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狼人国で新しいアレが!

「婿殿は、噂通りの凄腕ですな」

「婿殿は止めて下さいよ。さっきのはハナが頑張ってくれたおかげです」

「それで、どうしてハナが姫なの?」

「姫様、いや今はハナ様ですね。そのお姿と私めの第六感でございます」


「え、根拠薄いような。。。」

「何かいわくがありそうですね」

「是非狼人国においで下さい。獣大陸の東側の小さな国ですがよいところですよ。詳しくはそこにてお話しさせていただきます」


シンプルな55階の鍵を受け取って、迷宮を後にした。

「あー、死んじゃったからレベル上がらなかったー」

「でもいい経験が出来ただろ」

「うん、何か色々とねー。。。」

*****


王都の港に来た。獣大陸の東岸行きの船便を探したが、出航は明日以降天候を見てとのことだった。

「旅は過程も大事だからな、やっぱり船旅は欠かせない」


ということで、沖まで飛んでから万物創造で帆船を作って浮かべて、乗り込んだ。

「あー、気持ちいいねー」

そよ風を受けて、帆船が快走する。エンジンがないから静かだ。帆が風を受ける音、舳先が波を切る音だけ。

ちょっと寂しいので、ゴーレムで船員や船長を作って見た。うん、いい感じになった。


索敵してみると、海中には高レベルの魔物や獣が随分と多く棲息している。海運があまり盛んではないのはこのせいだ。十分な武装と護衛が必要になるし、沈没も多いという。

もっとも今は俺の気の隠蔽を解除しているので、この船を襲う無鉄砲な奴は流石にいないようだ。


広々とした青い空と白い雲。360度遮るものがない紺碧の海。白く砕ける波がしら。

背もたれを倒したデッキチェアーにもたれ、サングラスをかけて、大き目のグラスから太いストローで冷たいトロピカルな飲み物を楽しむ。

「平和だ。ハナ、船旅を満喫したか?」

「うん、満喫したー」


さてと、頃合いはよし。旅の過程もしっかり味わった。

「ジョー、狼人国の場所は分かるか」

『ああ。ここで間違いないだろう』

帆船と付属品一切はきちんと収納して、狼人国の国境近くの街道筋に転移する。

*****


「あそこが国境かな?」

ぽつんと小さな門と小屋がある。門と言っても左右に柵があるわけでもない。

(ようこそ狼人国へ。ご自由にどうぞ)

張り紙があるだけで、鍵はかかっていないし、人もいない。

「フランクと言うか、無防備というか」

「うー。」


門をくぐってしばらく歩いてみたけれど、荒れ地と沼ばかりである。

やっと、小さな畑と畑仕事をするお百姓さんらしき姿が見えた。

と思ったら、こちらをちらっと見たとたんだーっと走り去ってしまった。

「人見知り?それとも嫌われてる?」

「うー。。。」


更に歩みを進めると、質素な家がぽつぽつ建っている小さな集落らしき場所に着いた。

子供達がわらわらと群がって来る!しっぽフリフリ、耳がぴんっと立って、目がキラキラ。

「わーい、お姉ちゃん偉い人だー」

「お姉ちゃんたちが世直しをしてくれるの?」

飴玉を渡してげると小さな手が次から次へと伸びて来る。


「どうしてお姉ちゃんが偉い人だと思うの?」

「だって、見るからに立派だし、良い匂いがするもん」

ハナ、無表情を装ってるけど、耳がピコピコ、尻尾がぴくぴく、得意の絶頂だな。

「世直しって?」

「母ちゃんがそう言ってた」

「ほへがほがほーひゃあい?」(これがそーじゃない?)

