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人と獣と魔物 続

ハナの調子はどうかな?

水操作でハナの診察?をする。全身をスキャンしたところ、異常はない。

穴ぐ魔の一撃を喰らって、あばらと前足を数か所骨折したはずだけど、俺の水操作の

ヒール一発で癒着していたようだ。その後の自然治癒は早い。

「獣の自然治癒は生まれつきなのかな?」

「肯定。獣は身体が強い。獣気も身体強化に特化している。成長も早い。」

そういえば、レベルアップして体も大きくなりがっしりしてきた。体長は50㎝くらい。

「犬の寿命はどれくらい?」

「獣族は概ね20年程度らしい。ただ高レベルの個体はかなり長命だ。」

だそうだ。ハナよ、レベルを上げて長生きするのだぞ。

「わぉん」

ハナの目がきらきらしている。尻尾もちぎれんばかりに振られている。

レベルアップして嬉しいんだな、ふふふ。


対戦した穴ぐ魔の死骸は土中に埋まっていたけれど、地操作と理力の触手で掘り出して

解体して魔石、爪、牙、毛皮、肉に処理した。理力を使えば作業は早い。

肉は冷凍(熱操作)しておこう。

ついでに冬眠中の2匹もやっつけた。だいぶ冷えていたのでそのまま凍死してもらった。

 穴ぐ魔 レベル1を2匹倒した

 穴ぐ魔駆除者の称号を得た

また変な称号をもらった。退治の仕方に問題があったのかな?

新たな2匹はめんどうなので死骸は土中に放置だ。土を肥やす栄養になって下さい。

俺のレベルが上がったせいで、穴ぐ魔の索敵表示は赤ではなく黄色になっていた。

獲得経験値も、最初の1匹のときよりぐっと減って、2匹で20%だった。


さて朝ごはんを再開しよう。

生焼けのうさぎ肉とトリ肉を理力で高速回転させて、空気操作で風を吹き付けて

表面についた砂を完全に飛ばし、再びたき火で焼き上げる。

ジュッパチパチと油が火中にしたたっていい匂いを漂わせている。

ハナは生焼け気味の肉を美味そうに食べている。レア好きですか。通だね。

焼きあがったものから火から離して地面に串を挿し直し、程よく焼けた香ばしい肉を

頬張りながら、ジョー先生の授業を受ける。


「ザースの季節ってどんな感じ?」

「1年が360日。春夏秋冬各90日で、今日は春の3日目だよ。月や週の概念はない」

「てことは、俺の転生は春の初日だったわけだ。分かりやすくていいや」

「転生は季節の変わり目に行われることが多いようだよ」

「1日は24時間でいいのかな」

「そうだね。時間の概念は、日の出、日の入りと朝昼晩程度の意識が一般的だ」

「時計はないの?」

「上流階級では時計を所持して時刻を意識することもあるみたいだね」


角うさぎ肉もいいけれど王鷹肉の方がより美味い。ちょっと淡泊だけど上品な味だ。

壁際に置いた冷凍クマ肉に目が行く。

「あのさ、獣と魔物って何がちがうんだろ?」

「獣気を持つのが獣、魔気を持つのが魔物。獣は身体能力が高く、寿命が短く、繁殖

力が高い。魔物は魔法を駆使する傾向があり、寿命は比較的長く、繁殖力は高くない」

「人はその中間くらいなのかな?」

「寿命と繁殖力についてはそうだね。人の身体能力は獣と魔物に比べるとかなり脆弱」

「それだと人は駆逐されちゃいそうだね」

「人は知性と協調性がセールスポイントで、社会を構成して対抗している」

「なるほどー」

「もっとも、個体のレベルが高くなってくると、種族の特性は持ちながらも個性が強く

なってきて、千差万別で一概にどうこう言いにくくなってくるね」

「個々に色んな方向に能力を伸ばして行くわけだ」

「うんそう。ただ、高レベル個体は、強い、寿命が長い、繁殖しにくいという傾向が

ある。稀族はレベル一桁のうちに子供を作ることを家訓とする家が多い。転生者は

転生時からレベルが高く、子孫を残すことはほとんどない」

「へぇー、レベル上げにもデメリットがあるんだ」

「まあ、抜け道もあるらしいけどね」


「虫とか動物とかでレベル表示のないものがあるけど、あれは何だろう?」

「中立のものだね。気を帯びていないもの。気を帯びるとその性質により、獣気なら

獣、魔気なら魔物になる。中立から獣や魔物に転じることもあるし、獣、魔物として

その系統の中で進化して行くこともある。人は獣から進化した新種だという説が通説

だけれど異説もある」

「ザースの進化論かぁ。こっちの世界でも学者さんは頑張ってるんだ」


「気と獣気と魔気の違いはわかる?」

「獣気は獣くさいし、魔気は化け物くさいかな。あ、説明になってないなー。獣気は

純朴で土とか植物に近い感じ、魔気はおどろおどろしくて、闇とか地底とかの雰囲気?」

「まあそんな感じ。説明は感覚的になってしまうけど、とにかく違いはある。そして

魔気が強いところは魔物が活性化する魔物の領域、同様に獣の領域や人の領域があり、

それぞれ領域を広げようと争っている」

「数を増やして個々も強力になれば気の集合体も濃くなって領域が広がるのかな?」

「そういうこと。繁栄して領域を広げ、より繁栄する。それが目標」

「ふーん、人と魔物と獣は根本のところで相入れない敵同士なんだ。あれ、でも

俺とハナみたいに協力関係になることもできるよね?」

「個々的に協力することはもちろんできる。主従関係もそうだし同列のパーティーメンバー

にもなれる。組織的に協力することもあるよ。各地にある迷宮は、多くは魔物主催で、

そこに人や獣を招いて魔物側は食料や装備を得、人や獣は経験値や宝物を得るという共存共栄

の施設だよ。主催者は障害の強さや宝物の質をコントロールして迷宮の魅力を保つ。パチンコ

屋の経営なんかとちょっと似てるかもね」

「ふうん、人・獣・魔物は競争者の一面がありつつも協力者の一面もあるわけだ」

「そうだね。人族の内部でも、それぞれ競争しつつ協力しつつでしょ。個人的にも組織的にも」

「なるほどなー。なかなか複雑だ。いろいろ経験しながら少しずつ理解を深めて行きたいね」


ザースの世界も広大で複雑で色々あるようだ。

冒険してたくさんのものを見分し、見識を広めて行こう!

そのためにも死んではいけない。強くなって、楽しい冒険を続けるのだ!

さあお腹も一杯になったことだし、訓練するぞ。

ハナ、幸せそうな顔して寝てる場合じゃないぞ。



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