遠隔操作恐るべし
ハジメの魔法の力がまた一段と強力になりました!
ザース春16日 王都 朝
宿屋で目覚めたら、朝飯前にまず訓練だ。
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新ギフトの『遠隔操作』。これはとんでもないシロモノだった。
まずは、吸気や授気そして収納を対象に触れることなしに、離れた場所から実施できる。これは予想どおり。
けれどそれだけでなく、全ての魔法を遠隔操作できた。
手元で発動させて飛ばす必要が無く、狙う対象の位置で直接発動させることができる。魔法力の減衰も気の余分な消費も無い。
手元発動と同じ威力、そのまんまの魔法が、ノータイムかつ必中で発動する。
魔眼による視線攻撃に近い。しかも狙いをきちんとイメージできさえすれば足りるので、必ずしも視る必要がない。つまり視線が通らない箇所にも魔法を発動させられるのだ。その点で魔眼以上である。
なんとなんと、ほぼ全ての魔法が魔眼以上のモノにパワーアップしたということなのだ!!
遠隔操作と透過を併用した日には、もう、なんというか、ほぼ無敵じゃなかろうか。
そしてもう一つの新ギフトの選択行使。これもなかなかの逸品である。
敵と味方が入り乱れている戦場で、敵だけを選択して範囲攻撃なんて芸当が可能になる。
敵の中の人間を排除して異星人#だけを攻撃することもできる。
装備中の武器防具の収納は無理だが、建物とその内部の人を別選択して魔法対象にすることはできる。
つまり、建物は無傷で内部の敵だけを攻撃するとか、敵をそのままに建物と備品だけを収納して鹵獲することもできる。
例えば戦闘機の中のパイロットを排除して、機体だけを選択して収納可能。
これと遠隔操作を組み合わせれば、飛来する戦闘機を地上に居ながらにして収納可能だ。
地下指令室の敵だけを虚空に放り込んで、指令室をそのまま確保することもできる。
また、選択と遠隔操作のおかげで、転移の幅も広がった。
遠隔操作+転移で、触れずに自分とともに転移させられる。
選択+転移で、自分は転移することなく、対象のみを転移で送り出すことが可能になった。
遠隔操作+選択+転移で、自分は転移することなく、対象のみを触れずに送り出せる。
これらの組み合わせを工夫することにより、色々な凄技が編み出せそうである。
遠隔操作+選択+転移+断裂空間で、対象を消し飛ばしてしまう「消滅」。
強力でクリーンで使い勝手のよい技である。魔法登録できた。
遠隔操作+選択+転移+断裂空間+原子破壊領域で、対象を原子破壊した上で虚空に飛ばす、虚空からすら戻りそうな強敵相手の「絶対消滅」。これも魔法登録できた。
他方で、体の方もきちんと動かす。
リー流の格闘術、タミル流の剣術。昨日見た技、連続技をトレースして、体が覚えるように、更には反射的に繰り出せるように反復練習した。
一日で完成するものではないが、その足掛かりは掴めた。
そして人型ゴーレム単体だけでなく、ハナ単体、ハナとゴーレム複数相手と敵状況を変化させて、技の応用を色々と試した。
良い汗を流した。
もちろん同時に超回復、準超回復もばっちり。
あー、充実する!ある意味最高に幸せな時間だ。
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ハナの新ギフトの視固は、視線で敵の動きを止める魔眼技だった。
弱敵なら半永久的に、強くなるに従って凝固時間は短くなるが、強敵でも一瞬は固められる。
クールタイムがあって連続使用はできないが、上手く使うと、接近物理戦闘が非常に有利になる。
ハナとは相性が良いギフトだ。
俺でも、1対1の接近戦で、加速前に視固を決められると、まず勝てない。意識も固まるので発動妨害も念じられない。
実際には危機感知と危機発動で、視固発動直前に強制的な時間停止状態に移行して、視線が光の速さで届く前に、時間停止下の行動で、視固の発動を妨害するなどの対処をすれば何とかなるが、まさに髪一重。
ハナの物理無双ぶりに益々磨きが掛かって来た!