飴玉頬張りすぎ!それに飴玉は世直しじゃない。


そうこうするうち、軽装の騎士らしき2人が近づいてきて、ひざまずく。

「失礼致します。村長の館へご案内させていただきます」

ちょっと大き目の民家風の建物が村長の館だった。

「なんか見たことあるような。あっ、地下55階の縁側のある家だ!」

特に頼んで縁側でお茶を飲みながら話すことになった。


「荒れた国境の村でろくなおもてなしもできませんが、ようこそいらっしゃいました」

「何かお困りのようですね」

「半月前の新月の日の嵐と洪水で農地がダメになってしまいました。そろそろ食料も底を尽きます。商人の往来も途絶えてしまって、途方に暮れておりました」

「俺達で力になれるなら」

「ハジメ、ありがとう。ぐすっ」


まずは、村の食料倉庫へ。空き箱や俵にわずかに残った豆類小麦大麦そして米。

「ちょっと増やしますね」

転写で倉庫一杯に増やす。米を多めにしたいところだが、狼人向けに蛋白源の豆類多めにしておいた。

「え!?凄い、これが王族のお力ですか!!」

「えっと、まあそんな感じ。あんまり気にしないで下さいね」

ハナを始め、みんなの尻尾と耳がパタパタ嬉しそうなので、見ている俺も嬉しくなる。


次は、現在荒れ地と沼の元農地へ。

「元通りかどうかは分かりませんが、こんな感じではどうですか?」

残った畑を転写して、適当に種類別に割り振って見る。

「おおお!こんなこともお出来になるのですか!」


それから川沿いの壊れた堤防の場所へ。

川をさらって、その土で堤防を直し、ついでに前より高く頑丈にしておいた。

「川の中ほどは深くなりましたから気を付けて下さいね。」

「。。。。。あ、いや、もう驚きを通り越して言葉が出ません。魔法って凄いです」


いやー、何かお安い御用というか、俺って、世直し?に向いてるかも(笑)。


「そう言えば、商人が来なくなったのはなぜなんですか?商売の好機のようにも思うんだけど」

「それがですね、街道に化け物が出没するとの噂が広がって、誰も寄り付かないのです」

「化け物ですか?」

「正体は良く分からないのですが、それはそれは恐ろしい姿だそうです」


「ハナ、どう思う?」

「すごく胡散臭いと思う」

「だよなー、でも乗りかかった船だ。もうひと肌脱ぐか」


それが出るという街道沿いの森に来た。

「なんの変哲もないところだねー」

「大きな気配はないな。小さな動物や魔物がいるだけみたいだ」

「鬼も蛇も出ないよね」


「鬼と蛇がいいんだね!」

不意に声が聞こえた。元気な子供の声。

声のした森の中の方向を見ると、、、出た!


15mはある木々の梢の上から一つ目で2本の角の生えた鬼の顔、幹を縫って地面を走る白い大蛇。

しかし、殺意も害意も、それどころか気配すら、わずかしか感じられない。


「えっと、、、雪だるまが出てくれると嬉しいかな」

ぼふっ。

鬼が消えて、大きな雪だるま。大蛇の代わりに雪兎が跳ねている。こっちは自主サービスか。


「わーい、た、楽しかったなー(棒読)。楽しませてくれた子に会いたいなー」

「ぼくぼく!ぼくだよおぉーー!!」

ぽむっ、ぽむっと飛び跳ねながら現れたのは、淡い水色の半透明、一抱え程の大きさのスライムだ。

キラッキラのツヤツヤだ。何かを凄く期待しているかのようだ。


「ぼく、スライムのプルリン。ずっと友達が欲しかったんだー」

「え、、、えと、、悪いスライムじゃないみたいだな」

転生直後に襲って来た粘性体とはだいぶ感じが違う。

「ぼくね、仲間にしてもらいたくて、頑張って言葉も学んで、通りすがりの人を喜ばせてたんだよ。頑張った甲斐があったよお。初めてお話しできたよおぉー」


「随分がんばったのねー。よしよし」

「うんうん。えへへへへー」

ハナがプルリンをなでなでしたり、指でつんつん突いたりしている。

俺も触ってみた。最初はちょっとひんやりするけど、手をあて続けているとほんのりあったかい。

すべすべのぷるんぷるんで、指で突くと凹んで光が強くなる。離すとぷるんっと復元して光の波紋が浮かんだり消えたりして見ていて飽きない。

見て良し、撫でて良し、突いて良し、ゆすって良し、もんで良し。


これはなんかもう手放せない感じ!

「ハナ、プルリンを仲間にしてもいいかな?」

「いいとも!」

「プルリン、俺たちの仲間になるかい?」

「うんっ!喜んでっ!!」


プルリン 水色スライム レベル1

筋力2/敏捷性2/生命力10/魔気力20/魔気速10/魔気量40/活力5 

ギフト 万能変化ばんのうへんげ

スキル 再生 溶解 硬化 癒し


プルリンが仲間になった!

しかもこれで国境の村の世直しが完了したようだ。


狼人国の国境の村の世直しをした

ハジメはレベル70になった

ハジメは念体のギフトを得た

ハナはレベル54になった

ハナは世直し姫の称号を得た

プルリンはレベル2になった

*****


狼人国の西隣り、犬人国、港町の冒険者ギルド。

「俺、こういうの苦手なんだよな」

「俺もだ」

屈強な男達が見ているのは、しばらく前から貼られっぱなしの一枚の依頼書。

『Bランク 狼人国境へ続く街道の怪異の調査(できれば原因の除去)』

男達の耳はペタっと力なく折れ、尻尾もへなへなと垂れさがっている。


と、そこへ職員がつかつかと歩み寄り、依頼書を剥がす。

「解決したとさ。狼人国から連絡があった」

「そうか、やっぱり荒事は狼人国のギルド向けだよな」

「狼人国の冒険者ギルド、手一杯という話だったけれど余裕が出てきたのかな?」

「剝がされてみると、受けなくて残念だった気がするのが不思議だな」



プルリン、実は危機一髪だったよ。仲間になってよかったねー。



今回はちょっとほのぼのタッチにしてみました。


駆け足の展開で失礼しました。

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