ガチ殴り合い?
ルール?何か変なこと言い始めたよ、この青いお兄さん。
「るーるーって何?どういう意味?」
ハナよ、お前はそこからかい。
「ふむ、この戦いをより充実した楽しいものにするための取り決めだな」
「で、参考までに聞くが、どういう内容だ?」
尋ねながらこっそり他者確認のギフトを発動させる。
獣族 青竜 ピス
備考 脳筋上等 体力バカ 闘争中毒好きな言葉は真向勝負
この他は阻害されて見えない。この備考欄は敢えて阻害していないのか、阻害後の
上書を放置なのか、どちらにしても、大体どういうキャラなのか想像がつく。
「まず貴様が俺を一撃攻撃しろ、俺はそれを受けてやる。
次に俺が貴様を攻撃するが、貴様は受けるも避けるも好きにしろ。
次は小娘と俺が、同じく交互に攻撃防御し合う。この応酬を繰り返す。
勝負はこの舞台の中でやる。
なお俺は、先程見せた瞬撃は使わずに、通常の攻撃のみで相手する。
すぐに終わってはつまらんからな。先に死んだ方が負けだ」
こいつ、本気か?
攻撃を受けるとか、得意技を封印するとか、ずいぶんと甘くみられたもんだ。
幽視でチラ見してみた。
うぉぉ、アストラル体が凄い大きさだ!この山よりはるかにでかい。
ピスの体力と気力の総量は、俺とハナの合計を上回る!
ピス提案の好条件は、是非とも受けよう。というか、どうせ拒否を許さないんだ
ろうが。
「面白い。それで手を打とうか。ただし、俺とハナの合体技を出すときは二人同
時に行くぞ。」
「ふん、好きにしろ。さあ、始めるぞ。小童貴様の全力の攻撃を見せてみろ」
直径30m程の切り開かれた円形に近い平地、これが『舞台』だろう。
ピスは舞台の端から10m程の地点に、自然体で無造作に立っている。大剣は抜
かず、両手は下に下げたままだ。これは、、、隙だらけ。無防備という奴だ。
俺は、ダッシュして跳躍し、ウルティマを重さ1トンほどの大斧に変形させて、
唐竹割の要領で真っすぐにピスの頭頂部に振り下した。ピスは微動だにもしない。
大斧の刃がビスの頭骨を破壊しながら切り下げて、とはならなかった。
硬く弾力のある手ごたえで、ウルティマ大斧はヴィンと弾き返された。
「な!」
驚いた。何て奴だ。本当にまともに受けやがった。
ピスはポリポリと頭を掻き、少し地中にめり込んだ足元を均しながら、
「ふ、まあまあだな」
この化け物め。
「こんどは俺から行くぞ」
大剣を抜いて大上段から振り下ろしてくる。最初に見せたのと同じ最短距離の
単純で真っすぐな斬撃だ。
ただし、規格外の速さの瞬撃ではなく、常識的な範囲内での速い攻撃だ。
それでも危機感知はアラームを出している。受けたらやばいのだろう。ただし
外すのは難しくない。
紙一重ではなく、余裕をもって指2本分ほど間合いを外して躱した。
はずだった。
うぐっ。頭部に激しい衝撃。一気に生命力の10%くらいをもって行かれた。
これは、剣気というか剣風というか、奴の獣気のなせる技だな。俺の理力の刃の
ような奴だ。瞬撃の時にはなかったものだ。
理力的なものは感知できてなかった。何か別物のようだ。
「躱したが、躱し切れずというところか。まあ、一撃で倒れなくて安心したぞ」
くそー、悔しいですっ。
ハナの攻撃。51階でも炸裂したカイザーナックルを嵌めての右アッパー。
ピス微動だにせず、その顎にまともにヒット!
