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守護者(ガーディアンズ)

どうやら「勇者」という言葉は、イメージとは少々異なるようです。


目の前の若者を眺める。風格がある。絶対的自信から来る落ち着きのようなものを感じる。ドロシーからの報告も驚くべき内容だったが、ここで更なる驚愕をみることになろうとは。


若者は異星人#の拠点を一瞬で壊滅させてドロシーを救出しただけでなく、異星人の完全な死体と拠点内の全ての設備を鹵獲していたのだ。この成果は計り知れない。途轍もなく貴重な研究資料が入手できた。


戦略的にも、常に劣勢に推移していた異星人#との攻防戦において、大金星というべきニューヨークの敵拠点壊滅、戦闘タイプ7体と将校タイプ2体を含む敵32体の殲滅、そしてそれを為し得るクリエイトという新しい戦力の獲得。目が眩む成果だ。


一歩間違えれば、ドロシーを失い、ドロシーを通じて敵にわたる情報によってこちらが壊滅していた。その可能性は十分にあった。むしろ、その悲劇的結末を免れたことこそが奇跡的と言える。


御子神の婆さんの予言は、彼のことに間違いないだろう。

『確実な災いが不確実な幸いをもたらす。1人で3人の男が地球の未来』

「これはどういう意味だ?」

「さてな。儂は託宣をお主に伝えるのが役目、そこから先はお主の役目だ。ひゃひゃひゃひゃ」

あぁ嫌だ嫌だ、思い出すだけで嫌な婆さんだ。しかし本物中の本物だから困りモノだ。


「君は1人で3人の男かね?」

「どどどどど、どういう意味ですか!?」

はははは、やはり若い。大いに動じたな。何か心当たりがあるようだ。単に3人前ということではないだろう。敵32体を不可思議な方法で瞬殺するというのは、100人前でも不足する程だ。


「我々は君を待っていたのだよ。君には勇者のリーダーとして勇者クラブを先導してもらいたい」

「ちょ、ちょっと待って下さい。俺は右も左も分からないんですよ」


「この世界に召喚されてから何日になる?」

「今日で4日目です」

「君は地球への出戻り組なんだろう?」

「、、、、、それはどういう意味ですか?そういう人がいるんですか?」

「異世界で生まれて地球へ召喚された者をルーキー勇者、地球で生まれて異世界召喚され更に地球へ再召喚された者をただ単に勇者と、我々は呼んでいる」

ー - - - - - -

俺はドロシーにガーディアンズ本部に案内された。分厚い防護壁に包まれた地下深くに本部はあった。要塞と言っても過言ではない。

「私が本部長のスティーブだ。よろしく」

50代か?大柄な男と握手する。身長はクリエイトの俺より少し低いがガッシリしている。この人、強い。地球に来てから見た生物の中で多分一番強い。鑑定不能だが、何か深みのようなものを感じる。


ドロシー救出と異星人#の拠点潰し、鹵獲品の供出、フランス空港テロ鎮圧について感謝の言葉をもらった後、勧誘された。というよりも当然協力するはずと思われているようだ。ちょっと待ってよ。

「ちょ、ちょっと待って下さい。俺は右も左も分からないんですよ」


心の準備が出来ていない。まずは情報収集だ。

「ガーディアンズと勇者クラブというのはどういうものなんですか?」

スティーブはパンフレットの様な物を手渡しながら言う。


「ガーディアンズは少し前から活動している地球守護のための組織だ。主要国の政府、軍部、諜報機関、巨大多国籍企業のトップ層と協力関係にある。勇者クラブは、ガーディアンズ内の主要組織、地球守護のための先兵とも言うべき集団で、被召喚者59名から成る。君が参加してくれればちょうど60名、10パーティが完成する」


「異世界召喚は誰がどんな方法で行うんですか?」

「ガーディアンズが申請をして、許可されると、転生管理局経由で召喚される」

「転生管理局ってなんですか?」

「超銀河的規模の組織で、その多くは謎に包まれている。活動趣旨を一言で言うと自然保護だそうだ」

「地球を侵略者から守護することが自然保護なんですか?」

「そうらしい」


この辺の話をまとめると大体こんな感じだ。

・侵略者は、経済的理由、政治的理由、種の威信、種の存亡等の理由で他の惑星の侵略を目論む者であり、それなりの攻撃力を有する。

・地球にとって目下最大の脅威である異星人#の目的は不明だが、地球の何らかの資源を狙う経済理由との見方が有力。

・侵略の仕方は殲滅、家畜化、奴隷化、隠れ支配、疑似協調等、各種ある。異星人#は隠れ支配を進めており、高い地位にある人間になりすますことにより、密かに支配を進行させている。国家規模でほぼ乗っ取られている国もあり、情勢は予断を許さない。

・惑星の攻撃防御の能力は、科学技術型と強力個体型がある。地球は科学技術型の方向に進んでいるが、まだまだ未熟。異星人#は科学技術メインだが個体の力も侮れないレベルにある。

