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1割創の初めてのお使いと迷宮その後

「ふーっ、なんか身も心も軽くなった感じがするな」

東京の自宅に転移した。時刻は午後12時45分。待ち合わせの1時までの間に体操服や運動靴を準備する。

残りの少しの時間で、魂が10%しかない分身体である俺、1割創としての慣らし運転をしよう。


まず感じるのはジョーがいないこと。一抹の寂しさと不安がある。でも意識の片隅にミニ画面みたいな本体意識があって、そこに照準を合わせると、ガバッと本体意識とつながる。連絡をするというよりも意識の共有部分を広げるという感じ。そうすると、本体意識の中のジョーとやり取りすることもできる。


『1割創には再生があるが蘇りが無い。なので1割創としてのDNA保存をして1割分の魂が失われないように備えるべきだ』

なるほど。空間操作Ⅱは持ってるので、本体が作ったDNA保存空間に俺の髪の毛を数本「1割創」とラベルを貼った保存袋に入れて置く。

「魂やなんやらが薄まった別DNAになってんのかな?」ちょっと複雑な気分になる。


ふと見ると「9割創」の小袋があった。

『DNAに違いは無いが、10割創が自動再生されると、残りの分身体は消滅すると思われるので、その予防のためだ』

そうか、9割創が再生室で10割創として再生した際に俺が消滅したら、目撃者は大騒ぎするもんな。


ウルティマⅡも汎用服も分身時に装備したままだけど、こやつらの機能は大丈夫かな?

[ご安心ください。我の機能は完全です。1割創様の戦闘力に合わせて調整できております]

「おお!それはいいな。頼りにしてるぞ」

ネックレス型になってもらって首に掛ける。心細さがだいぶ薄らいだ。


透明化OK。スポーツセンター上空への転移OK。空気操作と熱操作ができないので、強風と低温に閉口し、魔法登録をきめ細かくセットしておこうと決心した。戦闘対応だけでなく生活対応魔法をな。


「おー、藤堂君待ってたよ」

熊田さんは、俺のマネージャーみたいな感じになってるなー。仕事の方は大丈夫なんだろうか?

「済みません、ちょっと準備にまごまごしちゃいまして」


まずは陸上の100m走。ウォーミングアップをして10秒を少し切る位の感じをつかむ。10秒以内ならオリンピック派遣内定だそうだ。8人がスタートラインに立つ。ここ1年の記録上位8人だ。踏み出しやすくするためのスタート板があったりしてちょっと緊張する。セット、スタート!


フライング防止のために、スタートのタイミングはわざと遅らせる。8人中8位でスタート。トラックに埋め込まれたLEDが何色かの光の帯を走らせる。様々な記録のタイム設定に合わせてあるそうだ。一番先にある赤色が10秒のラインだ。中盤辺りから集団を抜け出して、赤光ラインの少し後ろに付ける。そしてラスト10mで少し速度を上げて、赤光ラインを抜き去ってフィニッシュ!!


「9秒92。向かい風2mにしては上々だ!」とのこと。

ふー、上手く行った。あれ?何か手を引かれてライトが明るい場所に連行される。

えっと、TVカメラとマイク!?

「藤堂君、優勝、そして日本記録達成おめでとう。ご感想は?」


え、優勝って?そして日本記録!?。。。

「夢中だったので、周りのことは全く分かりませんでした」

「スタートがちょっと遅れましたが、中盤から一気に加速しましたね」

「はい。作戦通りです。上手く走れてほっとしています」

うん、速すぎず、遅すぎず、我ながら上出来だった。

「今の走りに点数を付けるとしたら何点ですか?」

「100点ですね」


本体から連絡が入る。

「ご苦労さん。でもあんまり目立つなよ」

っ!!それ、無理だから。。。


同様に、走り幅跳びは8m30、200m走は19秒95、槍投げは88mで無事終了した。いや、無事と言うか何と言うか。全部日本記録だそうで、。はぁ。何か、インタビューもだんだんヒートアップして来て、困ったもんだ。