「恐るべし、狼王ハナ!」
「銀を忘れちゃやだよ。銀狼王だからねっ」
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宿の食堂で、朝食をお任せで注文した。
収納から取り出すのと違って、何が来るか分からないのが楽しい。
「さて、今日はどうしようか?」
「迷宮に行って、そのあとは旅の続きがしたいなー」
「うん、それはいいな。そうしよう」
転移による瞬間移動は便利だけど、風情に欠ける。
やっぱり旅は過程も大事、予想外のトラブルを楽しまなくちゃだ。
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迷宮に入る前に、精霊族のエレーヌさんに連絡して、迷宮契約のことを尋ねてみた。
「ええ、ハジメさんは守護者ですしハナさんは関係者ですから、お二人とも迷宮契約資格がありますよ」
ウルマ迷宮の管理者をエレーヌさんに紹介してもらった。なんと、あの迷宮案内人の魔族の人だった。
「お久しぶりです。スファムです。ハジメさんはいずれ迷宮契約者になる方と思っていましたよ」
そうだ、スファムさんだった。いつもウルマ迷宮に入っているけれど、会うのは久しぶりだ。
ニコニコ顔のスファムさんに契約の手続きをしてもらう。
とりあえず、空のある迷宮地下80階で、俺とハナが二人セットで階層守護者になった。
「ハナさんが到達者になったら、お二人単独で別々の階層を守るのがよいでしょう」
迷宮契約の内容は、タミルさんの迷宮と大体同じだ。
どの世界でも迷宮の仕組みは共通ということか。
とにかく、これで安全に迷宮探査ができるようになった。
真剣さは薄れるが、まあ今更それを言ってもね。
ちなみに「守護者」の名称が惑星守護者と被っているが、迷宮階層の「守護者」は歴史的象徴的な意味合いがあり、かつて惑星守護者が一人きりだった時代の名残だそうだ。
さて、ウルマ迷宮地下55階。
「ここは、、、のどかな村?」
「凄くいい感じの村だねー。なんかほっとするよ」
「ハナさんや、お茶でもどうかね?且~」
「縁側で日向ぼっこしながら飲むお茶はいいねー、ハジメさんや」
「姫様、和んでいる場合ではございませんよ」
「じい、そう言わずお前も、、、って!あなた誰?」
狼人族の老人の登場が、雰囲気に溶け込んでいてあまりに違和感がなかった。
「私めは姫様の教育係候補のジークムでございます」
「あの、どうして私が姫様?」
「うくくっ(涙)、亡き御妃様に生き写しのそのお姿。。。」
「思い込むのも泣くのも、どうぞご勝手に。だけど、どうしてあなたがここに?」
「よくぞお尋ね下さいました。私めがこの階層の主なのでございます」
スッ。俺は立ち上がって距離を取る。
ズッ、カタン、スッ。ハナがお茶を飲んでから立ち上がって距離を取る。
(お茶はしっかり飲むんかい!)
「それじゃあ勘違いおじいさんに挑戦するわよー」ぼふっ。
「おおお!凛々しくも美しいその狼型!まさに先帝と御妃様を足して2で割ったようでございます。ううっ(涙涙涙)」
滂沱号泣のジークムさんに、激しくやる気を削がれるが、やらねばならぬ。
「勝手を申しますが、婿殿はしばしお待ち下さいませぬか」
「え、婿殿って俺のこと?」
「ハジメを婿と見抜く眼力は誉めたいと思うけど、私を甘く見たら後悔するわよっ!」
ハナ、なんか違うと思うぞ。。。
ハナが軽くジャブのような狼パンチを出す。
「姫様、筋がいいですぞ。最短距離のジャブで牽制とは」
連続ジャブの後は、長角をシュッと伸ばしての強烈な突き。
「おお素晴らしい頭脳プレー。ジャブの距離感に慣らしたところでの突き。見事に仕組まれた連続技でございます」
ジークムはいちいち誉めそやしながらも、軽々と捌くのが憎い。
ハナの攻撃が徐々にヒートアップして行く。
天翔を使い、ウテナⅡの翼も顕現させて、3次元攻撃を展開する。
「おおお!空域での戦いまでも。その被膜型の翼はちょっとアレかと思いましたが、慣れるとゾクゾクする魅力がありますな」
狼闘気を纏い、瞬動を発動するものの、ハナの超獣戦士的攻撃がかすりもしない。
