無限大
夜の訓練を終えて、自己確認をしてみると、
藤堂創 人 15歳 レベル2
職業 中学生
基礎値 筋力8/敏捷性8/生命力16/活力2
気力9兆5252億/気速9兆5252億/気量∞
ふむふむ、活力はしょうがないとして、その他は順調に増加している。
あれ?気量の表示が変だ。
「これは無限大を表す記号だジョ。計算上は1京1670兆程度になるはずだジョ」
「表示が9999兆で打ち止めか?それともそこを突破すると無制限になるとか?」
「前者の可能性が高いジョ」
試しに、2000兆だけ吸気袋に入れて、気量を確認してみると、9670兆。
「表示が∞でも、9999兆以上なだけで、実際の数字はあるってことか」
「ピスが『無限にも色々あるから訓練を怠るな』みたいなことを言ってたジョ」
「こういうことだったのかー」
さて、式神影1号をベッドに横たえて、洞窟内の泉へ転移、更にザースへGo!
異世界定期便 第2便 日本7月21日夜→ザース10日目夜
無事ザースの領都の宿へ帰還。砂時計の砂の状態も変わらず。
さらさらと砂を落としている砂時計を収納して、さあ眠ろう。
本日も驚異的な1日だった。まあ、もう、何が起きても驚くに値しないな。
ハナ、おやすみ。。。
朝だ。元気に目を覚ます。ザース11日目。暦上は春の11日ってことだな。
体調万全。異世界往復は、体調に悪影響は無いみたいだな。
ハナにこのこと話すべきか?いや当分は辞めておこう。
理解できないだろうし、ハナも連れてけって大騒ぎしそうだしなー。
「その判断に間違いはないジョ」
でしょ、でしょ。
さあて、朝飯前の訓練くんれん。
喫緊の課題の闘気をメインに据えて。
「ハナ、だいぶ上達したな!」
「えへへへへー。狼型だと調子いいよ」
狼型だと、闘気の底上げは、攻撃力・防御力・速度ともに7~8倍程度。
人型では底上げは各2~3倍。
ちなみに俺も底上げは各2~3倍だ。
「それとね、こんなことも出来るよ。ギリギリで避けてねー」
ハナが前足で振り下ろしのパンチを繰り出した。
獣力の爪の射程延長も見切って、余裕で回避、痛っ、当たった?
「うお!これはピスの謎の攻撃と一緒か?」
「うん、たぶんね。えへへー」
「どうやって出してるの?」
「なんかね、爪の攻撃を、こう、追いかけさせる感じで」
俺には出来なかった。
ハナも唯一、狼型での爪攻撃の付随効果として発揮できるだけで、武器攻撃はも
ちろん他の一切の攻撃に付随させることはできない。
「ハナのこの追いかける攻撃の命名、『追爪』はどう?」
「うん、いい!ちょうどそんな感じだもん」
ハナの追爪の威力はピスのものより、かなり低い。
それを幸いと、色々と実験を強行した。
「やっぱり追爪の特性は回避不能だな。転移してもくっついて転移先まで追いかけ
て来る」
「ピスさんに散々やられたわけよねー」
色々試した結果、現時点でわかったことをまとめると、(分析 ジョー先生)
1 闘気を最も上手く使える狼型ハナで、底上げ効果は7~8倍。改善の余地があ
るので、10倍程度までは到達出来そう。
2 ハナ人型と俺は、底上げ2~3倍だが、5倍程度までは到達できそう。
3 闘気を防御、攻撃、速度にそれぞれ対応させるのには若干タイムラグが発生す
るが、かなり改善の余地あり。
4 闘気の同時展開は、防御集中で100%とするなら、防御と攻撃に割り振ると
防御30%、攻撃30%程度。効率が低下する。これも改善の余地があり、各45
%程度までには上げられそう。
5 速度も含めての同時展開は更に難易度が高い。効率の減少が顕著。速度に闘気
を対応させた場合は、攻撃防御は通常の理力で底上げする方が、現段階ではベター。
6 追爪は、攻撃が回避されることが分かった時点で発動可能となり、威力は通
常攻撃の1~3割程度。
「はぁはぁ、訓練楽しいねー」
「うん。こう、目に見える成果が上がってると、充実感あるよなー」
気分転換に、宿の食堂で朝食。パンと肉野菜スープ。いつものメニュー。
ふっふっふ。今の俺には日本食もジャンクフードも手が届くのだ。
「ハジメ、なんか嬉しそうだね」
「え、あーうん、訓練で確実な進歩が実感できてるからな」
「じゃあ、今日は訓練ガンガンやるー?」
「そうだな、たまにはいいかも知れないな」
よし、今日は久々に迷宮探査を先に進めるのはお休みにして、訓練日だ。
基礎固めをきっちり進めるぞ。
ということで、訓練再開。
ハナは闘気の完成度を高めることに取り組む。
俺は、ハナの協力を得て、追爪対策にも取り組んでみる。
どうやっても回避は不能。この方向は諦める。そういう仕様なようだ。