・辺境に位置し、惑星寿命的にも中年以降に差し掛かっていて侵略対象外だったはずの地球だが、近時狙われ始めた。その理由は不明。

・地球防衛は、本来的には地球の科学技術の進歩に負うべきだが、保護対象であるうちは、転生管理局が援助する。

・本来の手段である通常援助は、召喚を利用して地球上で、強力個体を養成することに拠って行う。

・緊急援助は、強力個体養成が間に合わない場合に、他惑星でに育った強力個体の導入に拠って行う。

・強力個体導入は、現状では他世界で成長した地球出身個体の逆召喚の形で行われている。これが勇者と呼ばれる9人の者達。そして君だ。君は久しく待たれていた勇者クラブの切り札である。


「は?何で俺が切り札なんですか?」

「君の出現は、3人で1人の男として託宣されていたのだよ。君がそれを知らないのは、君の言う事故、バグのせいなのだろう」

「え、、ちょ、ちょっと考えさせて下さい」


脳内で会話する。

「ジョー、3人で1人の男ってなんだ?」

『不明。創のことだとしたら、創、私、ウルティマⅡで3人か、あるいは、創、ハジメ、クリエイトので3人という可能性もある』

[我が直感は、3人で1人の男は創様に間違いないと伝えております]

「うん、なんか俺も自分のことのような気がするんだけどね」

『いずれにしても3人になったのはここ数日のこと。久しく待たれていたということは、託宣には未来予知的な力があるということだ』


「託宣って何ですか?神様がいるんですか?」

「ガーディアンズメンバーの中にメッセージを受け取れる者がいる。彼女に『超越者』が予言的なメッセージをくれる。超越者が何者かは分からない。転生管理局よりも上位の存在だ。そして管理局は地球が超越者からダイレクトメッセージを受けることが大変に意外なようだ。そもそも地球におけるガーディアンズ自体が超越者の託宣から発祥しているのだよ。ちなみに宗教とは無縁だ。超越者は実在する」


おおお、益々訳が分からないぞ。

「。。。。。。」

「それと、勇者クラブのメンバーには衣食住を保証する。君にはニューヨークの他、各国10か所の住居、活動費として月間10万ドル相当を各国通貨で、その他必要な経費は無制限に支給される。身分証明書も発行する」

10万ドルっていうと1000万円くらいか。月給1千万!悪くない。ていうか破格!?


『創、お金に引きずられるな。しっかりしろ』

「そ、そうだな。お金なんて別にな」

『自分に見栄を張ることは不要にして無意味。判断の歪みを警戒するのだ』

「お、おう!」


「えーっと、それで俺は何をすることになるんですか?」

「まずは対異星人#活動の最前線での戦闘及び諜報。これは、君単独か勇者との連携となるだろう。それと、遊軍となっている精鋭5名のルーキー勇者とパーティーを組み、彼らの育成を担ってもらいたい。更には、勇者クラブ全体のレベルアップのためのコーチング。差し当たりこんなところだ」


「俺には俺の都合もあるので、1日あたり2時間労働で、週休1日は欲しいですが」

「君に強制することは誰にも出来ないだろうよ。それで結構だ。ただ緊急時には協力を養成することもあるだろう。君の協力は義務ではない。勇者としての正義の心で判断してもらえればいい」


なんだか、上手く丸め込まれたような気もする。とりあえず、仮承諾ということで連絡用端末を受け取って、今日は引き取ることにした。端末は亜空間に収納して監視式虫(洞窟にいただんご虫)をつけて、連絡が来たら俺が亜空間へ入って通話することにする。位置情報とか知られたら嫌だもんね。

ドロシーは遊軍ルーキー勇者の一人とのこと。そんなに期待を込めた目で見つめないでくれー。

ー - - - -

自宅に戻って来た。はぁ、何だかとんでもないことになって来た。時差が14時間あるからなぁ。俺の完全自由時間が日本時間で夜の9時から11時とすると、ニューヨークでは朝の7時から9時か。うーんちょっと譲って夜の11時から1時で、NYのAM9時~11時か。


そうだ、オリンピック関連の何だかんだもあるぞ。うーん、オリンピックに参加することに意義はあるのか?熊田さんのニコニコ顔がちらつく。これは熊田さんの呪いなのか?そもそもはハナの呪いだったか?


寝不足になりそうな嫌な予感がする。いざとなれば加速時間の中で眠るか。8倍速なら1時間あれば余裕の8時間睡眠だ。もう健康的なのか不健康なのかよく分らんな。


創 15歳 レベル27 筋力1293万/敏捷性1293万/生命力2億686万/気力∞/気速∞/気量∞/活力30万

称号 はぐれ勇者?


異世界定期便 7便 地球7月24日自室→ザース春13日王都の宿












今回は、ややこしい説明ばかりで、しかもわかり難くて、申し訳ないです。詳細はおいおい明らかになって来るはずです。

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