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アストラル体

回避の動きにもうひと工夫加えてみた。


基本的な運動を直線的なものから、チューブの内側を螺旋を描いて移動するイメージ

の曲線的な運動に変えてみた。もちろんそこに、3次元的なジグザグ運動を加え、更

には準備出来次第、転移を交える。


より優れた回避運動パターンになったようで、セヌエフの攻撃は、よりあたり難くな

った。少し余裕も出て来た。


ハナを見てみたら、ちゃっかりチューブ螺旋運動を取り入れている。想定上のチュー

ブも曲がりくねり、太さも変化し、強いひと蹴りで方向の異なる別のチューブに乗り

換えたりしているようでもあり、前よりも更に変幻自在な回避運動になっている。

転移を交えなくてもセヌエフの攻撃をかわしている。さすがハナだ。



さて、これで敵味方双方とも、目まぐるしい回避運動を続けながら、双方攻撃があ

たらないという一種の平衡状態となった。もちろん張り詰めた緊張感を伴うもので

あり、少しでも気を抜くと、取り返しのつかないことになるだろう。


セヌエフの姿を認めたら即、レーザーや粒子砲を撃っているのだが、躱される。

俺の神経伝達速度によるタイムラグのせいだろう。この一瞬で逃してしまうのだ。


何とかならないものか。



手詰まり感の打開を模索する中で、ふと幽視を意識してみた。

おお!何か見えるっ。

セヌエフの体全体を包む、もやもやした煙のような光のような炎のような何か。

オーラ?

このもやもやは、色も形も密度も目まぐるしく変化している。そしてその変化の

リズムはセヌエフの攻撃行動と転移のリズムに合致しているように見える。


「これは何だ?」

「アストラル体というもののようだジョ」

「アストラル体?」

「生命力、筋運動、神経電流、脳波、意思、気などを統括する上位のエネルギー

構造体だジョ」

「だから奴の行動にリンクして変化するのか。この変化を読み解くことができれ

ばな」


細かい変化を読み解くことは、出来そうで出来ない。いま一歩、よく分からない。

うん?転移の前にひときわ明るくなるな。奴も転移の前にエネルギーを強めるの

だろう。

転移した後にも、余韻のようにアストラル体の残像が残っている。もやもやが

たゆたう。


あ、今たまたま俺の視界の端がセヌエフの転移先だったけど、転移前に先駆け

のように微かにアストラル体の揺らぎが見えたような。


戦闘を続けながら、もう一度この現象が起きないかと意識を集中してみる。

あ、見えた!虚無空間の何もないところにアストラル体の揺らぎが微かに生じ

て、次の瞬間、そこにセヌエフの転移後の姿が見えた。これで奴の動きの先を

取ることができるんじゃないか?


おっと危ない。気を抜くとこっちが回避し損なう。

俺も激しく回避で動き回るので、視界を固定させること自体が難しいな。

もう少し、頻度を上げて、アストラル体の揺らぎをキャッチできないものか。


俺の感知機能の集合体であるレーダーゾーンを有効活用できないか。

ゾーンは半径5メートルしかないが、これはパーフェクト感知領域だ。

アストラル体の揺らぎに対象を絞って、幽視の力を載せて、レーダーサイトを

ぐぐーっと広げてみる。


かなり広がった。この階層の広さは不明だが、セヌエフの転移は奴の攻撃射程

内に限定されている。その射程圏全てにまでレーダーの領域を広げることがで

きた。

セヌエフ本体と鞭の現在位置は確認できる。ハナの位置も分かる。俺の位置は

むろんレーダーの中心だ。

しかし、転移先のアストラル体の揺らぎは感知できない。

あ、針の先のような微かな光が見えた。これが求める揺らぎのようだ。

うん、確かにそうだ。しかしこれでは微細に過ぎる。もう少し意識を集中する。

針の先程度の光をもっと強く。もっと。うん、針の先からマチ針の頭くらいには

はっきりしてきたぞ。


これなら位置情報も分かる。よし、やってみよう。

俺は、次に感知できたマチ針の頭程度のアストラル体の揺らぎに粒子砲を打ち込

んでみた。

やった!次の瞬間に揺らぎの位置に出現したセヌエフの実体に粒子砲がヒット。

惜しくも足の先っぽ。

直ぐに転移するセヌエフ。こんどはそっちか。

次の転移先に再度粒子砲を撃つ。セヌエフの左肩をかすめる。ダメージが入ったは

ずだ。



「くくく、まぐれじゃなかったんだ」

セヌエフが嬉しそうだ。これはアレか、Mというやつか?


あ、揺らぎのマチ針の頭の数が増えた。フェイントなのか?セヌエフ本体が現れる

のは、そのうちのひとつ。うむ、確率が下がってしまった。

見える揺らぎは5~6個。その一つには粒子砲を、残りのできるだけ多くにレーザ

ーを打ち込む。

セヌエフは俺の方向に金属の盾を構えて現れるようになった。レーザーが斜めに構

えられた盾により方向を変えて反射され受け流される。もう一方の腕には鞭を持っ

て攻撃を続けて来るが、奴の攻撃力は半減したことになる。


よし、形勢はこちら有利に傾いた。セヌエフが次の手を打って来る前に決着させた

い。


『ハナ、俺のレーダーの映像が見えるか?』

『見えるよ』

映像も送れるんだ。念話いいね!

『パッパッと現れるマチ針の頭みたいな、もやもやした揺らぎの位置がセヌエフの

転移先候補だ』

『マチ針の頭?あ、分かった、あれだね。』

『レーダーの中心は俺の現在位置。ハナから見た転移先の位置を割り出せるか?』

『やって見る!』


数度、レーザー又は粒子砲がセヌエフの盾に受け流され、奴の残された鞭の攻撃を

俺達がかいくぐる攻防が続いた後、次の揺らぎ候補の位置のひとつが、高速移動中

のハナの位置にやや近いところに来た。


そこに出た。

俺の粒子砲が、セヌエフの予め構えた盾に受け流される。

と、そこにハナの人型の姿が。

人化して的を小さくして、セヌエフの懐に潜り込んだ!

左手でセヌエフの盾をもつ腕を跳ね上げて、カイザーナックルを嵌めた右こぶしの

アッパーカットで奴の顎を捉えて上方に打ち抜く。他方、セヌエフの引き寄せた鞭

の先端がハナに襲い掛かりつつある。


俺の視線は、顎をのけぞらせたセヌエフの姿を捉えていた。セヌエフが一瞬硬直し

ている。

その一瞬の間に、俺の汎用銃からは反物質爆縮弾が打ち出され、セヌエフの頭部付

近で直径30センチ程の爆縮球を発生させた。セヌエフの頭部のほとんどが消滅した。


セヌエフの生命反応が消失した。

再生はない。


魔人 セヌエフ レベル62(ただし能力の9割を制限)を倒した

ハジメはレベル31になった

ハナはレベル31になった

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