本体と連絡。

「おい本体、すんげぇ目立っちまった!トップニュースになりそうな勢いだ!!」

「仕方ないな。まあ成るようにしかならん」

「まあそうだな」


「思ったんだけど、勇者達なら、やろうと思えば世界新とか狙えるよな」

「素でも行けるかもだし、身体強化すれば確実だなー」

「そんな状況で俺がオリンピック参加ってまずくないか?」

「バレたら滅茶苦茶恥ずかしいな」

「絶対バレないようにしなきゃだな!」

「おう!絶対な」

流石に俺達は気が合う。


自宅に戻ったらもう午後7時だ。インドは午後3時半か。自室に影1号をセットして迷宮へ飛び、本体と合流。はー、面白かったような大変だったような。分身による意識分割はまじで気疲れするわ。


ー ー - - -


分身を東京へ派遣した。分身遣いが荒いとか文句を言ったり『ふーっ、なんか身も心も軽くなった感じがするな』と言ったり勝手な奴だ。ジョーの助言に従って9割創と1割創それぞれでDNAサンプルを保存する。

魂の1割でも失われたら大変な損失だし、下手に再生して片割れが突然消滅しても大変だからな。


迷宮に戻る。現地時刻は午前9時45分。

地下10階の下にある核の部屋は迷宮の管制室になっており、各階のモニターや各種計器がある。迷宮管理者であるタミルさんと迷宮のぬしになってる俺は、管制室へ出入り自由だ。


デリー支部のメンバーが3階で苦戦中だ。敵が3体以上になると弱い敵でも防御し切れない。重軽症を負っているが戦闘が終了すれば回復するから我慢のしどころだ。水魔法持ちがいるが治癒はまだ出来ないようだな。

デリー支部のメンバーは、テレサが銃術(未熟)と火魔法、シンが槍術と強化、パールが光魔法と雷魔法(不発)、ビビアンが弓術(未熟)と氷魔法、ネルが風魔法と水魔法(不発)と転移(不発)。レベルは遊撃隊と似たり寄ったりのレベル10代の半ばから後半というところ。


遊撃隊は、2階を順調に攻略している。2階の敵はねー、弱っちいから5人でやればそりゃ勝てるよ。


「ギフトの未熟と不発を取っ払いたいでんなー」

「個別にてこ入れしてみましょうか」


まずは、ユリアから。ユリアを2階の敵単体の部屋に呼ぶ。残りの4人で攻略を進めてもらう。ユリアを抱っこしながら話しかける。

「よーしよしよし。まずはユリアが得意の水魔法を撃ってみようか」

「ニャウ!」

水球が形成されてふらふらと飛翔する。ユリアのレベルが3で気関連の数値もごく小さいことを考えると天才的と言える。そう言えば最初はレベル2だったからひとつレベルアップしてるな!


「じゃあ次はこんなんを出してみるぞ」

「ウニャニャ!?」

水の矢を撃ち出してみた。外からユリアの気の形と流れを操って、俺発ユリア経由で発射する。魔法が苦手で属性剣の扱いも下手なハナを相手に編み出した技だ(笑)。

ユリアはハナより魔法適正がある。俺の補助なしで単独でも魔道具首輪があれば水矢を撃てる。

続いて水盾。これもクリア。


「ニャーン」

ユリアが自発的に上から水を掛ける技と地面を水浸しにする技を俺に披露する。

「う、うん。敵の注意をそらしたり、足場を乱すのには役立つかもな」

「ゴロニャーン」上機嫌だ。


同様に風魔法の練習。そして闇。ユリアは実は闇が最も適正が高いようだ。さすが黒猫。相手の視界を奪う。自分の周りに闇を展開して隠れる。何かの影の中に闇領域を作って潜む。闇属性の矢、槍、球を撃ち出し、盾を展開する。闇の展開など、俺の知らない闇魔法の世界が覗けて、ちょっと勉強になったのは内緒だ。


魔道具首輪を取って、魔法を発動させて見た。威力は極々小さくなるが全てできた!他者確認してみると、魔法から不発の文字が消えていた!

