙に浮いた。

「なっ、飛べるのか、あの野郎」

 荒本はまたしても驚かされる。しかし、すぐさまリモコンの操作に集中する。

 砲身を操作して鎧に照準を合わせる。

「これでも...食らえぇぇっ!」

 その声と同時にスイッチを押そうとした。

 しかし次の瞬間。

 リモコンを持った、右手に衝撃が走った。

 荒本はリモコンをその手から離してしまった。

「なっ!?」

 荒本が相手の方を向くと、鎧は右腕を荒本の方に向けていた。

 その右腕には小さな砲身のようなものがあった。

 荒本が言葉を発せないでいると、鎧の右手の手の甲側の手首に付いていた砲身は小さな箱にしまわれた。

 そして手のひら側の手首に付いた箱と先ほどの小さな箱が入れ替わる。

 そしてまたしても箱が開き砲身が出てくる。

 先ほどとは違う形状のものだ。

 もう一つ違うのは腕の向いた先は荒本ではなく装甲車だ。

 そして次の瞬間、砲身からは黄色のレーザーが打ち出され、装甲車を削っていった。

 装甲車はあっという間に真っ二つに割れ、ガラクタと化した。

 荒本はその様子を見ながら無線を取り出す。

「おい!輝か!?なんか...なんかヤベェぞ!」

 そこまでいったところで鉄の鎧はこちらを向く。

 小さな箱はまたしても回転し最初の状態に戻った。

「なんなんだ!なんなんだよテメェはぁぁ!」

 そう叫んだ瞬間荒本の身体全体を衝撃が包んだ。

 薄れゆく視界の中で見たのは、右腕をこちらに向けた鉄の鎧だった。

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