水人の災厄の顛末
急を要する事態なので、時間操作Ⅱで1000倍に加速して行動する。
海上の敵に向けて、扇状に原子破壊風刃を発射する。併せて撃ち漏らし対策として、空気操作で圧縮空気製の海燕を100羽作り、原子破壊面を体表に纏わせて飛ばす。これで海方面はしばらく大丈夫だろう。
さて街だ。まずは精神操作されている魔法使いの処置だ。索敵マップとレーダーゾーンでターゲットを明確にし、気を吸収して失神させる。同様に精神操作されている兵士も失神させる。気の吸収はボディタッチが必要なのが煩わしい。遠隔操作できるといいのにな。とにかくこれで造反者関係はOKだ。
次にハナの付近以外の、街中に侵入した水人と水棲生物を始末する。街の損傷を最小限に抑えるため、ウルティマ原子破壊刃の長剣で首を刎ねて回る。転移と天翔で移動しながらなので、特に困難は無い。
それにしても、数が多い。手際よく進めたつもりだが、たっぷり30分は掛かった。実時間に戻ると、約2秒経過。ほとんど一瞬だ。しかしこの一瞬で形成は劇的に変化した。錯乱していた仲間は気を失って地に伏している。敵は首を切断されて転がっており、切断面からはまだ勢いよく血が噴き出している。
戦況が落ち着いたようなので、熊さんのいる防波堤上に戻った。ハナも付近の敵を片付けて戻って来た。
街中に侵入している敵は全滅し、生きているものはいない。
海上には夥しい死骸が浮かんでいるが、隙間から顔を覗かせている生きた敵がおり、風の海燕が飛び回って触れるそばから切断したり貫通したりして、屠っている。
それでもまだ、遠方から接近してくる水人と水棲生物の気配がある。
「やれやれキリが無いな。ハナはあっち側を頼む。こっちは俺がやっとくから」
「わかったー」
熊さんを治癒しながら簡単な作戦指示。熊さんは複数の骨折に加えて体中傷だらけで、自分の血と返り血でドロドロだ。
俺は防波堤上から、ライフル仕様にしたウルティマⅡから風の弾丸を転射して遠方の水人ペアを仕留めて行く。ハナは街の反対側の海上を飛びながら汎用銃を撃っている。
「いやしかし、魔法戦士ってのは凄いもんだな!」
「多数の敵をやっつけるのには魔法が向いてますからね」
やっぱりそうだな。自分で言って再認識する。こういう時は広域殲滅魔法だよ。津波やら生態系保存やら考えたら、瞬間冷凍と即時解凍がベストかな。
「沖合なら氷魔法を使っても大丈夫ですよね」
「ああ良いと思う。というか氷魔法も使えるのか」
沖まで飛ぶ。海はやっぱり広大だ。こんな膨大な数の生き物を抱える懐の深さがある。
「ハジメ、やるつもりだね!ハナ久々にギフトで応援するよ」
「よし、海面付近を広域で凍らせる。そしてすぐに元の温度に戻す。行くぞ!」
「うん!」
範囲を見渡す限りの海面として、深さは水面下5メートルまでとする。船影は見当たらない。こんな時に海上に出ている命知らずはいないだろう。もしいても、もう生きてないだろう。
やることは単純だ。熱操作で、指定範囲を瞬間冷凍する。マイナス10℃で十分だろう。一拍置いて、周囲を探る。生命反応は無い。全て絶命したようだ。再度熱操作で元の温度に戻す。再び探るがやはり範囲内に生命反応はない。範囲を広げて探ると、水面下10m以下には魚影がある。魚が生きていた、良かった。漁業への影響も、まあさほどではないだろう。
遠方には遠ざかっていく水人と大型水棲生物の気配。まだいたか。でも逃げて行くなら見逃そう。これに懲りて、妙な繁殖行動は改めてもらいたいと思う。人間を精神操作するほどの知能の高さがあるんだからそれくらいできるだろう?