「やったなユリア」

「ゴロゴロゴロ」喉を鳴らしながら俺の顔をザリザリ舐めて、感謝の意を表すユリアだった。


「しかし槍はどうしようもないか。。。」

「ニャニャッ」

シュッシュッと猫パンチを繰り出してみせるユリア。うーん。。。おっ!その尻尾は!?尻尾が長く伸びて槍の動きをしている。これは闇魔法を組み合わせて、尻尾の先に槍を形成して操ってるわけか!

「偉いぞユリア。尻尾槍も技を磨いておけよ。闇領域から不意打ちすれば結構いけるぞ」

ユリアの頭やのどを撫でる。滑らかでふかふかで気持ち良し。

「ニャーン、ゴロゴロゴロ」

ユリアとの訓練は癒されるなー。猫と遊んでるとしか思えない。


次は白石。

「よろしくお願いします。教官」

白石に光魔法を撃たせてみる。ポウッと僅かに明るくなるくらい。気の生成も流れも良くない。

「ちょっと体に触れるぞ」

左手を握る。少し補助できて、明るさがパーッ増した。でもまだまだだ。

「ごめん、もう少し密着する」

背後から抱くように、体を密着させ、左手を甲側から指を絡めて握り、右手は剣を握る上からかぶせて握った。

「あ。。。」

ちょっと、その声は何かドキドキするぞ。


「今の光魔法をもう一度!」

白石は全身から少ない気を絞り出すようにして右手に送ろうとしている。そこを俺が各密着部から強力に白石体内の気の流れをサポートして、白石自身の気をぐわぁーと流してやると、ピッカー!!と視界がホワイトアウトする光量に急増!

「キャッ!凄い!」


光球、光矢、光槍、光盾、レーザー、粒子ブレス、光範囲攻撃、ちょっと熱心にやり過ぎたかな。

「あー、凄い、凄いですー!」

な、何か俺も凄く楽しいぞ!!


続いて治療。けが人がいないので、2階で戦闘中の敵味方を治療する。俺の光魔法で、戦闘映像を目の前に展開して視聴しながら、遠隔治療だ。まず単体の軽症、重症。ゴーレムのぶらぶらになった腕が完治してアンソニーが驚いている。

「うぉ!な何だ!斬ったと思ったのに!?」

「今のはあいつには内緒な」

「はい、うふふ」

やっぱり、何か楽しい!

次に範囲治療。個々の効果は少ないが、全体に治癒が行き渡り、これも難なくクリア。


「じゃあ、短剣無しでやって見て」

「あ!少しだけだけど、できました!」

美少女の輝くような笑顔はいいもんだ。めでたく白石も不発を卒業だ。白石には光と治療用の小杖タクトもプレゼントした。えっと、贔屓じゃないよ。たぶん。。。


続いてドロシー。彼女は探知も転移も既に発動している。これを強化させる方向で。

「リーダー、よろしくお願いします!」目をキラキラさせて言われると、やっぱり応援したくなるよね。

転移の速度を早める訓練。ぱぱぱぱぱっ。

「うわー、凄い!」

「これを極めれば、戦闘もかなり有利になるぞ」


続いて距離。迷宮外のヒマラヤ山中まで空中散歩。魔道具の剣を使えば10キロまで可能。ただし1発で打ち止め。ドロシーは実際の諜報活動をするから、緊急脱出用の長距離転移魔道具の指輪をプレゼント。

「う、嬉しいです。。。」

ドロシー、涙目でうっとり指輪を見つめないように。

「実戦でのピンチの時だけ使うようにな。いつも使うと練習にならないからね」


そしてエンゾ。強化は、盾、体ともに既にできている。身体能力向上と防御力強化の使いわけなどを試す。そして無属性魔法。理力の触手とか理力弾とか理力盾、剣、等を伝授する。地力があるだけに、理力を攻撃に使えるようになると、単体でも相当戦えるんじゃないだろうか。