「美しい闘気でございます。その艶!溜息が出ますぞ」
ジークムは短刀の二刀流での人型と、狼型を瞬時に切り替えて攻防している。短刀は狼型になった際には前足の付け爪になっている。こういう戦い方もあるのか。
ジークム狼型は、全身が黒っぽい灰色で、目と角と爪が金色。なかなかに渋い。大きさはハナと同じくらい。
2匹の狼がくるくると体を入れ替えながら戦う姿はなかなかに壮観だ。
ハナの若さ美しさ勢いと、ジークムの老獪で巧みな体捌きが、それぞれ印象深い。
ジークムは防御一辺倒から、時に攻撃を交えるようになったが、寸前で止めたり当てるだけに留めている。逆に両者の実力差が際立つ。
技では勝てないことを悟ったハナが、時間操作Ⅱで加速する。ハナ最大の20倍速。
一瞬驚いて目を見開いたジークムだが、追随して時間を同調させて来た。
「流石でございます。ここまでの境地に達しておられるとは!」
なるほど、同調はこうするのか。
多目に加速して、徐々に落としながら、相手の様子を見たり心音を聞いたりしながら、加速倍率を微調整して相手時間に合わせるんだ。
更にハナの奥の手。覚えたばかりの視固。流石のジークムも一瞬凝固する。
だが一瞬あれば十分だ。ハナの一撃が初めてヒットする。
「ダメだ、ハナ、手加減しちゃあ。一撃で決めないと!」
ハナの唯一のチャンスだったと思う。でも確かにあんな調子の相手に、非情にはなり切れないよな。
視固が溶けてジークムの動きが戻る。
「素晴らしい!まさかこれほどとは!?まだ生後一か月半ですぞ。これはまさに!」
そしてジークムは更に加速して、ハナの視固を警戒して少し距離を取りながらの戦いになった。
ジークムの加速は500倍。これで距離を取って戦うとハナの視固による凝固の危機をギリギリで凌げる。視固でいったん凝固しても、加速下の凝固は早く解除できるので、ハナが距離を詰める間に解除して回避するのだ。
ハナが距離を詰めようとするがジークムが巧みに間合いを取り、戦いは拮抗しつつ継続する。
しかし一見拮抗しているが、実はジークムがハナの実力を見極めた上で、自分の戦い方をできるだけハナにレクチャーするための戦い方をしているのが見え見えだ。
タミル迷宮で、勇者クラブメンバーと何度も戦っている俺にはそれが良く分かった。
そして迷宮契約により、そろそろ決着を付ける段階になる頃だ。
視固でジークムが固まる。ハナが角を伸ばしつつ頭から突っ込む。決まれば必殺の一撃になる。当たる直前に動きが戻ったジークムがスルリと躱して背後に回り爪でハナの心臓を突き、渾身の電撃を見舞う。電撃も使えたんだ。
正面からはやるせないので、背後から心臓を狙い、そして少しでも早く苦しみの少ない死をもたらすための電撃。いやはや気持ちは良くわかる!
ハナに死亡判定が下り、光の粒子と化してハナの体が消えて行く。
ハナをあまり待たせたくないし、ハナがせっかく作り出した大きな隙を活かしたい。
なので、俺はすかさず、遠隔操作+透過でジークムの心臓に向けて、体が破裂する程の電撃をお見舞いする。
お返しだ!
俺の意図を理解したんだろう、一瞬にやりと笑って、ジークムが光の粒子となった。
ジークム 貴人大狼 レベル77 を倒した
ハジメはレベル69になった
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ハナは迷宮80階にいた。
「悔しいけど、そんなに悔しくも無い。実力差があり過ぎたもんね」
「いい目標ができたな」
「うんっ!」
「迷宮で死ぬのってどんな感じだった?」
「えっとね、ああやられたって思ったら『55階守護者に敗れました』って告げられて、体が徐々に55階から80階に移されて行くっていう感じだったよ」
そうか、そういう仕組みなんだ。
それとひとつ分かったのは、死亡後の再生は、再生ギフトより迷宮再生が優先だということ。
まあ、死亡再生していつまでもその階層で戦うのは潔くないから、これでいいんだろう。
その気があれば、階層外で再生してからまた入り直して再挑戦すればいいんだものな。
とりあえず55階に入り直して、ジークムさんに話を聞こう。




