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獣大陸を行く

プルリンを加えた3人で旅を続ける。

獣大陸では体力バリバリの獣人は珍しくはないので、街道を高速で走ってもさほど驚かれない。

ハナは上機嫌だし、プルリンもハナのフィッティング毛皮シートに乗っかって大喜びだ。


「うわぁ凄い凄い、あはははは。風で体が伸びちゃうよー」

プルリンは素直で明るい子なので、一緒にいるだけで楽しくなる。良い仲間ができた。

え、癒しのスキル?あれは治療技のはず。でも凄く癒されるのは否定できないなー。



狼人国は、獣人の国の中では人口も少なく、国力も大きい方ではない。

しかし人々は、困難にめげることなく、仲良く楽しく健やかに生活しているという感じがする。

俺の感性だと、古き良き時代の田舎というところだな。


次の村は、深林の村。人の森という大きな森を抱える村だ。

ここでも世直し。食料と農地と水利の問題をさくっと解決後、もう一つの問題、増えすぎた森の野人の討伐に取り組むことになった。混乱に乗じて増え過ぎたとのこと。

「下っ端は猿類、主力が野人系、まれに上位個体が統率したりしているようです」と深林の村の村長さんが説明する。

水棲野人の水人みずともかなりのものだった。野人は手ごわいかも知れん。


森の入り口あたりに、人の森で最弱と言われるリス猿レベル1がいた。

プルリンがタイマン勝負で挑む。リス猿がジャンピングアタックで飛び込んで来たところをプルリンが受け止めて包み込み、そのまま消化。あっけなく勝負がついた。

「ぼく、包容力と食欲には自信あるんだ!」


次はチムパンの群れと遭遇。

プルリンがレベル3の中堅どころと一騎打ち。ハナがその他を蹴散らし、俺は見学。


チムパンがキーキー喚きながら木の枝で殴りかかる。

プルリン、殴られながらも構わず前進し、とりつき、包み込む。

チムパン、引き剝がそうとするも、掴んだところだけヌルッと分離するだけで包容に影響なし。

一部引き剥がされて分離されたプルリン体は、すぐにズルズルとあるいはポムポムとプルリン本体に引き寄せられて合流する。

あっという間にチムパン力尽きる。窒息したのだろう、動きが止まる。プルリンそのまま消化する模様。


プルリンはレベル3になった

筋力3/敏捷性3/生命力15/魔気力30/魔気速15/魔気量60/活力8


プルリンの戦い方は大体こんな感じ。スライムは、大きく強くなると手強い!

生来の再生力もある。物理攻撃はあまり効かない。

そうだ、念のためにひとかけらだけ再生亜空間に保存しておこう。これで安心だ。


「いいぞプルリン。その調子で自由に戦って、どんどんレベルアップしなさい」

「うん!いくらでも食べられるよ!!」


そうこうするうちにプルリンはレベル10になった。

筋力51/敏捷性51/生命力256/魔気力513/魔気速256/魔気量1025/活力128

ギフト 食奪

「わぁい!ギフトだ。うれしぃなぁ。戦ったら食べればいいんだよね」

うん、幸いそれは得意だからよかったね。


次の敵はクロマニ。普通に二足歩行しているだいぶ進化した類人猿だ。火魔法も使うよう。

プルリン、火に苦戦か?おお、水甕に変化して柄杓で水を汲んで消化。凄い、こんな技が(笑)。

槍に変化して突く、突く、突く。近くの敵を倒したら包んで食べつつ、余力で弓矢に変化して遠くの敵を撃つ。なんて楽し気な戦闘だ!クロマニたまらず退散。

プルリンが結構活躍していた。

切れれても燃やされても不思議なことに生命力が全く減らない。本体の一定量が残っている限りは生命力が脅かされないようだ。


プルリンはレベルが11に。うん?プルリンのスキルが増えてる。

スキル 再生 溶解 硬化 癒し 火魔法 火耐性 物理耐性 

クロマニを食べたから火魔法を獲得したようだ。耐性はどうしたんだろう?

『攻撃された相手を食べると、受けた攻撃に対する耐性も獲得するようだ』

それは凄い!まさに転んでもただでは起きない的な。これはどんどん強くなるぞ!