「サンキューボス」表情は変わらないが、見ようによっては嬉しそうにも見える。


最後にアンソニー。こいつは魔道具を使っても一切魔法を発動できない困ったちゃんだが、俺が補助すると火魔法も雷魔法も何とか発動できた。

「うぉぉぉー、すげぇすげえよ!」

「今の魔力を集めて流す感じ。火と雷の感触の違い。よく覚えとけよ」

「イエッサー!兄貴!」

ふむ、意外に単純な奴だな。

魔道具無しの発動にも四苦八苦したが、なんとか極少の火と放電が成功。うん、あれは単なる静電気ではない、、と思う。


これで遊撃隊メンバーの魔法は何とかものになった。デリー支部メンバーも同様に、個別コーチングで不発解消まで持って行けた。中でもテレサの銃術は、気で銃本体を作り上げて気の弾を撃ち出すという高度なものだった。レベルが上がればかなりの攻撃力を誇るようになるかも知れないが、今のままだと、普通の銃よりも数段劣る。それでも攻撃強度や照準が自在な利点もあり、テレサは自前の銃で訓練するとのこと。将来が有望な良い子だ。


また、俺にそのつもりは無かったが、ご要望により、タミルさんにも再コーチ。

「そっか、土のとぐろは蛇だったんですね、俺はまた。。。」

「え、他の何に見えよったんですか?コブラにしか見えへんでしょ」

などという一幕もあったが、彼は土魔法と空間魔法に進歩が見られて、今後の迷宮運営にも役立てると張り切っている。土蛇などは俺にもちょっと参考になった。魔法を生き物に模して飛ばして、奇抜かつ柔軟な攻撃をさせるという奇手的な発想だ。


その後、迷宮に隣接して宿舎や食堂らしきものをタミルさんと協力しつつ土魔法で作り、スティーブと連絡を取りながら俺が物資を運搬して、迷宮フル活用に向けての設備面での準備を進めて行った。いずれ専用職員を配置したりするらしい。


ー - - - -


迷宮守護者争奪戦は、8階アンソニー、7階テレサ、6階エンゾが本日の最終守護者となった。

9階のタミルさんには、俺を除く10人2パーティ合同で挑んでも勝てず、タミルさんは支部リーダーの面目躍如というところ。

10階の俺は11人2パーティーを軽く打ち負かし、別格の切り札として認知してもらえたようだ。


今日1日で、俺がもう2レベル、全部で5レベル、ユリアが合計で何と12レベル、他のメンバーは1~2レベル上昇し、みんなホクホクだった。

俺は成長促進ギフトがあるし、ユリアは低レベルでかつ猫だから、他メンバーより成長が早いのだろう。


タミルさんだけは、、、もともと高レベルなので、ご愁傷様だ。でもだいぶ経験値を積み上げた実感はあったそうなので、レベルアップする日も近いだろう。タミルさんが力をつければ、迷宮が充実するので頑張ってもらいたい。


そうそうユリアと言えば、レベルが上がるにつれて体が少しずつ大きくなり、今や中型の犬ほどもある。驚くほどのデカ猫、あるいは小型の黒豹という感じ。

そして新しいギフトの闇気を獲得した。闘気に似ているな。速度、攻撃力、防御力の底上げ効果は闘気の劣化版っぽいが、それ以外に闇の属性効果があるようだ。

今後ユリアが闇気を使いこなすようになれば、迷宮8階はおろか、9階守護者も射程に入るかも知れない。迷宮外でもかなり役に立つんじゃないかな。今後が楽しみなデカ猫だ。



クリエイト 19歳 レベル32 遊撃隊リーダー

筋力9818万/俊敏性9818万/生命力15億7082万/気力∞/気速∞/気量∞/活力230万











ユリア、今やそのまま表には出せません。新種認定されてしまうかも!?


オリンピック選考会の在り方などは、全くのフィクションですのでご了解下さい。

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