次に、対ピス戦で試した闘気の吸収を追爪を対象にやってみる。
「やっぱり実体に俺の体が触れて無いのと、追爪との接触時間が短いのがネックだな」
「少しは削られてる感じがするよ」
「せいぜい追爪の2割、全体の1%未満ってとこかな」
手違いで、吸収した気を散らすための亜空間を、吸収前の追爪に直接展開してしまった。
「おっと、しまった。ん!んんん!」
「追爪、吸い込まれたよ」
再現してみよう、あれ?ダメ。ダメ。ダメ。あ、出来た。
何が違うんだろう。
試行すること数十回。その結果は(分析 ジョー先生)
追爪が当たる直前の微妙なタイミングで亜空間が展開すること、及び、展開する亜空
間入り口の特異な形状が重要とのこと。
特異な形状とは、うーん、なんて言うか、裂け目のようなイメージ。
その後、何度も繰り返して、微妙なタイミングと裂け目の形状のイメージが、定着す
るまで頑張る。
「よし、5発に4発は追爪を散らすことができるようになったぞ」
「ハナは狼闘気が完成に近づいてきたー」
そうなのだ。ハナの闘気底上げは狼型で9倍、人型で4倍くらいにまでなった。瞬動
から闘打への切り替え、相手に回避された場合の追爪と闘鎧への切り替えも随分とス
ムーズになった。
ちなみに、闘気の速度対応を瞬動、打撃対応を闘打、防御対応を闘鎧と命名してみた。
ピスの瞬撃は、追爪的効果はなかったけれど、速度と攻撃への割り振りや切り替えの
内実は不明だ。
また、俺とハナでは闘気での攻撃は直接当てる攻撃限定で、ハナの追爪以外の飛び道
具的攻撃はできないが、ピスがどうなのかは不明だ。竜族にはブレスがあるから何と
なく嫌な予感はする。。。
「さあ、実戦で確認。迷宮地下50階だな」
「おー!」
闘気の試し切り、試し受け。瞬動、闘打、闘鎧。
た、楽しー、超楽しーw。
物理無双は楽しいのー。ストレス解消にお勧めです。
ハナちゃんも大はしゃぎ。
「うはー、この無敵感がたまらん。
ふはははは、肉食巨竜よ、好きに攻撃するがよい。
ん?それだけか。ではこちらからいくぞ、バサーッ。ふ、一撃か。」
ハナの方はどうかな?
「ガウガウガウ、ウガガガガァー」
は、ハナ、理性は手放すなよ!
50階より上の階層で、散々無双して楽しんだ。30階代はアンデッドだからパスで。
宝箱から、ミスリル製などの結構良い武器や防具も、たくさん入手できた。
闘気の底上げ効果は、ハナ狼型で9倍、俺が4.5倍、ハナ人型で4倍程度に向上した。
闘気の切り替えもかなりスムーズに運用できるようになってきた。
瞬動で間を詰めて、理力を載せて斬撃、その間闘鎧を展開して反撃に備え、チャンス
到来なら、闘鎧を少し薄くして余力を攻撃に乗せて闘打をバサーッと。
闘打は直接物理攻撃にのみ載る。魔法や汎用銃には載らない。
裂け目亜空間による吸収は、対追爪なら成功率95%、他の魔物の通常の魔法的攻撃
は発動が認識できていればほぼ100%成功した。
ただし、バジリスクの石化など光速の攻撃は、発動前から準備していないと間に合わ
ず、タイミングが早過ぎてもダメなので、実際には対応は難しい。
その替わり、いったん石化しても、地操作と光操作の練り合わせ具合が分かっている
ので、もとの気に還元して石化を解いて吸収することは可能なことが分かった。
一応、『石化解除』として魔法登録しておいた。
石化に限らず、体組織の変性、粘着する縛る纏いつくもの等、俺の体との接触が続く
攻撃は、気の構成が判明すれば、還元して吸収が可能だった。
これで、炎の壁や毒霧等の単純な範囲攻撃魔法を始め、かなりの魔法攻撃を無効化す
ることができる!大収穫!
「はー、こういうのもいいねー」
ハナの表情が生き生きして、全体につやつやキラキラしている。
俺達は、充実した訓練を終えて、領都をぶらぶら散歩しているうちに、高級住宅街
を囲む柵の前に来ていた。
門があり、門番が守っている。
「あー、嬢ちゃん達、ここから先へは入れないよ」
そういえば、領主殿に会って、正式なお礼をもらうという用事があったなー。
「冒険者のハジメだ。領主殿に要件があるのだが」
ランクAの冒険者カードを提示してみる。
「ランクB冒険者のハジメ殿が訪ねて来た際にはお通しするよう仰せつかってます。
え、ランクA!?」
「いや、その後、ランクが上がってな」
「し、失礼しましたっ。どうぞっ」
敬礼して通してくれる。だけでなく、領主の館の玄関まで先導してくれた。
執事さん風のおじさんに案内されて謁見の間に通されて、しばし待つ。
その後、ちょっと意外な展開となった。