人の森の中心部には森人もりとの集落があった。

森人は、簡素な武器防具を身につけ、前衛後衛の役割分担をもって群れで攻撃してくる

。前衛は体力強化の魔法を掛け、理力盾を伴っている。

後衛からは様々な魔法が飛んでくるが、なかでも理力が得意なようだ。

プルリンが恐ろし気な怪物に変化して、森人の陣形を崩したりしていたが、直ぐに見破られて通用しなくなる。さすが人族、知能が高い。


プルリンが万遍なく攻撃を受ける(笑)ように配慮しつつ、やられ過ぎないように適宜理力弾を撃ち込んだり冷気で固めたりしながら援護する。

いやいや、不思議なのは、プルリンの食欲に限界がないこと。食べる端から消化して自分の体にしてしまうから、限度無くいくらでも食べられるようだ。

しかも消化の速度は随分早くなった。包んだと思ったら消化が終わっている。スキル溶解に磨きがかかったのだろう。

そしてプルリンの本体は別空間にあるのか、食べても食べても大きくなり過ぎることも無い。


森人の大部分を倒した。残りは逃げて行った。さほど強いとは感じなかった。

なんだかプルリンの成長を楽しんでいるうちに、気が付いたら結構な時間が経過し、相当な数の敵を倒してしまったようだ。そして討伐も終了した。


狼人国森の村の世直しをした

ハジメはレベル71になった

ハナはレベル55になった

プルリンはレベル17になった


世直しは村単位で、ひとつの村を救うと完了して、全員のレベルが一つ上がるイベントのようだ。

狼人国には村が5つ街が1つあるので、全部で6回、あと4回世直しの機会がありそうだ。

*****


俺の念体ギフトは、気の力で疑似生物を作り出す力だった。

念体は、式神よりも繊細な操作が可能で、分身に準ずる程の精緻な操作感だ。

もちろん念体ハジメも作れる。

分身と違うのは魂の分割が無いこと、式神と違うのは念体生物は魔法が一つ使えることだ。


何でも作れるが、強力なのはやっぱり念体ハジメ。物理能力は本体の1%程度。でも十分強い。気関連の能力が高いから、ひとつだけと言っても使う魔法は強力無比。

式神ハジメと万物創造でつくる人造ハジメを兵、念体ハジメを小隊長、1割分身ハジメを中隊長に、大隊長に俺本体5割ハジメあたりでハジメ軍団が作れそうだ。気持ち悪いけどね。。。


敵に擬態し念体を紛れ込ませて攪乱したり諜報したり、こういう使い方なんかも結構役に立ちそう。

*****


更に二つの世直しを完了してから、俺達一行はウルファグの街にやって来た。

ここは狼人国の王都というべき街で、今は王位が空席で、あのジークムさんが王代行となっているとのこと。ちなみにジークムさんは英雄ジークムとして人望というか狼望は抜群だ。


ウルファグの問題は、食料、農地、治水の他、火山活動と隣国との通商条約の改定問題だった。

先の三つは例によってサックりと解決したが、もう夜なので残りは明日ということで、王宮となっている年代物の立派な館で歓迎の宴が催された。


ハナ人気が凄くて、みんながハナと話したり握手したり匂いを嗅ぎたがってもう大変だった。

俺がハナと出会って今日までのことを、ハナの冒険活劇として語ると、凄い盛り上がりで、ハナが活躍すると全員の目がキラキラ、耳が誇らしげにピインと立ってピコピコ動き、尻尾はぐるんぐるん。

ハナが英雄ジークムに惜しくも倒される(殺されたとはもちろん言わない)場面では、耳がペタンコ、尻尾もしゅーんと垂れてしまう。


俺が耳と尻尾を鋭く観察する視線に気が付いたジークムさんが言うには、

「人族の方には判り難いでしょうが、我々の耳と尻尾には少々気持ちが現れるのですよ」

隣の人も言う。

「耳は心の鏡、尻尾は口ほどにものを言い、という狼族の諺もあります。よーく見てみるとなんとなく判るものですよ」

いや、なんとなくじゃなくて、チラ見するだけでバリバリに判るんですが。。。


「そう言えば、私にも何となく感じるものがあります」

ハナ、お前は、その程度しか判らんかったんかい!!

狼人族は意外にも耳と尻尾の動きについてあまり自覚がない、という衝撃の事実が明らかになった瞬間だった。

*****


宴会がお開きになった後、私室でジークムから先帝の話が語られた。

半月前の新月の日、狼人国を大嵐と洪水が襲い、陣頭指揮を執っていた先帝が黒いつむじ風に巻き込まれて姿を消し、同様に避難所に向っていた王妃と幼子も行方不明となった。翌日、変わり果てた先帝と妃が発見されたが幼子の姿は無かった。ジークムと狼人国冒険者総出で下手人探しと幼子捜索を続けていたところ、その幼子が新参の守護者ハジメの関係者になっているらしいことを突き止めて、今日に至ったとのこと。


「かくかくしかじかなのでございます」

「うーん、そう言われても、全く記憶が無いから自分のことかどうか分からないですー」

「お姿から推測される血のつながりの他に、もう一つ重要なことがございます。種族名です」

「どういうこと?」

「王となるに相応しい者は、王名の付いた種族に進化します。狼人族は代々その基準で王を戴いてきたのです。ハナ様の狼型を拝見する限り、王族に進化なされているのではございませぬか?」


「え、、と。うーんと、、どうだったかな?ははははは」

ハナ耳もハナ尾も、縮こまってわずかにぴくぴく動き「こまったなー」感を滲ませている。

「まあまあ、今日は夜も更けたことですし、また明日としませんか?」

助け舟を出して、この場から脱出する。

プルリンはもう熟睡しているらしく、無言で俺の腕からデローンと垂れさがっている。


その後、「あーどうしよー、どーしよー」とか悩んでいた割には、寝床に入ってわずか1分でスーピー寝息を立てているハナ。

息をしてるかどうだか分からないけど、わずかに明滅して熟睡しているらしいプルリン。


愉快な仲間達だ。3人になって随分と充実感が増した。

まあね、全て成るようになる。成るに任せる。そうだ、心配なんてしないのだ!


ハジメL73、ハナL57、プルリンL19


異世界定期便 第12便 ザース春16日 狼人国 ウルファグ→7/26火 日本 自宅





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