遠隔攻撃者
攻撃魔法の瀑布が迫って来ていた。
色とりどりだ。火、水、風、土、雷、氷、光、闇、無属性の9種混在している。
形も、球、矢、槍、針、砲弾型、等様々だ。
その中に、特に強力なものが混じっている。20発に1発程度の割合で。
それは、ドリル状に刃のついた砲弾型で、高速回転しながら飛んでくる。
闘鎧を展開しつつ、別途ウルティマⅡが盾状になり、防御に徹する。
「我が主、ドリル弾が危険です。これに的を絞って防御しましょう」
「コアと表面が幽体で、内部には気が超圧縮されているジョ」
そうか、そのせいなんだ。ドリル弾は、幽体を込めた盾じゃないと防げない。
加えて、闘鎧と理力を強力に展開していないと相殺できない程の、超弩級の攻撃力。
それでいて、直径1センチ長さ3センチくらいの小型。
幽体防御を要し、強く、小さく、速く、見え難い。
防御するのがすこぶる困難だ。なんだこれは!?
む!魔法瀑布が打ち出される場所が、変化する、数が増加する。現在10か所。
3次元的に取り囲まれている。地中からも来る。
「我が主、的を小さくして下さい。このままでは防ぎきれませぬ!」
俺はハジメ19の姿のままで身長1mにまで小さくなり、体を丸めた。
ウルティマⅡは強度を保ったまま、球形に俺を包む。盾というより殻だ。
ハナを見るとミニマム子狼になって、ウテナ殻に包まれている。
ふう、これでひとまず落ち着いた。
俺もハナも、急所は避けているが、だいぶダメージを被った。
あのドリル弾は、油断すると闘鎧を貫通して、肉体を傷付ける。
盾で弾いても、ある程度の衝撃ダメージが来る。
現状では、的が小さくなった分、ウルティマⅡと闘鎧の防御力がアップして、
瞬時に回復してしまうほどの小さな衝撃があるのみだ。
でたらめな魔法瀑布は一向に止む気配がない。
「ふー、人心地ついた。でもこのままじゃ手も足も出ない」
「ダルマというより、卵だねー」
「敵の気量が∞だとすると、この攻撃は永続する可能性があるジョ」
「ウルティマⅡはこの攻撃に覚えはあるか?」
「ありませぬ、初見です。しかし、反撃の糸口があるとすれば、、、」
「あるとすれば?」
「魔法の射出口なのですが、それが何とも。。。」
「亜空間からの攻撃だと思われるジョ」
現在射出口は10か所。距離1mから10m。全方位。開口時間0.1秒程度。
距離、方位、時間は全てランダム。とらえどころがない。
殻に閉じこもりながら、心を静め、開口部の気配を探る。
ふむ、直前に幽体がふっと揺らめく。
そして、ぴょこっ、バシュバシュバシュ!
ん、あのぴょこはなんだ?
「うさぎの耳と鼻と目だー」
そうだ。ハナの言う通りだ。あのうさぎめー(怒)!
うさぎが開口部から僅かに覗いて、狙いを確認している。
別開口部からも同時に覗いている。1匹じゃない。10匹いるのか。
「魔法攻撃パターンが変化したジョ」
目くらまし攻撃が止み、ドリル弾のみになった。そして着弾が1点集中。
「このままでは突破されます。防御も1点に特化します」
ウルティマ盾が集中すると、着弾が集中しても押し返せる。
しかし、次の瞬間には盾の無い部分に向けて集中攻撃が来る。
一瞬遅れて、集中防御を展開するが、1発は直撃弾を喰らう。
俺自身も、盾とは別に、闘鎧、理力更に幽体の
バリアを体表に纏わせているので、ダメージは致命的ではないが、回復速度が追いつかず、
少しずつダメージが蓄積されて行く。
「ハナ、大丈夫か?」
「痛っ、だいじょ、ぶっ」
ハナの方は、俺以上にまずい状況だ。
このままではジリ貧だ。早急にこの状況を打開したい。
俺は闘鎧を解いて、100%瞬動に切り替えた。
防御を捨てて、回避しつつ反撃する!危険だがこれしかない。
幽体の揺らめきを感知できたら、瞬動でそこに飛ぶ。
ぴょこっと覗くうさぎの頭めがけて、槍の一撃。
すかっ。なにぃ?