水人の襲撃を阻止した
ハジメはレベル41になった
ハジメはレベル42になった
ハジメはレベル43になった
ハジメはレベル44になった
ハジメはレベル45になった
ハジメはレベル46になった
ハジメはレベル47になった
ハジメはレベル48になった
ハナはレベル41になった
ハナはレベル42になった
ハナはレベル43になった
ハナはレベル44になった
ハナはレベル45になった
ハナはレベル46になった
ハナはレベル47になった
ハナはレベル48になった
おおお!凄くレベルが上がった。一度に8レベルとは凄い!イベント性のものも入っているのだろう。
冒険者カードを見ると、俺もハナも冒険者レベルがSSになっていた。
防波堤にもどったら、熊さんが上機嫌だった。
「いやーあんたら凄いわ!俺はランクA冒険者のプルシュだ。あんたらの名前を聞かせてもらえるか?」
「俺はハジメ。今のでランクはSSになりました」
「ハナだよ。SSになりたてだよ」
「SSかー。流石だな。まじすげぇ。俺はSランク以上の冒険者は初めて見るけど、もっと威厳があるのかと思ってたな」
「ああ、なんせ、ついこの間までFランクだったから」
「わはは、冗談キツイぜ!」
熊さん、いや熊のプーさんがバンバンと俺の背なかを叩く。おいおい、力が強いんだから加減しろって。それに冗談じゃなくてまじなんだけど。更に言うと俺は5歳でハナは生後1か月半なんだけど。これは言わないけどな。。。
プーさんが美味いと指摘する、海亀タイプとマグロタイプの水棲生物を捌いて焼く。焼き方は任せろというので、お任せして、海上の死骸を収納して回る。このまま腐敗したらまずい。街中は兵士や魔法使いが死骸の処理を始めていたが、特に数が多いところでは意見を聞いて要請があれば収納した。素材価値はあるんだが、数が多過ぎて手に余るだろうからな。
防波堤の上でバーベキューしながら遅い昼食を取る。
「うめーっ!あーこれで酒があればなー!」
などと勝手を言う熊が一匹いたが、俺らは未成年(っていうか実は幼児)なので炭酸飲料にしておこう。
「お!これはこれでなかなか」ザースでは炭酸は珍しいんだよね。
うん、一仕事の後のバーベキューは、なかなかいいもんだ。海上を綺麗に掃除したものの、海風には血の匂いが混じって、爽やかとは言い難いけれど、新鮮な海の幸はやっぱり美味い。もちろん複写&保存も忘れない(笑)。
「今日はすんげぇ楽しかったぜ。またどこかで会えたらよろしくな」
防波堤の上で海亀の解体を続けるという熊さんと別れて、街中をブラブラする。大型生物の解体や焼却、破壊された施設の片づけで大わらわだが、一面ではもう普段の街の姿を取り戻しつつある。逞しいものだ。
冒険者ギルドを覗いて見たけれど、解体の依頼でごった返していたので、あきらめる。水人討伐報酬をもらう手続きはまた今度にしよう。
海辺から離れると、もはやほとんど普段の街の様子と変わらない。
ハナが服やアクセサリーを見たいというので付き合う。ハナも見た目はもう16歳くらいだもんな。そういうものに興味を持つお年頃なのかな?
「お嬢様にはこちらのネックレスがよろしいかと思いますよ」
「そう?ハジメどうかな?」
「ああ、似合ってるぞ」
「これとこれならどっちがいい?」
「どっちもいいけど、その青い奴の方がいいかな?」
このあたりの受け答えは慎重さが必要だ。下手なことを言うと、最初から選び直しになるからな。まあ実際、どれも良く似合うんだけどな。
宝石は魔道具になりやすいので良い。見た目そのままで、状態異常耐性や魔法耐性の魔道具に作り替えておこう。
街を歩いていて気が付いたんだけれど、人々のハナへの応対が凄く丁寧になっている。特に犬系獣人は、すれ違うとお辞儀したりする。ハナが銀狼王に進化して『王の威信』というスキルが付いたので、その効果なのだろうか?ふふふ、ハナが妙に取りすますのが微笑ましい。
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その頃、冒険者ギルドでは海亀の甲羅を背負った大男が、救都の英雄であるSS冒険者ハジメとハナの物語を面白おかしく語って聞かせ、ヤンヤの喝采を受けて、隣接の酒場は大盛り上がりだった。
これは、ハジメとハナは全く知らない話。。。
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そうこうしているうちに、もう夕暮れ時だ。街中を歩き回ってちょっと人酔いしたので、宿の部屋で収納からレストランの料理を出して気楽な夕飯とする。
部屋の窓から空を見上げると見事な満月だった。ぼーっと月を眺めていると、、、月の輝きが増したような?いや、確かに増している。というよりも月がどんどん大きくなってくる。これはすごいっ、まぶしっ!
「うわわっ」
「え!なになに!?」
部屋中が月発の煌びやかな光に包まれるという異常事態。しかし危険な感じはしない。むしろ甘やかな華やかな、不可思議ながらも魅惑的な雰囲気だ。眩しくて目が開けられないというよりは、キラキラ煌めく光に頭がぼーっとなるという感じ。
そして煌めきが落ち着いて静まって来ると、そこに人影が浮かび上がった。
はた迷惑な生物、水人の騒ぎはひとまずお終いです。妙に優秀な一面を持つ謎の生物、水人。遥かな過去に君臨した種族の退化した生き残りなのかも知れません。
ところで、地球でも鳥類は恐竜の末裔って言われてますよね。
身体能力的にとても優れている鳥類=恐竜類。遥かな過去にはあの巨大恐竜とは違う人型恐竜族が存在し、地球を支配していて、品種交配による家畜として各種巨大恐竜を作り上げていたのなら楽しいなと妄想しています。
恐竜人は危機の地球を脱出して他の惑星を目指した!なんてねw