と、打ち抜くことが出来ずに、跳ね返された。俺の大斧と同じだ。
ハナ、目を丸くしている。だよねー。
今度はピスのハナへの攻撃、あ、俺の時と同じいわゆる面打ち、ハナかなり距離
を開けて避ける。
おっと、頭を抱えて蹲るハナ。俺と同じく、獣気?の衝撃波にやられたようだな。
1巡目は完敗。こっちが当ててもダメージ無し。相手はかすってもいないのに衝撃
波で大ダメージを俺達に与える。
2巡目。
まず、俺の攻撃。ウルティマを先端に小さな鉄球を付けた長い鞭の形にして、鞭を
しならせて先端部をさっきの斧の打撃を遥かに上回る速度に加速した上で、その速
度を維持したままインパクト直前に小鉄球部を1トンの大斧に変形。
超速の重撃を喰らえ!ヴィィィン。弾き返された。
ピスは無傷。ただし、膝まで地面に埋没している。釘打ち状態?
「ふむ、今度のはさっきのよりいいぞ。しかし、舞台の強度が足りんな」
獣気を練って舞台の強化をしているピス。むぅ、余裕あり過ぎだ。
ピスの攻撃。あれ?また面打ちだ。
衝撃波を警戒して、下がれるだけ下がろう、としたら追って来た。タイミングの早
すぎる回避はダメだ。
ある程度引き付けて、その上で可能な限り距離を取って、1mが限界かな。
痛ってー。衝撃波は至近距離でも1mでもほとんど変わってないぞ。
ハナの攻撃。狼化して、角を活かした頭突きだ。あぅ、また弾き返された。
これは角度を誤ると角を折るから気を付けろ。
ハナへの攻撃。またも面打ち。横方向に移動して軌道面を躱すハナ。あ、蹲って
痛そう。衝撃波は横方向にも来るのか。
2巡目。またも完敗。まずいぞ。生命力の減少が回復に追い付かないぞ。
3巡目だ。今度俺は、汎用銃で反物質爆縮弾を撃った。ピスはすっと前に出て2
線の交差前で受ける。あ、これも受けか。一回分損した。
まずいぞ。危機感知が大きくなってきている。危機対応まで発動しそうだ。
幽視で、ピスの攻撃を見る。あれ、また面打ち?獣気が圧縮され変質した謎エネル
ギーが大剣を覆っている。これが衝撃波を生むんだな。剣が振り出され、インパク
トに向う瞬間にこのエネルギーが噴出される。では、それを盾で防いでやる。
えっ盾を謎エネルギーが素通りしてきて、痛ってー!また当てられた。
「面打ちが好きなようだな」
「ふむ。軌道も剣の角度も振り出しのタイミングも全然別物だが、面打ちと一括り
に捉えるのも、面白い見方だ」
あ、そうなの?同じ技じゃんって言いたかったんだけど。。。マニアから見るとそ
ういうもん?まあいいや、同じタイプの攻撃が続く方が対処しやすそうだしな。
ハナは汎用銃で粒子砲を撃つ。あ、弾いて散逸させた。例の謎エネルギーは粒子砲
も弾くか。
ハナへの攻撃。ハナは大剣を躱すと同時に次に襲う衝撃波に備えて打撃ポイントに
ハナの獣気を集中させて迎撃しようとする。しかし、気の物量と圧縮度で大差があ
るため、やはり打ちのめされる。いや、前のより少しはましかな。
3巡目も完敗。しかし、ハナの最後の防御は、事態への対策の第一歩だ。
4巡目。
俺の攻撃は、圧縮させた大火球をピスの頭上から落とすというもの。ピスの謎エネルギ
ーの覆いを突破することはできず。火球が散らされて終わる。やはりな。。。
防御では、俺は奴の大剣の実体を躱し、次に襲う衝撃波のエネルギーに向けて俺の理力
を集中させて空中で波動がぶつかり合うようにして迎撃し、同時に打撃面にも理力の集
中ゾーンを一か所集中の鎧のように展開して、迎撃し切れないピスの謎エネルギーとの
相殺を意図する。
多少の軽減はできた。だが、気の物量と質の両面でまだ及ばない。衝撃は残る。
ハナは属性剣の雷撃と獣気全力一か所集中防御で同様の戦いを試みるが、やはり及ばず。
これは、、、一見物理戦に見えたピスとの戦いは、気の戦いだ!
そして、量質ともに劣勢だ!どうする??このままだとやられるぞ。