別開口部のうさぎの頭に汎用銃の粒子砲。ビッ。
素通り。またも不発だ。どういうことだ?
「我が主、この実空間からは、あの亜空間に干渉できない」
むむむ、あ、うさぎの奴がアカンベェを!
むきぃー!腹立つ。うさ公、許さん!
そうやってるうちにも、何発か被弾する。
防御が薄いので体を貫通する。もはや回復ではなく、再生が機能している。
「急所に被弾するとまずいジョ」
「我が主の急所への被弾だけは、攻撃を捨てて盾防御を優先して対処します」
なんとかして、敵の亜空間に干渉したい。
あ!アレが使えないか!?
ハナの追爪を吸い込んだギザギザ縦裂き開口部の亜空間(49話参照)。
あれは実空間から亜空間に、エネルギーを強制投入するものだ。
よし、実験だ。
幽体のゆらぎ感知。亜空間開口部が開く。
開口部の形状を変更する。できる!亜空間内部には干渉できないが、
開口部の形状には手を付けられる。
では次の開口部。こっちもギザギザ縦裂きにして、風の矢を打ち込む!入った!!
よし!次は威力の大きい魔法を発射してやるぞ。穴の中のうさぎ狩りだ!
「ハジメ、待った。亜空間で殺すと迷宮の再生機能が及ばないジョ」
「うーんそうか。憎ったらしいうさぎと言えども、53階の強者。
殺してしまうのはちょっとアレだな」
そうこう言っているうちに、俺もハナも、そろそろダメージがやばいかもだぞ。
「我が主から大容量の気を引き出して我が殻状に纏い、エネルギー体を装いましょう」
できるのか、そんなことが?でもやるしかない!
ふっ、開口部が出た、形状を縦裂きに変更。
ウルティマⅡの準備はいいな!
よし飛び込め!!
飛び込む際に、顔を出したうさぎに足先が引っ掛かった。
ぽろっ、うさぎの頭が取れた。わ、わざとじゃないよ!
飛び込んだ先は、こじんまりとした乙女チックな部屋だった。
「きゃっ。な、なに奴じゃ!あ、あー!妾のうさ5号がー!!」
叫んでいるのは、女の子。
「わるい、足が当たった」
15~16歳くらい?うさ耳とうさ尻尾付き。フリフリの服装。
肌の色は透けるように白い。髪の毛は白っぽい金髪、いわゆるプラチナブロンド。
腰までの長髪をツインテールにしている。瞳は青く、耳、尻尾は青みがかった白。
目鼻立ちは整っている。間違いなく超級の美少女だ。ちょっとハナに似ている。
部屋の中はピンクと白が基調。小物類や壁飾りやぬいぐるみがたくさん。
うさ耳少女はベッドに寝転び、雑誌を開いて、なにやらお菓子を食べていたようだ。
部屋の壁には大きな水晶球がいくつか埋め込んであり、そのひとつに53階、
ハナのいるあのお花畑が映し出されている。
ぬいぐるみと思われたのは、小さなうさぎ達だった。
一匹は首無し、ん、前足で千切れた頭を抱えているぞ?!
うさぎ達は足をタンタン鳴らし、怒りかつ恐れて、ぶるぶる震えている。
うさ耳少女が叫ぶ。
「お、乙女の部屋に殴り込むとは!なんたる暴虐非道じゃ!!」
涙目で震えている。
しかし、次の瞬間、はっと何かに気が付いた様子。
視線を追うと、別の水晶球に文字が浮かんでいる。
『弱みを見せてはなりませぬ』と読める。
「ふふふ、妾の空間に入り込むとは。飛んで火に入る何とやら。生きては返さぬぞ」
うさ耳少女、急に立ち直ったのか!?




